メディアグランプリ

ジェンダーギャップ解消には親の背中で語りかけろ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山本和輝(ライティング・ゼミ平日コース)
 
私にはどうにも聞き心地の悪い言葉がある。
それは「女のくせに」だとか「男らしく」などの言葉。
いわゆる男女の社会的な役割を決め込んでしまう、日本社会に根強くのこっている考え方だ。
 
私の出身地、九州、博多の出身でもこの問題の根っこは深い。
よく出身地を聞かれたとき博多だと答えると
 
「九州男児だったんですね~!」
 
などと言われる。
言っている人には何の悪気もないとはおもうのだが、この九州男児と言われると思わず、
苦虫を嚙み潰したような気持ちになる。
 
世の中で一般的に九州男児というのは、男らしく、勇気があって、リーダーシップを取って、ドーンと構えていていざという時に頼れるというイメージなのかも知れない。
約30年前まで、私が住んでいた頃の九州男児は、威勢がよく目立つ存在だった。
しかし、家庭でも仕事でもやたら威張っていて、表ではかっこつけていても、ちょっとした失敗を隠したり、体裁を保つために嘘をついたり、大事な場面で言い逃れをして逃げ出したり、九州男児と自称する輩はとても情けない田舎のチンピラのような男たちだったのだ。そして、家事などは一切せず文句ばかり言って、妻をののしっている。もちろんそうでない人も居たかも知れないが、私の周囲にではあまり見かけることはなかった。
 
だから、申し訳ないが「九州男児」というのが、全ての人にとって誉め言葉ではないことを、ちょっと知っておいて欲しいと思うのだ。
 
ところで、この日本での男女格差問題は、世界的に見ても日本が遅れていることが知られている。
12月にグローバルジェンダーギャップ指数というものが発表された。この指数はいわゆる男女格差指数を表すもので、日本は2018年に153か国中110位だったものが、2019年は121位に落ちたということだ。実際の生活の中でもこの格差は至る所で目にすることができる。
 
女性政治家の数は圧倒的に少ないし、大企業でも女性管理職になっている人は非常に少ない。教育でも医大の入試で合格した女性より点数の悪い男性受験生が合格し、女性だと言うだけで選別されて不合格にされた事件も一昨年起きた。
 
しかし逆もある。私は小学校のPTA会長を2年間やった経験で感じたことだが、女性活躍といって煽らないで欲しいという人達も非常にたくさんいるのだ。人の家庭の役割分担に口を出すのはおこがましいが、家庭での掃除、洗濯、料理をこなせる女性が優れているといった考えはとても根強い。
また育児にしても「こどもはお母さんが1番なんだよね」や「3歳までは親と一緒に密着して生活するのが正しい」といったステレオタイプな認識もだ。
 
そういった観念にとらわれて育った女性は、家事を自分の不可侵領域として、男性が入ってくることを拒む人もいる。しんどい思いをして、文句を言いながらも自分の居場所を変えられずにいる人も多い。
そこに家で何もしないダンナが組み合わさると、もう問題だらけの日本社会のミニチュアのできあがりだ。家でだらだら過ごして自分の趣味や遊びを最優先に考え、子どもの教育にもさして関わらず奥さん任せ、家事もろくにできず文句だけを言うダンナのなんと多い事か!!

最近、そんな固着した性別による役割にこだわらない人も増えているようには思うが、柔軟さを持っている家庭は実際には1割もいないのが実情だったように思う。2年間で500世帯中、PTA活動に参加したお父さんはたった3名程だったのだ。私の住む東京ですらそうなのだ。
 
まあ、20年ぐらい前からすれば、随分と女性を卑下するような言動は減ってきたように思うが、そのころ社会人になった世代はまだまだ企業の中間管理職に居座っている。この人たちのなかで自分の考えを変えて、世の中の変化に合わせられる人がどれだけいるのだろうか? 人間、一旦染みついた価値観を捨てて、考え方を切り替えられる人はそうそういないものだ。
 
では、いったどうしたらいいのだろうか?
 
社会システムを変える? 法制度を変える?
いろいろな方法はあるだろうが、私はいろいろ考えた末あるアイディアにたどり着いた。
 
それは、新しい考え方をもった若い世代を育てることだ。
 
だれにでも経験があることだと思うが、自分の家庭の常識が、友だちの家庭では全然違ったなんてことはないだろうか?
 
もし、父親が家事も育児も全然せず、母親に押し付けっきりの家庭で子供が育ったとしたら、それがその子の生活の常識になってしまうだろう。逆に、父親が育児や教育に真剣に時間を割いて、家事も母親と同じレベルでやる家庭だったら、それがその子の常識となる。
 
それに、家庭の仕事や子どもの教育を分担してやる協業体制が無いと、会社の様々な制度や行政によるサポートも役に立たない。まず、その問題の根源となっている最小単位の1つずつの家庭から変わる必要があると思うのだ。
 
しかし今の親世代では、まだまだ社会的なバリアを超えることが難しい家庭も多い。でも、少しでも家事を一生懸命やる父親の姿、全てを抱え込まず一緒に苦労を分担する母親の姿を子どもの目の前で見せていくことが、とても大事なように思うのだ。
 
いちいち口で言い諭さなくても、子どもは親の後ろ姿を見て育つ。
親の言動が、子どもの言動に与える影響はものすごく大きい。
特に、物心ついて以降の小学生時代にこのようなインプットを受けると、それがしっかりと子どもの試行パターンに定着していく。女性も男性も相互に差別したり、性的な役割に固執しなくなれば「女のくせに」「男のくせに」といった言葉も廃れていくに違いない。
 
そして、両親のそのような後ろ姿を見て育った子供たちが社会人になり、20年後か30年後かわからないが、世の中を動かす世代になったとき、新しい考え方をもつ人がマジョリティになっていれば、固着化した日本の常識もひっくり返るのではないかと思うのだ。
 
洗濯物を畳んだり、食器を拭いて戸棚にしまったりそんなささいな家事でも、自分の姿を通して性的な差別や区別が無い日常生活を子どもに伝えていく。私は、案外これが世の中を変えていく原動力になるのではないかと期待している。
毎日の小さな家事も教育も、子どもの成長を通して未来の日本を変えていく可能性があると考えると、実に夢のある楽しいものに思えてはこないだろうか?
 
 
 
 
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2020-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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