人づくりとビール
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記事:makoteee(ライティング・ゼミ日曜コース)
「趣味でビールを造っています」と言うとかなりの確率でびっくりされる。
もともとアウトドアが趣味で、毎週のようにキャンプに行っていた時期がある。あるキャンプイベントのテーブルで同席になった人にスモークチーズをどうぞとプレゼントした。そのお返しで「それじゃ」と言ってキャンプサイトに一旦戻り「えっと、これワシが造ったビールです」とお返しのプレゼントをされたのがきっかけだ。
「自家製ビールって何? 」とか「ビールって造ることできるのですね」や「どうやって造るんですか? 」と質問責めにしてしまったことは皆さまの予想通り。何よりすごく美味しかったというのが決め手で、翌週には教えたもらったサイトでビール製造キットを購入して師匠のお宅にお邪魔して教えてもらっていた。師匠となった彼は南極に2度行った経験のある男でアウトドアのスペシャリストだった。
ビールを造るメリットはいくつかある。まず、美味しい。自分で造るビールは旨いのだ。次にコストをかけずいろんな種類のビールを楽しめる。最後に少し大袈裟な書き方だが人に驚きと喜びを感じてもらえるということ。
実は、造ったビールはほとんどと人に飲んでもらっている。実はこれまで実に中瓶で10000本以上作っているが、自分で飲んだのはごくわずか。わたしはサラリーマンをしている。営業職ではないが、お客さまとの会食が多い方だ。
例えば会食のとき、こんなことを良くする。趣味のビール造りを活かして会食が盛り上がったタイミングで「これ自家製ビールです」とさりげなく出す。もちろんお店の人に伝えて段取りよくグラスが出でくるようにしている。
これも趣味を活かして、お客さんの会社のロゴや旬な話題にちなんだラベルデザインをビール瓶に貼付しているのである。もちろん一気に盛り上がるの。お酒好きなら盛り上がらないわけがないのである。そこからビールの話で15分くらいは繋げることができ、お客さまの印象に残る会食になる。
人づくりという言葉がある。人材を養成することらしい。あまり好きな言葉ではなく、どちらかと言うと嫌いな言葉だ。そもそも人が人の養成をすることができると思っている時点で間違っている。
人は能動的にやりたいと思うことを行動することでしか能力はつかないと思っている人間だ。本人が好きなことや適性を自ら見つけ出す手助けをするのが権限を持った人間の大きな役割のひとつだ。それでこそ気持ち良く成長していけるはずだ。これは仕事をする上でのわたしの信念でもある。
そう考えると、人が育っていく過程がビール造りに似ているなと思った。ビールの発酵も最初はマニュアル通りにきっちりと糖の量や発酵の温度、日数を管理して造っていく。1、2年造っていくと、季節ごとの気温管理、糖の量や発酵日数などは感覚である程度できるようになっていく。
わたしのビール造りは、25リットルの水にビールの元となるモルトと酵母、そしてエサである糖を入れて1時発酵させる。気温によって発酵日数が変わるが、わたしの地域では1時発酵は1週間だ。そのあとに瓶詰めをして2週間2次発酵させて完成である。
その過程でビールの中に雑菌が入ったりすると発酵してくれない。1次発酵は糖を酵母が食べてアルコールと炭酸ガスを出すのだが温度管理が悪かったり時間を置きすぎたりするとこれもうまく発酵しないのである。
人に当てはめると育つ過程で人の無責任なアドバイスや前例踏襲という雑菌が入らないようにすることや同じ仕事をどのタイミングまで続けさせるのかという発酵期間を見守り誘導してあげることが大切で、それを自らできるように促すのが権限を持つ者の役割なのではないかと思うのである。
つまりうまく発酵すると美味しいビールができて、雑菌が入ると極端な例だと腐敗してしまう。同じエネルギーを出す過程で人間に有益な発酵と有益ではない腐敗は紙一重なのだ。今日成人を迎えた若い人もゆっくり発酵してほしいなと考えながら今日もビールを味わうのである。
※文中で登場したビールは、酒税法を守り1%未満のものを製造しています。
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