マッチングアプリの『正しい』使い方
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:池田真奈美(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
みなさんは『マッチングアプリ』をご存知だろうか。ネット上でランダムに表示されるプロフィールや写真をもとに、気に入った人へ「LIKE」ボタンを押して、見事マッチングしたらメッセージを送り合えるといったもの。わたし自身初めて知ったときには、なんと効率的で画期的なサービスなのだろうと衝撃を受けたことを記憶しているが、その『マッチングアプリ』を使う、とくに男性諸君に物申したいのだ。
それは年末に久しぶりに元職場の同期とご飯に行ったときの出来事。
もう付き合いは長く10年ぐらいの親友である。わたしも彼女もお酒が好きなので、よく一緒に飲んだりする。この日は年末らしく、とことん飲み倒しそのまま一緒にお泊り女子会の予定だった。
わたしの住まいは三軒茶屋。言わずと知れた飲み屋街が多い街。国道246号線と世田谷通りに囲まれた「三角地帯」や「茶沢通り」には、大小問わず様々な居酒屋やバーが軒を連ねている。
わたしたちは、ひときわ賑わっていたおでんがある居酒屋へ。円形カウンターの真ん中に若いお兄ちゃんが切り盛りする立ち飲みスタイル。威勢のいい声が飛び交いワイワイがやがやできる、そんなお店だった。早速ふたりで乾杯。名物らしいポテトサラダを摘まみながら、近況報告会のスタート。
女子トークといえば、やっぱり恋愛話。
恋愛話でも種類が2つある。幸か不幸か、至ってシンプルだ。
でもわたしにはこの日の議題が何であるか分かっていた。
今からちょうど待ち合わせの6時間前。
「まさかの彼から距離置きたいってーー笑。あーーもうヤダ」という彼女からのメール。
最近彼女は一か月前にアプリで出会った一つ下の彼氏ができた。その彼氏と付き合う少し前には、さらにアプリで出会った彼がいたが、音信普通で結局別れてしまい、意気消沈していたところにタイミング良く出会った人らしい。
彼女の見た目は、目がくりっとしていて、笑うとえくぼができる丸顔タイプ。早くからパティシエとして全国展開のお店のデザートメニューも任されるほどの腕前。彼女の作る繊細で且つ美しいデザートは、お世辞なく本気で美味しい。また人懐っこく可愛らしい雰囲気とは対照的に、思ったことはハッキリと口にするところも、同世代の友人が多い一つだと思っている。
そんな彼女が続けざまにアプリで彼氏に翻弄されていた。しかも、年末年始として世間が浮かれているこのタイミングで・・・・・・控えめに言っても最悪である。彼女から細かく事の経緯を聞く。だんだん話を聞いているうちに、わたしの脳内センサーに怪しいフラグがピンっと鳴る。
まずお互いの電話番号を知らない。最近のスマホには、ほぼダウンロードされているのではないかと思う緑のマークのLINEが主な連絡ツールのようだ。確かに電話番号を知らなくても、連絡手段を取るうえでは全て事足りるということも分かる。さらに彼氏は、電話を掛けても一切電話にでない。だから連絡はいつも決まってメール。
次にお泊りをしない。大人の恋愛であればお泊りデートも立派なデートの一つだと思うが、お泊りはしない。もっと言えば、どんな時間でも自分の家に帰るのだ。もちろん、やることはやって、という大人の前提のうえでの話。決まって来るのは彼女の家で、彼の家がどこにあるのかは知らないという。
ここまでくると「なぜ彼女は、気付かないのだろう」と思ってしまう。でも気付かないのだ。
いや、気づいていても、気づかないフリをしているのかもしれない。もちろん、彼女と彼との間には様々なやり取りがあって、こういう展開になっているということは分かっているが、わたしはこう思ってしまった。
『アプリで出逢う恋愛をする方が、ずっと難しい』ということ。
確かに若者の間でマッチングアプリを使っている人は多い。私だって登録したこともあるし、何人かに会ってみたことだってある。アプリを使って結婚までしている知り合いも何人も知っている。少し前まではアプリで知り合うことに何だか抵抗感や恥ずかしさみたいな感覚があった人も多くいるだろうが、どうやら今は違うらしい。もちろん男女の出会いには、友人の紹介や合コン、ナンパや相席居酒屋など多くのカタチがあっていいと思っている。
ただ、あまりに簡単に人と人が出会えてしまうのは、人間関係を構築するうえでの多くの部分をショートカットしてしまい、簡単に出会いをなかったことさえ出来てしまうのではないか、とも思う。
だから、彼女のように「たったメール1本」で済まされてしまうことだってある。
メール1本で済ませることができる関係って、それは恋人でも友達でも知り合いでも何でもない。自分にとっての都合や気分で左右されてしまう不安定な関係。
では、何がいけなかったのか。
それは、本気で恋愛をする姿勢であるかどうかを見抜く、観察力の問題ではないだろうか。そもそも「好きなひと」を見つけることは、そんな簡単なことではない。さらには見た目、職業や年収、家族構成や住まい、そんなスペックを並べてみたところで一人の人間を知ることはできても理解することなんてできない。多くの人と出会うためにアプリを使うことで簡単に出会うことは、確かに効率的なのかもしれない。しかし人との出会いは、ベルトコンベアのように流れるモノではない。代えがきかないのである。
そう、アプリの出会いは男女が知り合う最短ルートだけれど、出会ってからのサポートはしてくれない。だから敢えて不便さを感じることをしてみたり、意味のないことに時間を費やしてみたり、そんな「無駄」と思える色々な行為こそ人間関係を作っていくうえで大切なことなのではないだろうか。そうした一つひとつの積み重ねから、その人の魅力に気づき、その人との出逢いに感謝することが初めてできるのだ。無駄な行為を一緒になって喜んでやってくれるヒトに出会ったときこそ、チャンスであり、「本物」であると思う。
『マッチングアプリ』を使えば、きっとたくさんの人との出逢いが次から次へとやってくるだろう。だからまずは使う前に、本当に自分が求めている人を想像してみてほしい。自分が描く豊かな人生を叶えるために、真剣に自分と向き合ってみること。大量に画面上に映る写真たちと睨めっこするのはそれからだ。
わたしの大好きな親友である彼女にも、そのことを伝えたい。
でももう少しだけ、この日は彼女とのお酒に付き合うことにしようと思う。
だって、彼女は本当に魅力的で素敵な女性であることを、わたしは知っているから。
彼女にエールを。女子会に終わりはないのだ。
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