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メディアグランプリ

人工的な自然が心地いい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:村野友美(平日ライティングコース)
 
アウトドアが好きな人は多い。
そもそも身体を動かすことが大好きな人や、
バーベキューなど外ごはんや外遊びが好きな人は沢山いるだろう。
自分はそうではなくても、若い頃はそういう友人が沢山いて、
よく連れ立って遊びに行っていた。
 
10代の頃は友達に誘われてサーフィンに毎週末のように繰り出した。
20代の頃はやはり毎週のように自転車のツーリングや
キャンプ、登山に行った。
スキーが全盛期だったので、スキーにも行った。
 
ではアウトドアが好きなのかと自問してみると、
これがわからないのである。
 
いや、どちらかというと嫌いなのだ。
私はいわゆる出不精というやつで、できれば家でゴロゴロと
本を読んだり、音楽を聴いたりしていたい。
 
ではなぜ若い頃足しげくアウトドア派の友人にくっついていったのかといえば、
アウトドアは嫌いなのだが、その中の“きらめく瞬間”が大好きだからだ。
 
きらめく瞬間とは、例えば、これから海へ繰り出すぞ!
という夜更けの集合&車でわいわいの瞬間だ。
 
サーフィンも日焼けも大嫌いだが、この深夜のドライブが好きで好きで、
ついつい誘われると行ってしまっていた。
(近場に海があったら行かなかったかもしれない)
 
登山も大嫌いだが、山の上で淹れるコーヒーのおいしいこと。
固形燃料で湯を沸かしてわざわざ豆を挽いてゆっくり淹れる。
山頂や森でのその行為自体が大好きなのだ。
丁寧に入れたコーヒーを飲むためだけにきつい登山について行った。
 
焚火や森の朝の散歩もたまらない。
その瞬間だけのために、面倒な食事の用意も、大きな虫がいるトイレも
寝にくいテントもなんとか我慢できたのだ。
 
スキーは後の温泉。これがなければ絶対行かない。
自転車もみんなで車で繰り出すのが楽しかった。
たいていは車道を走るので恐怖もあるし、筋力のなさから
首の後ろが凝ってパンパンになるし、
ロードレーサーはすぐにパンクするし、
いいことなんてあまりない。
 
でも自転車で風と一体になる瞬間、サーフィンで波と一体になる瞬間、
この瞬間は本当に気持ちいい。
 
結局私は本当にはアウトドアが好きということではなさそうだ。
私が好きなのは、現代の生活でほんの少しだけ自然を垣間見ることを
許してくださいね、的な都会人的&人工的自然の断片だ。
 
年齢を重ねてみなそれぞれ家庭を持ち、
昔のようにレッツアウトドア!
ということは無くなった。
 
子どもが小さいころはキャンプもしたが、
あくまでも子どもに楽しい思いをさせてやりたいという
ことが目的なので、昔の様なガッツアウトドアではなかった。
 
子どもが成人した今やアウトドアとはほぼ無縁の、
本来の姿に戻ったというか、インドア派に徹している。
 
旅行にしたって、自然派ではない。
 
グランドキャニオンやセドナのような手付かずの自然に
接するのも素晴らしいことだと思うが、圧倒されるよりは
「人が手を入れた」小さな自然の方が好きなのだ。
 
例えば京都の枯山水などのお庭。
キレイに掃き清められ、砂紋で彩られている。
そこに込められている思想などは置いておくとして、
ただただ美しいと感嘆する。
 
自然ではありえない造形なのに、より自然を感じるのだ。
自然をデフォルメしているからだろうか。
あるいは庭という小さな場に宇宙を閉じ込めているからだろうか。
 
坪庭などもそうだ。
近所の竹やぶなどは普段何も感じないのに、
ちょっとした料理屋さんの坪庭に竹や白砂で整えられていると
人工的なのに逆に自然を感じることができる。
 
生け花なども人工的な自然といえるだろう。
 
ある時、バスを待っていてふと空を見上げた。
木の枝の合間から見える空が美しくて、ハッとした。
立ち位置をずらして枝の角度を変えて空の見え方を変えてみる。
 
普通に空を見上げるよりも木の枝で切り取られた空が
より美しく感じられて驚いた。
 
その時、ふと思った。
昔、見える角度を変えることで美の表現が変わることを
発見した人が、花を持ち帰り花器の上で空間と花の織りなす美を
再現しようとしたのが生け花のはじめではないかしら、と。
 
家の中で花や草や木の枝が小さな花器の中に一堂に会すること、
これほど不自然なことはないはずだ。
それがどうだろう。花器が野山に見えたり、庭に見えたりするではないか。
切り取られた自然を小さな空間で再現することで、
より自然を感じることができるのだ。
 
粋人の庭ではキレイに枯れ葉を掃いたあと、
わざと少し枯れ葉を散らすのだとか。
 
これも人工的な自然だが、より自然の美しさを強調しているのだろう。
自然ではありえないことを再現することで、
日常と非日常の境目をぼかしている。
 
大自然は厳しい。
そのまま飛び込んでいくには人間はひ弱だし、
美しさを感じるのよりも恐ろしさを感じることも多いだろう。
だからこそ安全な立ち位置で、ちょこっとした自然を
堪能するのが楽しい。
 
ちょっと楽しませていただきますね、と
謙虚な気持ちで。
 
自然の中だけど人工的なキャンプ場で、わざと日常を持ち込む。
テントで本を読んだり、森の中でお茶を飲んだり。
焚火をしたり、料理をしたり。
 
テントで読む本はネイティブのものが断然おすすめだ。
自然への畏怖と感謝を思い出させてくれる
 
それらが普段意識していない自然をより強く感じさせる。
それだけではない。
日常のなんでもないことが外では非日常になりとても愛おしく感じられるのだ。
 
この寒い季節、
庭で、あるいはベランダで、コーヒーを丁寧に入れて
一服して夜空を見上げてみるというのはいかが。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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