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シングルの子育てでも心配しないで!


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記事:中崎潤(平日ライティングコース)
 
子供が泣き出したとき、私は心の底から安心した。
 
離婚したとき、息子はまだ2歳にもなっていなかった。言葉もしゃべれない。
母親がいないと夜泣きなどが心配になる。
ところが息子ちゃんは、ものすごいパパっ子で「ママ」とは一言も言わなかったし夜泣きもしない。
私が仕事でなかなか帰宅できないときは、寂しくて泣きじゃくる。好きな電車も山の手線ならぬ「パパ線」と名づける。「保育園、行かない! パパと一緒に新幹線、見に行く!」と駄々をこねる。
そんな息子ちゃんも、今では小学校高学年。ゲームが大好きで、朝からタブレットのゲームにはまっている。
 
シングルで子育てしていると心配になることがある。
 
ひとり親家庭で育つことで、子供に悪影響が出ないのか?
 
離婚率が35%。3組に1組が離婚すると言われる現代において、シングルマザー・シングルファーザーなら誰しも考える疑問ではないだろうか?
私は声を大にして言いたい。
「大丈夫! 心配しないで!」
そう思う理由を書いていきたい。
 
私が子育てで気をつけていたのは「文句を言わない」と「ダメ出しをしない」だった。
 
文句って簡単に言えますよね。暑い寒いから始まり、値段が高い、サービスが悪い、質が悪い、味がまずい、人が混みすぎ。
こういう言葉を息子の前では使わないようにしていた。
大人同士のぐちのレベルならまだしも、子供が他人なり周囲なりに文句を言うようになってほしくなかったのだ。
 
ダメ出しもしなかった。子供は基本的に何事も下手だ。うまくやれない。だって、子供だもの。
うまくできないことに対して「ここができてない。あれもできてない」と言うのが効果的ではない。そのことは近年に流行になりつつあるアドラー心理学から学んだことだった。
 
気をつけていたのは、このふたつだけで、あとは割と自由にやらせていた。
この育て方で、子供にどういう影響が出るのか、わからなかった。
そもそも育てる方の私が感情表現が得意でなない。その私が育てるんだから、子供もドライに育つかもしれない。ドライやクールならまだしも、いじめっ子になったりしないだろうか? 反対にシングルが理由でいじめられるんじゃ? 自分の嫌な部分ばかり引き継いでいないだろうか? 誰かに言うでもない不安の数々。
子供はというと、いつもゲームの話ばかりしていて、学校で起きたことも「そんな昔のことは忘れた」と、話す気もなさそうだ。
 
もしかして私が悪影響になったんじゃ……?
 
学校の宿題はやるが、自分から進んで勉強する気配もない。
宿題だから、いやいやながら国語の音読をする。教科書に載っている「ごんぎつね」だ。
漢字につっかえたりしながら、なんとか最後まで読み終わる。
すると、息子が急に泣き出すのだ。
「ごんが、かわいそう……」
ごんぎつねは泣ける話だが、まさか本当に泣くなんて。
 
私が子供だったころ、同じようにごんぎつねは読んだのだが、泣いた記憶はなかった。
そんなドライな親が育てたからといって、ドライな子供に育つわけじゃない。
たとえ母親がいなくても、普段はゲームばっかりでも、学校でのできごとを話さなくても、悲しいときは、素直に悲しいと泣ける。そういう豊かな感性に感動したのだ。
子育ての不安全部が、子供の涙で流されて、すうっと消えていった瞬間だった。
子供が泣き出したとき、私は心の底から安心したのだ。
 
自分の子育て方法を褒めて欲しいわけでもないし、立派な父親してるんだと自慢したいのでもない。
ただ、子供が自分の思わぬところで、思わぬように育った。しかも、いい方向に向かって伸びてきている。
そのことが親としてうれしいのだ。
 
子供はまるで雲のよう。
私の心に浮かんだのは空に漂う雲のイメージ。雲のように決まったかたちはない。親は極端に悪い方向に行かないようにするために、風を吹かすだけ。あとは雲が自分でかたちを変えて成長していく。雲が空気中の水分を得て大きくなるように、子供は親や友達、映画や本、学校や旅行、いろいろな要素を得て大きくなっていく。
 
世の中のひとり親家庭でそだてている親御さんに、ぜひとも言いたい。
「大丈夫。ひとり親でも子供はちゃんと育つ。シングルであることで過度に不安になったり、自分を責めたりしなくていい。子供は自分で成長する要素を、親の知らないところで選んでいくから。甘やかしすぎないていどに、ちょっとだけ手助けしてあげればいい」
 
子供が自分で成長していける能力があるとわかれば、シングルで育てている親御さんの不安が軽くなるんじゃないだろうか?
もちろん虐待はいけないし、完全に放任しているのもまずいだろう。たまたま、息子がうまく育ってくれただけかもしれない。私の子育てが万人に有効なわけでもない。
それでも私のようなケースがあるということが、ひとり親家庭でも「大丈夫! 心配しないで!」と言える理由なのである。
 
 
 
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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