メディアグランプリ

コミュニケーションの天才から教えられたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高田 麻由(ライティング・ゼミ平日コース)
 
彼女は、コミュニケーションの天才だ。
 
彼女がいると、誰もが笑顔になる。
彼女は何も言わないのに、みんなが話しかけてくる。
彼女見つめられると、なにか話しかけたくなってしまう。
彼女は泣き声ひとつで、何人もの人を動かすことができる。
彼女と一緒にいると、私にも、だれもが優しい言葉をかけてくれる。
 
彼女は、そう、赤ちゃんのことだ。
 
子供が生まれて半年。
子供を抱っこして、ベビーカーに乗せて、子連れで出かけると、ありとあらゆるところで人に話しかけられるようになった。
1日3回はくだらない。
 
ある時はエレベーターの中で。
ある時は電車の中で。
ある時はカフェで。
 
「あら〜! 可愛いわねぇ」
「今何ヶ月?」
「頑張ってね!」
 
エレベーターの密閉された空間は特にそうで、ほとんどの人が話しかけてくれる。そして、最後に、私にも「頑張ってね」「元気に育ててね」と声をかけてくれる。
 
そうするとそこになんだか、暖かい空間が生まれる。
 
赤ちゃんに話しかけられること。
それを「嫌だ」「困る」という人もいるという話も聞く。確かに、私も、正直、男性だとちょっとドキドキするし、この人には話しかけられたくないな……と思ってしまう風貌の人もいる。
いきなり触られるのは、正直びっくりするし少し嫌な気持ちになるので、私も他の赤ちゃんに対して、気をつけるようにしている。
 
でも、ほとんどの人が、暖かく優しい。
外出すると、だいたい3,4人には話しかけられるから、その都度、なんだか嬉しくなり、いい気持ちでその空間を後にすることができる。
 
そして、きっと、話しかけてくれた相手も、少し嬉しい気持ちや幸せで暖かい気持ちになっているのではないかな、と想像できる。
 
お互いにいい時間にしたいな、と、私も笑顔で挨拶をして別れる。
 
知らない人に話しかけられる。こんなことは子供が生まれるまでなかった。
彼女は、全く知らない人をいとも簡単に自分のファンにして、声までかけさせてしまう。そして、無条件のあたたかな幸せをその数秒で与えてしまう。
ある時は、魚屋さんで「可愛いね! 何ヶ月?」から始まり、見事にお刺身を半額にまでさせてしまった。超一流の交渉人でもあるのだ。
 
なんてすごいことなんだろう……!
 
また、彼女は、泣き声だけで、大の大人を何人もオロオロさせたり、動かすこともできる。「ふえふえ……」「ぎゃーっ」だけで、料理も掃除も仕事も全てストップ! おっぱいかな、オムツかな、抱っこかな? 「いないないば〜っ!」 あれやこれやと自らいつもより積極的に、機敏に動いてしまうのだ。
 
何をしても泣きやまず一時間抱っこし続けて途方に暮れても、料理が出来上がったタイミングで泣きだして、パスタが乾いてパリパリになっても、どんなにどんなに疲れても、最後に「にこ〜っ」と微笑まれると全てを許してしまう魔力も持っている。
 
彼女はコミュニケーションの天才だ。
そして、言葉を発せず、ただそこにいるだけで、周りを幸せにする力を持つ。
子供は天使。本当にそう思う。
 
「子育って大変だけど、日々、赤ちゃんのすごさを思い知らされるし、幸せをもらっているよね!」
そんな話を友人とした時のことだった。
 
友人は、こう言ったのだ。
 
「本当にそうだよね。でもさ、母にとって、自分もそんな存在だったのかと思うと感慨深くて、涙腺が緩むよね」
 
「……!」
 
その言葉に、衝撃を受けた。
おもわず涙が溢れてきた。
 
「そうだ。私も、まわりを幸せにする存在だったのだ。母を、両親を、みんなを幸せにしていたのだ。わたしも、そんな存在なのだ」
 
きっと私の母も、同じような経験をしたに違いない。
子育てで大変だった時、私が微笑むのを見て、なんとも言えない幸せを感じたに違いない。外出すると、たくさんの人から声をかけられ、あたたかな気持ちになったに違いない。
私がいたことで、それまで行かなかった場所にいったり、それまでしなかった会話を家族としたりしたに違いない。
きっとたくさんの幸せが生まれていたはずだ。
 
ただ、私は、そこにいただけで。
 
しかしながら、成長していく過程で、人は「頑張る」ということを覚える。「頑張るから認められる」「何かを与えるから愛される」そんな風にいつのまにか思い込んでしまうのではないだろうか。
 
いつからか私も「頑張っているから愛される」「笑顔でいるから好きになってもらえる」「コミュニケーションがうまくとれるから仲良くなれる」そんな風に思うようになっていた。
私はコミュニケーションを「頑張って」とるようになっていた。
 
「そのままの君でいい」「人は存在そのものが素晴らしい」
そんな言葉をよく聞くし、「そうだよな」とも思っていた。でもどこか腑に落ちていなかったのだと思う。
 
だからこそ、友人の言葉を聞いてハッとした。
そもそも、私たちは、なにもしなくても、ただそこにいるだけで、コミュニケーションをとることができ、人を幸せにすることができる存在だったのだ。
 
それは、歳をとったとしても変わらない、本来私たちが備え持っているもの、いや存在そのものなのだと思う。
 
私たちも、コミュニケーションの天才だ。
私たちも、ただただそこにいるだけで、周りを幸せにする存在だ。
 
言葉も喋れない、まだこの世に生まれて数ヶ月の赤ちゃんが、そんな大切なことを教えてくれた。
 
赤ちゃんって本当に、天才だ。
 
 
 
 
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2020-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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