ビール好きから愛される「炭酸が無いビール」の話をしよう
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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井上敬介(ライティング・ゼミ 平日コース)
「おいおい、このビール炭酸抜けちゃってるよお!」
居酒屋などに行くとたまに聞くこのフレーズ。
うんうん分かる、分かるよ。
炭酸のシュワッ! とした爽快感がウリの一つでもある、ビール。
その炭酸が抜けてしまっているのだ。そりゃあがっかりして、文句の一つも言いたくなるよね。
ただ、私は知っている。
この世界には「炭酸がほとんどないけど美味しいビール」があるということを。
その美味しさに魅了され、ビールメーカーに就職までしてしまったのが、私だ。
今回はその「炭酸がほとんどないビール」について、ご紹介させてほしい。
きっと、ビールに対するイメージが変わるはずだ。
—–
……そもそも、ビールの炭酸ってどうやって作られているか、ご存じだろうか?
「発酵の過程で、ビール酵母が作ってくれるんじゃないの?」
ちょっとビールに詳しい人ならこう答えてくれると思うのだが、実はそれ、半分正解で半分不正解なのである。
ビールの製造工程をざっくり紹介すると、
・原材料である「麦芽」を煮込んで、甘い「麦汁」を作る
・麦汁に「ホップ」を投入して、苦みや香りをつける
・麦汁にビール酵母を投入し、麦汁の中の糖分を食べさせ、「アルコール」と「二酸化炭素」を作らせる(発酵させる)
こんな感じだ。ビールの種類やメーカーの違いによって多少の差はあれど、どんなビールもこんな過程を経て作られている。
ここの最後の過程、「ビール酵母にアルコールと二酸化炭素を作らせる」。
この二酸化炭素が、炭酸の正体だ。
「……ていうことは、結局酵母が炭酸を作ってるってことなんじゃないの?」
そんな声が聞こえてきそうだが、実はちょっと違う。
現在日本の市場に出回っているビールのほとんどは、発酵の過程を経た後に、人工的に炭酸を付与したものだからだ。
人工的に……というと、ちょっとネガティブに聞こえるかもしれないが、ちゃんと大切な役割もある。
第一に、品質の安定。
ビール酵母が作り出せる炭酸の量は、それほど多くない(少なくともビール酵母だけであの「シュワッ!」を作り出すのは難しい)。
また、ビール酵母も生き物なので、その時々で作られる炭酸の量は変わってきてしまう。
それを調整する意味で、炭酸を添加し、毎回あの「シュワッ!」を提供できるようにしているのである。
第二に、爽快感の担保。
日本で流通しているビールの9割以上は「ピルスナー」と呼ばれるタイプのビールだ。
この「ピルスナー」は、透き通ったような黄金色の色合いと、キレのある爽快感が特徴のビールで、つまるところ、
グビグビ、シュワッ、プハー!!
の様式美で日本、いや、世界中を魅了しているビールなのである。
この「シュワッ!」の爽快感を担保するために、ピルスナーを作っている各ビールメーカーしっかりと炭酸をつけてから出荷しているのだ。
炭酸を後から添加する意味合いとしては大体以上の2つが当てはまる。
一方、私が冒頭で紹介した「炭酸がほとんどないビール」とはどんなビールなのか?
……それは「酵母の生み出すわずかな炭酸のみが入ったビール」のことなのである。
その味わいは「ピルスナー」とは全く違う。
無濾過だからこそ、ビール本来の味わいを余すことなく感じられるのだ。
炭酸のとげとげしい口当たりはなく、ふくよかな麦のコクと、ホップの豊かな香りが腔内を満たす、なんとも穏やかな味わい。
分かりやすく例えるならば、
「無濾過生原酒の日本酒」、「樽から直接注いだワイン」のようなイメージである。
時折感じるわずかな炭酸は、酵母が頑張って生み出したもの。そのピチピチとした感触が可愛らしい。
グビグビと飲まずに、一口飲んだら「ふう……」と一息ついて、そしてまた飲みたくなる……という、ゆっくりと時間を楽しむのにピッタリなビールなのだ。
そのビールの名は「リアルエール」という。
「ピルスナー」が生まれる前から、ビール好きの舌を唸らせてきたビールだ。
今でも本場・イギリスでは、日常的に親しまれている。
このリアルエール、無濾過であるために扱いが難しく、一般的な居酒屋などではまず飲むことが出来ない。
要冷蔵なうえに賞味期限はかなり短く、また、グラスに注ぐ際にも専用の機器が必要というなんとも手間のかかるビールなのだ。
ただ、だからこそお店の人も丁寧に一杯を注いでくれるし、その特別な一杯を、ビール好きは愛しているのである(私のように!)。
「飲んでみたいけど、あんまり飲めないのか……」
と落ち込むことなかれ。
確かに数年前はあまり飲めなかったこのリアルエール、最近ではクラフトビールブームに押されて、首都圏では飲めるお店がかなり増えた。
普段はビールをあまり飲まない、という人にも一度は飲んでみてほしいと、心からお勧めできるこのリアルエール。
ぜひ一度、飲みに行ってみてほしい。
あなたのビールの世界が変わること、間違いなしだ。
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