メディアグランプリ

プロ野球のオッサンファンと女性ファンは共存できるか問題

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:羽様 洋一(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
その打球は打った瞬間高く上がり、レフトスタンドを目指して緩やかに時間をかけて放物線を描いて飛んで行った。まるでベイスターズファンの思いを徐々に受けて飛距離が伸びるような感じだ。
 
その間、席に座ったまま手を合わせ、祈るようにボールを追う若い女性。
 
周囲の空気にビックリしてビールをそっちのけでボールの行方を追ってしまったビールの売り子とその常連客。
 
そして、私も席を立って拳を握りしめながらスタンドに向かうボールを睨みつけていた。
 
「入れ! 入れ! 入れ!」
 
思わず力が入る。
球場にいた多くのファンがその言葉を発するか、又は心の中でつぶやいているように見えた。
 
そして、打球はレフトスタンドの下段にギリギリで入った。
 
「うぉぉぉー!」「ヤッター!」「ユキヤー!」「プロ初ホームランおめでとう!」
 
これは2019年8月10日に横浜DeNAベイスターズの伊藤裕季也がプロ初ホームランを打った瞬間の出来事だった。
 
このホームランを確かめた後にスタンドで観戦していた女性が所々で席を立ち、ゲートに消えていくのが印象的だった。この時点で試合は6回裏の横浜DeNAベイスターズの攻撃中て、3対2でベイスターズが負けているが帰るには早すぎる。
 
彼女達はいったいどこに消えたのか。なんとも腑に落ちない。そんな気分だった。
 
その後、試合は進み8回裏の伊藤裕季也の第4打席。ふと6回裏に姿を消していた女性達の席を見てみる。ちゃんと席に戻ってきている。その手には、『伊藤 裕季也』と書かれたタオルが握られていた。
 
彼女達は、次の伊藤裕季也の打席に間に合うようにグッズショップに駆け込みタオルを買って戻ってきたのだった。なんともスゴイ行動力に驚きを隠せなかった。そして、思い切りが良いと思った。彼女達は今日、この日に新しいヒーローが誕生すると確信しているのだ。
 
この熱い思いを知ってか、知らずか。伊藤裕季也は2打席連続ホームランを放ち、ベイスターズは同点に追いつく。ベイスターズは9回裏に勝ち越しを決め、サヨナラ勝ちで勝利し、伊藤裕季也は人生初のヒーローインタビューに選ばれた。もちろん、今日の活躍を信じた女性ファンは興奮し、その声援はいつもの以上に感じられた。
 
この光景を見るとプロ野球はいつの間にか女性中心で楽しめるものに変わっているのではないかと思える程である。そこでふと我に返る。自分のような40代を過ぎた汚い球場と罵声が飛び交う球場でプロ野球を見て育った老害は、そろそろスタジアムから去らなければいけないのではと。
 
ここ数年を思い返す。横浜DeNAベイスターズは、女性ファンが球場に来場しやすいように、まずトイレをきれいに整備することから始めた。この取り組み以降、女性ファンを増やす取り組みは徐々に増え、近年では女性向けにデザインされたユニフォームを、女性ファンに配布するガールズデーが実施されるようになった。このイベントは、年々その人気は増して、男女比が半々に近い比率になるようになった。このように女性ファンの増え、リピーターが増えるとその熱狂度も増していく。
 
そのせいか、最近では練習場や二軍の試合を見に足蹴く通うようなファンもかなり増えている。こういった場所に来る女性ファンは試合の勝ち負けはもちろんのこと、選手の練習姿勢や取り組みもしっかりと見ている玄人なファンだ。て選手を遠くからじっと見つめる姿は片思いの男性を見るような目でもあり、母親が子供を見るような温かい眼差しにも見える。オヤジの夢を託すような眼差しやストレスの捌け口にしようとするのとは違って見える。
 
しかし、女性ファンとオヤジは本当に共生できないのか。いやできるはずだ。多くの女性ファンと話をすると、その話に家族や父親の話が出てくるのだ。そこには大抵テレビのチャンネル争いをした家族の思い出や父親がどこかの球団のファンで、その振る舞いが与えた影響が面白おかしく伝ってくる。
 
だからオヤジの方からコミュニケーションを取る術を断ち切ってはいけないのだ。
世間では、パワハラ、セクハラとオヤジと女性を取り巻く環境は日に日に厳しくなってきている。しかし、スタジアムで野球を一緒に見る、同じチームを応援する目的で集まった縁を大事に、このひと時の奇跡を喜び、野球の楽しむことはできないだろうか。
 
そんな思いを胸に今年も3月の開幕を楽しみ、球場のどこかで笑って試合を見ていたいのだ。
 
 
 
 
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2020-01-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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