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長く愛されるものには愛する人たちがいる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:SAT (ライティング・ゼミ平日コース)
 
私にはもう20年くらい、ずっと買い続けているかばんがある。
長旅でもない限りは、だいたいそのかばんを使っている。
 
そのかばんは、京都の老舗のかばん屋さんのもので、生地は帆布である。
だいたい、どこかわかった人もいると思うが、あえて、ここには記載しない。
 
そのかばん屋さんを最初に知ったのは、学生時代だった。
たまたま見ていた夜のトーク番組で、とあるタレントの愛用しているバッグが映し出されたときに、なぜか、雷が打たれたように、そのかばんを、ものすごくほしいと思った。
 
そのがばんは、横掛けの、戦前戦後に学生が持っていたようなかばんで、その人はパソコンを持ち歩くのにちょうどいいサイズだと言っていた。
 
普通、そんなかばんをほしいと思うか?
 
ちなみに、その人が使っているからほしいと思ったのではない。
 
なにが心を惹いたのか。
 
帆布で作られているという、そのかばんの魅力が一つ。
帆布で作られているというかばんをほとんど見たことがなく、珍しく思ったからだった。
しかも、帆布という、しっかりした生地を使っていて、長持ちしそうだった。
 
その上、京都で作られていている、という上品な感じも、またよかった。
 
さらに、その京都に唯一のお店でしか作られていなくて、手に入れるには、そのお店に行く以外に手に入れる方法はなさそうだった。
しかも、手作りだから、一度にたくさん作れないとのこと。
 
そういうところが、海外ブランドや国内のブランド含めて、お金を出したら買えるようなものではなく、持てる人が限られている、というところも魅力があるところだった。
 
つまり、使いやすさというのは当然のことだが、当時としては珍しい素材で手作り、売っているところは一店舗のみという、希少価値、作られている土地、老舗、という差別化されたブランドが惹かれるところだったように思う。
 
その後、社会人最初の冬のボーナスで、京都を旅したときに、お店に立ち寄って、初めて手にしてみた。
当然、手作りで時間がかかるため、色や形がすべての品物が店に出ている状態ではなかったから、この形だったら、この色がよかったのに、とか、お金が限られている中で、色々葛藤して、そのときは2つ、買って帰った。
 
横型のポシェットと、トートバッグだった。
 
そして、そこで選んで買ったうちのポシェットは、財布やメモ帳、ペットボトルなんかも入れることができたので、仕事でもよく使っていて、6〜7年使っていたら、かばんの角が擦り切れてしまうほどだった。
 
作り手の気持ちがこもっているものは、使っていても愛着が湧いてくる。
 
そろそろ、擦り切れてきて、これはもう買い換えないとな、というときに、そのかばん屋が地方の百貨店の催事で、当時住んでいた札幌にも来た。
 
仕事の都合がつかなくて、催事の期間の最後の方に行ったので、あまり品物が残っていなくて、欲しかった同じ型のポシェットは欲しい色がなくて買えなかった、
一応、擦り切れたかばんを京都から来ていたスタッフに見せて、直せないか聞いてみたのだが、直すより買ったほうが安い、ということだったので、そのときは諦めて、別のかばんを1つ買った。
 
でも、そこまで使い込んでくれているのだから、と、そこからそのスタッフと仲良くなって、そのかばん屋のかばんについて、色々語ってくれたのである。
 
すごくそのかばん屋のかばんが好きなんだということが伝わってきた。
 
その後、東京に転勤してきて、東京でも催事をやっていたので行ってみたら、そこでもまた、札幌に来ていた人とは別のスタッフさんたちと仲良くなり、かばん愛を語られることになった。
その時は、私が持っていたかばんがファスナー部分が壊れていたのだが、無事、修理に出すことができて、きれいに修復されて戻ってきたのである。
 
大事に使われていますね、と言ってもらえて、かばんのプロに言われると嬉しかった。
 
つまり、話をしたスタッフがみんな、売っているものの良さを自分なりの言葉で語ることができるのである。
 
自分の扱っている商品の愛を語れるくらい好きだと思っている人たちが売っているなら、本当にいいものだと思うよね。
 
結局、私はファンでリピーターになってしまったので、もうそのかばん屋のかばんを10個以上持っている。
持ちすぎじゃないかと思っているが、どうしても新作や、持っていない形のかばんがほしくなる。
 
ふと、冷静に自分の携わっている製品を考えてみると、ファンになってくれて、擦り切れるまで使ってくれたり、リピーターになってくれたりするようなものになっているのだろうか、と身につまされるような話である。
 
ちなみに、そのかばん屋は、内部のゴタゴタでもめていた時期がある。
 
それも含めて、会社を発展させてく上では、他と差別化ができて、内部からもお客様からも大好きだと言ってもらえるものを生み出していけるなら、多分、その製品や会社は末永く残っていけるんじゃないかな、と思った。
 
 
 
 
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2020-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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