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メディアグランプリ

漢字嫌いな娘が図書館で本を借りるまで

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:細井典子(ライティング・ゼミ 冬休み集中コース)
 
 
「ねーママ。このお菓子、カミドで作ってるんだって!」
そう娘に言われ、頭にはてなマークが浮かんだ私は、首をかしげながら指さす方向を振り返った。
 
 
え? カミド?
お菓子の箱には販売元住所「兵庫県神戸市」と書かれている。
 
 
「あーはいはい。これは神戸。こうべって読むんだよ」
毎度のことながらがっくり肩を落として言う私に、娘は「こうべ」「こうべ」となぜだか嬉しそうに繰り返した。
 
 
日本語、特に地名は特別な読み方があったり前後に来る言葉で読み方が変わったりして子どもだけでなく大人でも難しい。地名に限らず漢字全般が苦手な彼女は漢字の読み書きが大嫌い。当然、本も読まない。学校でも国語は苦手な教科だ。
 
 
子どもが小さい頃、親が読み聞かせをしていないと言葉の理解が遅く国語が苦手になると聞く。母親の私としては、読み聞かせを全くしてないわけじゃないが、毎日何時間も読み聞かせをしていたわけでもない。それは、彼女が家の中で本を読むよりも外で遊ぶ方が好きだったこともあるが、読み聞かせを聞くよりも、本をめくる動きに興味を示して次々ページをめくりたがったり、読み聞かせをする母親を真似てノートをめくり、自分の作った話をまるで物語を読んでいるかのように話したりする方が好きだったから。
 
 
「想像力がない子は国語が苦手だ」と聞いたこともある。例えば「選出」という漢字なら「選んで出す」のように、漢字を読むにはその漢字の意味を想像し考えれば分かるからだろうか。しかし、初めて目にする漢字が出てきた時のことを思い出してほしい。本を読んでいて知らない漢字が出てきたら、読み方をひとまず予想して読み進める人が多いのではないだろうか。私なら本を読み進めたい気持ちがあるからすぐ辞書で調べることはせず、前後の文章からその漢字の意味を予想して読み進める。そしてきっとこう読むんだろうなと想像する。きっと娘も同じ。小学生になっても人形遊びが好きで、自分で作った物語の世界に入り込む彼女に想像力がないわけではないと思う。
 
 
ではなぜ、読めないのか。
 
 
思い当たることがある。ウチは共働きで子どもはずっと学童保育に預けっぱなしだ。放課後から夜遅くまで集団で過ごし、帰宅すると食事して入浴してすぐに就寝。週末も余裕がなくバタバタと時間に追われている。私は娘のそばで話を聞くことができていなかった。もしかして彼女は、知らない漢字の読み方を予想して「たぶんこう読むんだろうな」と思っていても、その「想像」を確かめる手段がなかったのかもしれない。正解を確認したい時、誰もそばにいなかったのかもしれない。
 
 
いままで漢字嫌いを放っておいた私は反省した。
 
 
「音読やろう!」
 
 
最近の母娘の合言葉はこれだ。冬休みに「音読をがんばる」と決めた。
 
 
音読は文字通り、音に出して読む方法。
 
 
ウチの地域では小学生に必ず出される宿題の一つで、6年間毎日続く。音読カードなるものをひと月に一枚渡され、何を読んだのか、声は明瞭か、読み方は正確かなどチェックするようになっている。しかも「音読1回」の日もあれば。ちょっと早帰りの日とか休みの前日に「音読3回」なんていう日もある。たいていの親は面倒になって1カ月分まとめて印鑑を押したり、子どもにチェックさせたりしていた。私も子どもに任せきりで実際に聞いていなかった、聞くとしても何か家事をしながら「あ、はいはい。やってるね」くらいに聞き流していた。
 
 
これはまずい。毎日出る宿題なら音読を活用しよう!!
 
 
お互いに心を入れ替えた。まず、家事をしながらちょっと耳を傾ける方法をやめた。彼女と並んで座り教科書を片手ずつ2人で持った。とにかく丁寧に聞く。一緒に文字を追いながら聞く。読み方を確認しながら聞く。娘は音読、母は黙読。
 
 
冬休みに入ってすぐの頃は、すぐ隣で読み方の注意をされるし「嫌だ」と言っていたが、続けるうちに自分の読み方に自信が持てるようになったのか、最近は以前よりハッキリした声でしっかり読めるようになってきたと思う。音読が楽しくなってくると短い話だけでなく長い語も読みたくなるらしい。久しぶりに図書館に行って本も借りた。地名も覚えようと日本地図の本も借りてきた。
 
 
「図書館は好きだけど、本を読むのはきらい」と言っていたのが、図書館から本を抱えて出てくる。それだけでも効果があった、母はやってよかったとホッとする。きっと漢字も少しずつ読めるようになるはずだ。
 
 
今日、帰りの車の中で彼女は言った。
「ねーママ。私ね。さいきん、はらさんの本ばかり読んでる。はらさん。はら、さく、さん?」
 
 
頭にはてなマークが浮かんだ私は、首をかしげながら振り返った。
 
 
「原作」
どうやら表紙に必ずある文字を「原さん」の名前だと思っていたようだ。想像力豊かな彼女の頭の中には原さんの本がたくさん並んでいるらしい。私はまたひとつずつ、想像を確認する作業をしていこうと思う。

 
 
 
 
***
 
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2020-01-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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