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メディアグランプリ

何をしてもダメだった私を褒めてくれた、唯一のもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:あかね(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「マラソン大会、何位やった?」
小学2年生のモモちゃんの問いかけに、ひとつ年下のアイちゃんは口ごもった。
「んー。えっとねぇ……。モモちゃんは何位やったん?」
「私は3位やったよ!」
嬉しそうな笑顔で、モモちゃんは答えた。
「それで、アイちゃんは何位やったん?」
「えー? アイはねぇ。んーっとねぇ……。もう忘れちゃった!」
 
目の前で繰り広げられる幼い2人のやりとりに、私は昔の自分を思い出していた。
アイちゃんは、幼い頃の私だった。
 
「マラソン大会、何位やった?」
幼い頃の私にとって、これほど破壊力のある言葉はなかった。
まったく運動のできない私は、マラソン大会が大の苦手だった。どんなに頑張って走っても、どんどん抜かされていく。最後尾を走る先生の「ほら、あとちょっと!頑張って!」という声に追いつかれないように、必死で走っていた。
結果はいつも、後ろから数番目。74人中70位の賞状をもらったときの悲しさ。
「これ、全員賞状いる?速かった人だけでいいんちゃうかな」
いつも、そう思っていた。
「もらっても、がっかりするだけやん」
そんな落ち込んだ気分の中、ふいにかけられる、この言葉。
 
「マラソン大会、何位やった?」
 
誇らしげな笑顔。自信に満ちた声。聞いてくるのは大抵、上位をとった子だ。おとなしい私にも話しかけてくれるような、優しい活発な子でもある。
 
「きっと上位やったんやろうな。何位やったんやろ」と、想像する。
まあ、70位の私からみたら、ほとんどの子は上位になる。私より速かったことは、間違いない。そんな子に「70位だった」なんて、絶対に言えない。私にもプライドがある。いや、プライドというより、恥ずかしさか。
 
実はこれでも前回は72位で、今回はちょっと順位が上がったのだ。心の隅っこで、ほんのちょっと喜んでいたのだ。
ほんのちょっと嬉しかったはずの70位が、一瞬のうちに「いや、70位ってほぼ最下位やん。こんなん絶対友達に言いたくないやん!」という恥ずかしさの塊になってしまうのだった。
 
アイちゃんの順位が、私ほど低かったかどうかは、分からない。本当に忘れてしまっただけかもしれない。
でも、「マラソン大会、何位やった?」という問いは、私にとっては口が裂けても答えられない問いであり、私の運動神経の悪さを自覚させられる問いでもあった。
 
苦手だったのはマラソン大会だけではない。
運動音痴な私は、もちろん運動会もダメだった。
 
徒競走では1位をとったことがないし、リレー選手になんて当然選ばれたことがない。跳び箱やら、平均台やらを間に挟む障害物競争はもっとできないし、玉入れ競争なんて1個の玉を入れることすらできない。
 
運動だけではない。引っ込み思案だった私は、学級委員など人前に立つようなことができなかった。児童会に入って活動したり、先生に頼りにされている子が羨ましく、憧れでもあった。小学生の頃の私は、目立たず、優れたことも特になく、評価されるようなことはほとんどない子だった。
 
そんな私が唯一、評価されたことがあった。それは、“皆勤賞”だ。
 
健康だけが取り柄だった私は、小学校6年間、特に大きな病気をすることもなく、熱が出ても次の日にはケロッと治っているような子だった。毎日休まず学校に通い、気がついたら6年間続いていた。そのことを卒業式の日に表彰してもらえたのだ。
私を加えて計6名。大勢の人たちの前で舞台に上がったときの恥ずかしさと誇らしさ。
 
「こんな自分でも褒めてもらえるんだ」と、すごく嬉しかった。皆勤賞は、何もなかった私の6年間を認めてくれたような気がした。
 
そんな“皆勤賞”が今、徐々に廃止されようとしている。
 
皆勤賞をとるために、体調が悪いのに無理して登校する子がいるかららしい。また、病気などで、学校に行きたくても行けない子に配慮するべきだという意見もあるようだ。
 
たしかに皆勤賞のために無理に学校に行かせるというのは違う気がする。「毎日学校に行くことが正しい」とされるのも、怖い。学校だけが世の中の全てではないし、“皆勤賞をとること”が絶対的に正しいことだとも思っていない。
 
でも、単純に“頑張ったことを褒める”方法として、皆勤賞があってもいいんじゃないかと思うのだ。
 
マラソンが得意な子は、マラソン大会で褒めてあげる。
短距離走が得意な子は、運動会の徒競走で褒めてあげる。
絵が得意な子は、絵画コンクールで褒めてあげる。
毎日学校に行けた子は、皆勤賞で褒めてあげる。
 
そうやって、子どもたちがそれぞれ頑張ったことを褒めてあげるのは、そんなに悪いことだろうか。
 
むしろ、もっと賞を増やしたらどうだろうと思う。
例えば、すばらしい自由研究をした子に送る、“未来の研究者賞”。
授業中、もっとも多く手を挙げた子に送る“ベスト挙手賞”。
音読がもっとも上手にできた子に送る“語り名人賞”。
もっともっと、いろんな賞があればいい。
 
人それぞれ、得意なこともあれば不得意なこともある。得意なことや、頑張ったことがあれば、「よくできました」と、褒めてあげたい。それが、子どもたちの自信や、頑張る力になれば、もっと嬉しい。
 
 
 
 
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2020-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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