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メディアグランプリ

豚はおだてなきゃ木に登らない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:村野友美 ライティング平日コース
 
もう時効だろうだろうから白状するが、中学二年の時盗みをはたらいたことがある。
 
あの暑い夏の日、宿題の「読書感想文」が書けずに私はうんざりしていた。
真っ白な原稿用紙を前にうんうん唸りながら、
こんな面倒な案件を後回しにし続けたことを後悔するでも反省するでもなく、
なんとか早くやっつけてしまい、また自由を手に入れることだけを考えていた。
なんとかさっさとこの目先の苦しみから逃れる手はないのか?
 
何気なくきちんと整理整頓された姉の机の前をウロウロ。
わたしのひっちゃかめっちゃかに散らかった机とは大違いの美しさである。
そこに神の采配としか思えない宝物を発見した。
姉が書いた読書感想文の原稿である。幸い姉は外出中だ。
奇跡だ! 救いだ!
「夏目漱石の『こころ』を読んで」
 
「『恋は罪悪です』と先生は言った」
から始まる読書感想文は、水を求めて砂漠をさまよい歩いていたわたしにとってのまさにオアシスであり、そおっと原稿用紙を開いてはむさぼるように読み進めた。
 
5歳違いの姉は小さなころからずっと秀才だった。
わたしは凡庸だった。
 
姉の読書感想文は凡庸なわたしの目からみてもわかるくらいすばらしい内容で、わたしは宿題のことなど忘れて感動して没頭して読んでいた。
 
その後、一気に原稿用紙を丸写しした!
一字一句間違えないように、空白も改行もその通りに。ぬかりなく。
主張を真似たなんて可愛いものじゃなくて文字通り丸写しの盗みだ。
 
前述したが、姉は秀才だ。
読書感想文を書いた当時、偏差値72の進学校の高校に通っていた。
頭の出来が違う。 しかも5歳も上なのだ。
冷静に考えたら、ばれないわけがない。
姉の原稿用紙には高校の先生による評価が赤ペンで書かれていた。
たしか5重にマルが描かれ、一言「秀逸!」と。
秀才の高校生の姉の「秀逸!」の評価をもらった文章を盗んだのだ。
 
しかし、その盗みはバレなかった。
それどころか、わたしは国語の先生から大絶賛されたのである。
それだけなら、おバカな妹が出来のいい姉の力を借りて(盗んで)、ちょっぴりいい思いしただけなのだが、話はそこで終わらない。
 
先生の大絶賛だけでなくわたしの自己評価が恐ろしく上がったのだ。
もちろんいくらおバカなわたしだって、先生がほめちぎっているのはわたしではなく姉であることは十二分に理解できていた。
……できていたはずだ。……多分できていた、と思う。
 
いや。
わたしは本当に根っからのおバカだったのだ!
 
姉が大絶賛されているにもかかわらず、
「なんか、めっちゃ気分ええなぁ」
的な、変な自信が生まれたのだ。 (おバカ最強)
 
勘違い、である。
 
さすがに感想文を丸写しするからには「こころ」も読んだ。
だけど、ある意味先に姉が出した「解答」をもらっていたので、すごく理解が進んだのだった。とっつきにくかった夏目漱石が身近に感じられるようになり、一気にその他の作品も読み込み始め、気が付いたら夏目漱石の大ファンになっていた。
さらに無意識だが結果として、中二の夏のわたしは「名文を写す」という文章の勉強もしていたことになる。
 
先生の勘違いとわたしのおバカな勘違いがクロスして、自己評価が上がったわたしはその後どんどん読書感想文を書いた。
そしてなぜか大絶賛され続け、勘違いし続け、作文で市の賞と絵の賞をたて続けに取り、朝礼で600人の前で何度も表彰され、副賞のパーカーの万年筆までもらえたのである。(なぜか絵の賞まで取れた! 成績も上がった!)
 
これは完全に自分はなんだかいけてるかもと、わたしが、いや、わたしの「脳」が勘違いした結果なのだ。
 
自己肯定感も、反対に自己否定感も結局はちょっとした勘違いがきっかけになると知った経験だった。いかに脳をだませるか、なのだ。
 
ただ、自分で自分の脳をだますのはなかなか難しい。
やはりできない自分をよく知っているから。
だから人は他人の評価に振り回されやすい。
自分で自分の脳をだませたら一番いいけれど、それが難しければ家族や友人にほめてもらうのも十分に効果がある。
だからこそ、自分もどんどん周りの人をほめたいと思う。
勘違いで幸せになれるなら、最高だ!
 
豚もおだてたら木に登るのだ。
だけど、おだてなきゃ木にのぼらないなら、どんどんおだてよう。
 
さて、大絶賛してくれた中学の国語の先生。
読書感想文を本当にわたしが書いたものだと思っていたのか、
親だか家族が書いたものだと疑っていたかは、いまだに謎だ。
ただ、もしわかっていて、なおわたしをほめてくれたのだとしたら、
先生の包容力に感謝しかない。
 
そして、自分の文章を盗まれているとも知らず、わたしが文章で表彰されたり、雑誌に入選したりするたびにわたしをほめちぎってくれた姉に、40年ぶりに懺悔した。
おねえちゃん、ごめん。
姉はあー、そんな感想文書いたなぁ、と笑ってくれた。
頭の出来だけでなく人としても出来ている姉にも感謝しかないのである。
 
 
 
 
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2020-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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