仕事と育児の両立なんて、無理に決まっている
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記事:土屋忍(ライティング・ゼミ平日コース)
私は育休中、ふさぎ込むことが多かった。
4ヶ月検診に行ったとき、アンケートに「育児は楽しくない」と書いた。相当落ち込んだ様子だったようで、見かねた保健師さんから翌日「大丈夫ですか?」と電話をいただいたほどだった。
夫は協力的で、なんでもやってくれた。なのに私はいつもイライラしていた。
ゼロ歳児のお世話をしていると、2~3時間おきに授乳、適宜おむつ替え、着替え、だっこして寝かせる(ゆらゆらしないと寝ない)などで、1日があっという間に過ぎていく。ぎゃーぎゃー泣いても、新米ママにはそれが空腹なのかおむつなのか眠いのかがわからず、とりあえずひととおり全部試してみるという有様だった。
自分のペースで生活することができず、食事をゆっくりとることも、夜ぐっすり眠ることも、自由に出かけることもできなかった。この三重苦が、私を苦しめていた。
もちろん、我が子はかわいかった。初めて笑った、おもちゃを握った、首が据わった、あーあー、うーうーとおしゃべりするようになったなど、日々の成長を見るのは楽しかった。
でも、家に二人きりでいるのは、精神的にきつかった。例の三重苦に加え、自分が世話をしなければ死んでしまう“命”を預かっているという重圧に、押しつぶされそうだったからだ。
そんな状態だったので、仕事を辞めて育児に専念するなんてことは1ミリも考えていなかった。職場復帰して、仕事に戻ろう。そう考えていた。
でも、仕事と育児の両立なんて、果たして自分にできるのだろうか。育児だけでこんなにヘロヘロなのに、仕事も加わるんだよ? 不安で胸と頭がいっぱいになった。
そんなとき、フリーペーパーで男女共同参画センター主催の「育休復帰準備セミナー」という3回シリーズの講座を見つけた。ピンときて、すぐに申し込んだ。
この「育休復帰準備セミナー」が後の私の(というか我が家の)両立ライフの土台になった。
生活コラムニストのももせいづみさんの講座では、仕事と育児の両立について、そもそも両立なんてムリ、片方だけでも十分大変なのだから、6割主義でOKということや、家事の工夫についてのアレコレを伺って目からウロコだった。以来、ももせさんのファンになり、『働く母さんお助けバイブル』という著書は文字通り私のバイブルになった。
別の回では、それまでまったく考えていなかった病児保育やファミリーサポートのことを知り、登録や見学に行くきっかけになった。
そして、夫婦で参加する回があり、夫と参加したことも、大きかった。
もともと、家事育児には協力的だったけど、後に私が育休復帰したときに、男性の育休実績がない会社で、夫が有休を使ってプチ育休をとってくれたのは、この時のセミナーがきっかけだったのではないかと思っている。
保育園も決まり、慣らし保育も順調で、産休に入ってからちょうど1年後に職場復帰した。
これで育児から解放される! という解放感と、1年のブランクで職場や人間関係に変化があるかもという不安を抱えての復帰だった。
職場の皆さんは温かく迎えてくれて、仕事の勘は3日で戻った。
ただ、肝心の息子は、微熱が続いて、熱があがると保育園から呼び出しがあった。その頻度なんと3日に1回! 会社に着くなり電話がかかってきて引き返す、なんていう日もあった。
かかりつけの小児科医と相談しながら、数種類の抗生物質を試したものの微熱は収まらず、大きな病院を紹介され受診。そのまま検査入院になった。
昼間は仕事をして、夕方に病院に行き、消灯時間まで息子のベッド脇で過ごし、「行かないでー!」と言わんばかりにぎゃーぎゃー泣き叫ぶ息子をおいて帰宅する日々は、本当につらかった。
検査の結果、微熱の原因は中耳炎とわかり、ホッとした。
これ以降、入院に至る病気やけがはなかったものの、風邪やインフルエンザ、胃腸炎、りんご病、手足口病、水ぼうそうなど、小さい子どもがかかりやすい病気はひととおり経験した。
そのたびに、夫と交代で休んで看病したり、義母にお願いしたり、病児保育に預けたりしながら、なんとか仕事を続けることができた。職場の理解があったことも、大きかった。
もしも、私ひとりだったら? あの「育休復帰準備セミナー」に参加していなかったら?
予備知識ゼロで、職場の理解がなく、夫も非協力的で、義母にも頼れず、病児保育がなかったら・・・・・・?
仕事と育児の両立なんて、無理に決まっている。
仕事と育児の両立は、ママだけでするものでも、夫婦だけでがんばるものでもない。
いろいろな人のチカラを借りて、チームを作って取り組む一大プロジェクトなのだ。
「手を貸してください。チカラを貸してください」 勇気を出して声を上げよう。差し出された救いの手に感謝して、子どもが大きくなったら、次の世代にその恩返しをしよう。
仕事と育児の両立なんて、無理に決まっている。
そう思う人が、一人でも減るように。
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