筋トレ・ランニング3日坊主だった男の人生を変えた一言。
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記事：Tak（ライティング・ゼミ冬休み集中コース）
「痛いっ！」
大事なアポに間に合う電車に乗ろうと駅の階段を駆け上がったところ、ふくらはぎに激痛が走る……肉離れだった。
ショックだった。若い頃はテニスや水泳で鍛えていて、まだ基礎体力はあると思っていたのに。12月で寒かったからとか言い訳したくなるが、明らかに体力が落ちていた。
「よし」
一念発起して、ランニングシューズとダンベルを購入、筋トレとジョギングを始めた。
軽い筋トレから始めたつもりだったが、翌日にはひどい筋肉痛になった。筋肉が腫れて、体全体がだるく、朝布団から起きるのにも一苦労だ。
それではと、今度はジョギングをすると１㎞も走らないうちに膝に激痛が。自分の軟弱さに打ちひしがれる。
我慢して数日続けていたのだが、筋肉痛もひざ痛も一向に緩和されない。やっぱりこの年で運動始めるのは手遅れだ、もうやめよう。
そんなある日、米国に赴任する私の為に、以前の勤務先の先輩が送別会を開いてくれた。この先輩は筋トレやランを日常的にされていて、百キロ超のバーベルもあげるマッチョな方だ。
SNSで私が投稿した泣き言を見ていたらしく「最近、筋トレやランニング、頑張っているね！」とさわやかにおっしゃられる。私が「筋肉痛や膝痛が辛いのでもうやめようかと」と打ち明けると一言。
「筋トレ後の筋肉痛ってうれしくてたまらないよね」
は？！
「僕なんかもう簡単に筋肉痛にならないから。たまになるとうれしくって！」
いえ……え？
あっけにとられる私に、笑いながら先輩はこう続ける。
「筋肉や体力はやればやるほど付くけどその効果は感じにくい。初めは痛くて辛いだけで止めたくなるよね。でも筋肉痛って破れた筋繊維が再結合している時に出る。これ、超回復っていう過程で、筋肉がもりもりついているんだよ！」
「僕は体重が100㎏以上あったので走ると膝が痛くなっていた。でも、しばらくスクワットやったら痛まなくなった。この前ついにフルマラソンも走れた。僕ができるのだから、スマートな君ならフルマラソン3時間切りできるかもよ。もうちょっと続けてみたら」
1㎞も走れないのに3時間切りって……唖然としてその日は「もう止めます」とも言えずに家路についたのだった。
その後慌ただしく渡米。勤務先は東海岸の小都市で完全な車社会。その冬は厳寒豪雪だったこともあり、運動どころか歩く機会も激減する。さすがにこれではまずいと、筋トレやスクワットを再開した。
案の定、翌日はひどい筋肉痛に襲われた。ところがここで先輩の言葉を思い出した。「筋肉痛は超回復」「筋肉もりもり付いている」。ひょっとしたら筋肉付いているのかも。そう思ってその日も筋トレをやった。
当然翌日も筋肉痛だ。ところが……なんだかとてもうれしいのだ。「これが超回復か。今まさに筋肉ついているってことだよね」と。胸の筋肉も心なしか盛り上がってきた気がする。
その日から筋肉痛が出る度にうれしくなり、少しずつダンベルの重さも上げ、スクワットの回数も種類も増やし始めた。そして春になってジョギングを再開。すると5㎞走っても膝の痛みが出ない。おお、先輩の言ったとおりだ、走れる！
こうなるとますますうれしくなって、走る距離とペースがどんどん上がる。
毎朝時間を見つけては走り、週末も走る。出張先でも走るようになった。
半年後にはハーフマラソンデビュー。翌年2月にはフルマラソンも走れた。
その後も走り続け、ついに2年後には、サブスリー（3時間切り）を達成したのだ。
日本に帰国した際に先輩がサブスリー達成のお祝いをしてくれた。「ほら、僕の言ったとおりだったろう？」とにこやかに。先輩には感謝しかない。
速く走れるようになっただけではない。筋トレやランで得られたことはたくさんある。
風邪をひかなくなった。体力がついて疲れにくくなり、激務にも耐えられるようになった。
ストレスも解消でき、トラブルが起きても平静を保って対処できるようになった。
だが、何より素晴らしいのは、走っている時に感じることができる様々な感覚だ。
皮膚や肺で気温や湿度を感じとり、汗をかいて体を動かすことで自分の身体感覚を取り戻す。そして、四季折々の風景を眺めて癒される。鳥の声に耳を傾け、植物の色と形と香りを楽しむ。オフィスや家の中でIT機器と向き合っている時に失いがちな「生きている実感」が取り戻せるのだ。
先輩の一言は、本当に私の人生を変えてくれた。
もし、運動を初めても３日坊主の人がいたら、まずは、筋トレ・スクワットから始めてはどうだろう。
きっと筋肉痛が出る。でもそれがうれしく感じられるようになったら……しめたものだ。
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