メディアグランプリ

■過去は変えられないは、本当か?いや過去は変えることができる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:バロン(ライティング・ゼミ特講)
 
 
あなたは、こんなフレーズ聞いたことがあるだろうか?
「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」
自己啓発本などでも目にする言葉だ。
 
初めてこの言葉を聞いたときは、「なるほど、そのとおりだ」と納得していた。変えることができるのは、自分と未来である。
 
しかし、あるきっかけで、それは本当なのか?
疑問を抱くようになった。
前半の部分だ。「過去は変えられない」という。
本当に過去は変えられないのだろうか?
 
今から12年ほど前の11月のことだ。
すでに雪がちらつく季節となっていた。
夜10時頃、私は終業後、体育館に寄り、トレーニングを終えて帰宅した。
そのとき妻は、居間でテレビを見ていた。
お笑い番組を見て笑っていた。
当時、「はんにゃ」という2人組の芸人が人気だった。
彼らの定番のネタとして「ズクダンズンブングンゲーム」というのが流行っていた。文字にするとちょっと読みにくいかもしれない。しかし、この名称を言うだけで、笑いを誘うようなネーミングだ。
 
今、あなたはPCやスマホなどで、ネットにつながる環境にあるなら、彼らの動画を見てもらいたい。
奇妙な動きをしながら歩き回る姿が特徴的だ。
かかとを、それぞれの太ももの裏側に当てるくらい、足を後ろに跳ね上げながら歩き回る。しかも背筋をピンと伸ばした状態で、トリッキーな動きをする。見ているだけで笑ってしまう、動きだ。
 
私は、テレビで演じている芸人の、その奇妙な動きを、その場で真似てみた。
すると妻が立ち上がり、同じ動きをし始めたのだ。
俺のほうがもっとうまい! と言わんばかりに、私は続けた。
対抗するかのように、妻がさらに続けた。
 
そのとき……
「ドス!」という何やら鈍い音が聞こえた。
私は瞬間的に、
「ん? この音、過去に体育館で聞いたことがあるぞ」と思った。
と、同時に目の前で妻が倒れこんだ。
妻は足首のあたりを押さえながら、「しびれるような感覚がある」と言う。
妻の言葉とその音から、アキレス腱を切った可能性があると、私は判断した。
 
とっさに、救急車を呼ぼうとした。
しかし、そのとき迷いが生じた。
なぜ? アキレス腱を切ったのだから、すぐに救急車を呼んで、病院に運んであげるのが普通だろう。しかし、迷った。
なぜなら……
「ズクダンズンブングンゲーム」という、ちょっと言うのが恥ずかしいフレーズを、救急隊員に言わなければならないと想像したからだ。
 
しかし、その日の夜は雪がちらついていた。
私が車で運転して連れていくもの不安だ。
雪道を急いで運転して、事故を起こすわけにもいかない。
結局119番通報した。
 
救急隊員「どうされました?」
私「妻が、アキレス腱を切った可能性があります」
救急隊員「今、すぐ向かいます」
 
10分ほどで救急車が到着した。
救急隊員「かかとがしびれますか? 何をされてこうなりましたか?」
私「うわ、やっぱり聞いてきた」
妻「踏み台昇降のトレーニングをしていました」
私「え? え? え?」と耳を疑った。
私「ズクダンズンブングンゲームだろうよ!」と心で叫んでいた。
 
妻は人一倍、自分の失敗や体裁を気にする。
失敗したこと、恥ずかしいことは口にしたがらない。
当然、お笑い芸人のモノマネでアキレス腱を切ったとは言えなかった。
 
そして、救急車で運ばれて行った。
手術前、医者にさえ、「ちょっとした運動で」と言い、本当の理由は言わなかった。
手術を終え、2週間の入院となった。
病院で数日経過すると、相部屋の患者たちとも仲良くなる。
「どうして入院することになったのか?」聞かれる。
しかし、決してアキレス腱を切った本当の理由を言うことはなかった。
妻は、人一倍、失敗や体裁を気にする。
私にも、このアキレス腱を切った本当の理由を、他人に言うことは、口止めされていた。
妻にとって消したい、過去の恥ずかしい出来事であった。
しかし、過去は変えることができない。
日本全国広しといえども、このモノマネをしてアキレス腱を切った女性はいないと思う。
数年たち、妻が久しぶりに仕事を始めることとなった。
新しい職場では、仕事仲間とコミュニケーションをとることとなる。
妻は人と仲良くなるには時間がかかるタイプだ。
 
飲み会で、たまたま運動の話になった、と言う。
妻「私、はんにゃのズクダンズンブングンゲームの真似してアキレス腱切ったことがある」と話した。
すると、大爆笑になった、と言う。
この話題を自ら話すと、職場では親近感がわき、一気に距離を縮ませることができた、というのだ。
 
過去に起こった事実は変えられない。
しかし、過去の出来事は、最強のコミュニケーションツールに
変えることができたのだ。
 
こう考えれば、失敗を恐れず、いろいろなことにチャレンジする勇気が湧いてくるのではないか?数年後、あなたの過去の恥ずかしい出来事や失敗は、人を楽しませ、コミュニケーションに役立つ可能性を秘めているからだ。
私もまた、今こうして、ライティング・ゼミのネタとして使えることになった。妻に感謝している。
 
 
 
 
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2020-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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