メディアグランプリ

限界を越える。ほんの少しの支えがあるだけで


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:赤木広紀(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「一人では、怖くて持ち上げられないんですよ」
 
今年の5月からジムに通っている。
できたばかりの新しいジムということもあって、トレーナーがマンツーマンで教えてくれる。
 
僕は週に1、2回程度のライトユーザーだが、マンツーマンで指導するトレーナーは毎日、誰かしら生徒をトレーニングしているので、付きっ切りで自らも一緒に運動している。
 
毎日、朝から晩まで生徒に付き合って一緒に運動するのは、大変じゃないですか。
そう尋ねると、
 
「いえ、そこまで負荷はかからないので、そんなにしんどくはないですよ。ただ……」
 
ただ?
 
「ジムが終わってから筋トレするんですけど、ただ一人だと……」
 
一人だと、何だろう?
ヤル気が出ないとか?
 
「一人だと、限界を越える重さを持つのが怖いんですよね」
 
怖い?
思いがけず意外な言葉に、先を促す。
 
「今は最高で80Kgのバーベルを持ち上げられるんですが、それ以上のウエイトを持ち上げないと、当然筋力はアップしないんですよ。でも、一人でトレーニングしていると、限界ギリギリのウエイトを持ち上げられなかったとき、誰も助けてくれない。結構、危険なんです。それを考えると怖くて、なかなか限界以上のバーベルを持つのは難しいんですよ」
 
なるほど、限界ギリギリを攻めないと筋力はつかない。
でも、一人だと持ち上げられなくなったときに誰も助けてくれない。
それは怖いし、躊躇する。確かにその通りだ。
 
でも、そんな80Kg以上のバーベルを持ち上げるとなると、補助する人も相当筋力がないとダメなのではないか?
 
「いえ、補助は、そんなに力はいらないんですよ。ほんのちょっと支えてくれるだけでいいんです。仮に90Kgにチャレンジしていて、ダメだったとしても80Kgは持ち上げられるから、補助の人は10㎏の力で支えてくれるだけでいいんですよ」
 
おぉ、そうなんだ!
重いバーベルを持ち上げるには、補助も力が相当ないとダメだと思っていたけど、そうでもないんだ。なるほど~
 
このジムでの何気ないやり取りを、家に帰ってから振り返ったときに、ハタと気づいた。
 
「そうか、筋トレの補助って、まさにコーチがやっていることじゃないか!」
 
20年に渡ってライフコーチングのプロとして300人を超えるクライアントの目標達成や課題解決のサポートを1対1の面談(セッション)で提供してきた。
 
コーチングでは、クライアント、つまりコーチングを受ける人は、自ら立てた目標を達成するために、計画を立てて、様々な行動をする。
 
このとき、クライアント自身が一人でもできそうな目標を立てることは少ない。
それならコーチは必要ないからだ。
 
一人では乗り越えるのが少し難しいかもしれないというチャレンジ感のある目標を目指すときこそ、コーチの出番だ。
 
ある意味、目標を達成するために、自分自身に負荷をかけ、力をつけるためにコーチを雇うのだ。
 
それが分かっているから、コーチはクライアントにチャレンジを促す。そう、ジムのトレーナーが「赤木さん、じゃあ今度は、このバーベルを持ってみましょうか」と、先週よりも重いバーベルを背中にのせるように。
 
クライアントは、「えぇっ~、そんなのムリですよ~」と口では言うが、内心、嬉しそうな様子も伝わってくる。
 
そう、コーチは知っているのだ。
クライアントの持っている力を。
 
今の自分でも十分うまくできることをやるときに、他の人の力も支えも必要としない。
そう、ラクラクと持ち上げられるバーベルなら補助なんかいらない。
 
でも、自分の限界を越え、慣れ親しんだ世界から一歩越えようとするとき、どんな人であっても必ず怖れが湧いてくる。
 
引き返す理由なんていくらでも見つかる。
戻ったところで、今のところにとどまったところで、誰も何も言わない。
 
でも、自分だけは知っている。
本当はもう一歩踏み出せたのに、怖くて引き返してしまったことを。
 
そのとき、コーチはそばにいて、
 
「大丈夫だよ。もう一歩踏み出してごらん」
 
と見守っている。
 
そう、コーチは知っているのだ。
クライアントの持っている本当の力を。
 
そして、一歩踏み出したとき、人は自分の限界を越える。
 
世界が広がった瞬間だ。
 
人は誰しも、冒険者だ。
 
慣れ親しんだ世界を越え、まだ行ったことのない世界、見たことのない世界を見ようとしている人は、皆、冒険者だ。
 
未知の世界だから、予想していないこともたくさん起きる。
上手くいかないこと、思うようにならないこともまた多いだろう。
 
一人ではくじけそうになることもあるだろう。
心が折れそうになるかもしれない。
やろうと思っても、怖くてなかなか一歩踏み出せないかもしれない。
 
そんなときに、
 
「大丈夫だよ。もう一歩踏み出してごらん」
 
と、ほんの少し支えてくれる存在が、あなたのそばにいたとしたら、きっとあなたの冒険の旅は、もっとワクワクするものになるだろう。
 
 
 
 
***
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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