メディアグランプリ

こしゃくなニュースレター


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 追立 直彦(ライティング・ゼミ平日コース)
 
帰宅すると、一通の封書が書斎の机に置かれていた。
もう、見慣れた封筒である。あるショップからのもので、ふた月かそれ以上の間隔で手もとに届いている。結構な不定期感がある。忘れた頃にやってくる、みたいな。
 
このショップとの取引はほぼない。一年くらい前に、いつも利用しているショップがとある理由で使えず、仕方なく、隣町のそのショップを利用したのだ。商品はある程度揃っていたし、質も悪くはなかった。しかし、その時の店員さんの対応がいまひとつ雑で、(もうよっぽどの事がなければ利用しないだろう)と、そんな思いを抱きながら、その店をあとにした記憶がある。
 
ところが、である。
その時に会員カードなるものを作ってしまったのがいけなかった。雑な対応の店員さんではあったが、どういうわけか会員カードを作らせる話術やタイミングは、殊のほか上手であった。弱気なぼくは、言われるがまま、帳簿に名前と住所を書き込み、会員カードを作らされてしまったのである。以降、この封書がわが家に届くようになった。
 
中身は、あけなくても察しがつく。売り出しチラシや割引チケットの類である。
そして、もう一枚。B4の白いコピー用紙が六つ折りにされて封入されている。広げると、紙面に手書きの文字がびっしりと敷き詰められている。ニュースレターである。正直、書き手の店員さん(ライターさんじゃないよね?)には申し訳ないが、「くだらない」内容なのである。別にお店のサービスを奨めるでもなく、購買意欲が掻き立てられるものでもない。貴重な時間を費やしてまで読むようなテーマも見当たらない。だから、封を切らずにそのままごみ箱にうっちゃっても、なんら問題はないハズ、なのである。
 
しかし、ぼくはいつもここで苦悶するのだ。
チラシも割引チケットも、どうでもいい。どうせ使わない。なぜか、ニュースレターが気になる。正直、内容はいつもと変りない、「くだらない」情報のオンパレードだろう。読んだあとで、「はン」と軽く鼻で笑っておしまいだ。だから、封はあけない。あけたら、相手の思惑になかば乗っかったことになる。負けを認めるようでイヤだ。
……しかしながら、そんな気持ちとは裏腹に、ぼくの指は封を切ろうとしている。
 
(まあいい。今回もどれほどのくだらなさか、確認してやろう)
本当に、いちいちしゃくにさわるニュースレターである。どのくらいしゃくにさわるのか。それをご披露する前に、少々ぼくのことを書いておこう。
 
実は、ぼくもお客様あてにニュースレターを発行している。
ひと月に一回、必ず毎月25日にお客様のお手元に届くように間に合わせていて、それがかれこれ4年近く続いている。ニュースレターのテーマは、「生涯現役を目指すビジネスパーソンを応援します」。これからの日本社会において、老後の生活保障を老齢年金や厚生年金のみに頼ってはいられないのが実情だ。かといって、若い頃から老後のために2、3千万円ちかくの資産をコツコツ貯めるのも骨が折れる。
 
となれば、60歳を過ぎた後も、多少なりとも働かねばならない。どうせ働くのならば、自分の時間を切り売りしてお金に換える働き方よりは、他者になんらかのかたちで頼りにされるなかで、報酬を得る働き方のほうがずっと楽しいし、長続きする。では、そういう働き方って、どんなやり方があるだろう。そんなヒントを、ファイナンシャルプランナーとして、また起業家を応援する立場として、提供していきたいのである。
 
正直、定期的に紙面を作成するのは、大変だ。
合間を見つけながらコツコツ記事を作成しているが、執筆にかかる時間をまとめると、多分、まる一日半くらいの時間は費やしている。PCで体裁を整えた原稿を印刷に掛ける。印刷費用はたいした金額ではないが、完成物を数百箇所に郵送する手間や費用は、結構なものである。そこまでの時間とコストを掛けてでも、ニュースレターを客先にお届けすることには価値がある。そんな想いで、発行を続けてきた。
 
さて、そこで冒頭のニュースレターである。
大変申し訳ないが、まるで、ぼくがニュースレターに抱く崇高な志や努力(あくまで文脈の都合上、こう表現しました)を嘲笑うかのような、低いクオリティなのである。いくつか、列記してみよう。
 
1. テーマ性をまったく感じられない。
毎号、いきあたりばったりである。多分、書き手がその時点で興味を持ったことを優先的に取り上げている。テーマ性がないので、ほんとうに伝えたいことが不明。
2. 語り口調がタメ口。そして上目線。
どういうわけか、(悪い意味で)フレンドリー。先日届いた紙面の序文は「ま、とりあえず新年あけましておめでとう」からはじまっていた。
3. 手書きのヘタクソな文字がびっしり。イメージ画像など皆無。
手書きでB4紙面のウラオモテをびっしり埋めるのは、さぞかし大変だろう。しかしながら、読み手としては結構キュークツである。また、手書きでやわらかさを表現したいならば、もう少し丁寧に書いたほうがよいと思う。誤字脱字も多いし。
 
ざっと挙げると、こんなところである。
ぼくの、このショップのニュースレターに対する憤りというかなんというか、そんなモヤモヤ感をご理解頂けただろうか。え?じゃあ、やっぱり読まなければいいのでは?
……そう、そうなのである。封をあけずに捨ててしまえばよいのである。
 
毎回、開封して読んでしまうのはなぜか。
それを考えているうちに、以前、ニュースレターを準備する際に受講した、セミナーでのとある事例を思い出した。その事例は、ウェブ制作の会社が発行するニュースレターのものだったが、そのレターも、すべて手書きのものだったのである。
 
ウェブ制作という、PCスキルが欠かせない業務をこなす会社のレターがすべて手書き。というのは、つまりはギャップを狙ったものだろう、との説明だった。PCで創られる世界観というのは、どうしてもカチッとしたものを想像しがちだが、弊社ではそこにやわらかみを演出することも出来ます、という意図を演出したいがための、仕掛けだったのだそうだ。
 
さらに、このレターの文章には、ところどころで誤字脱字が散見された。
これも意図的なものだったようで、誤字脱字を放置しておくことで、客先にお邪魔した際の、「話題のタネ」になるのだという。お客様は、「しようがないなあ」という目線で、毎回文面に目を通し、誤字脱字を見つけると、嬉々としてそれを指摘するわけだ。そこで、やわらかな客先とのコミュニケーションが発生するのであれば、誤字脱字の効力というものも、馬鹿には出来ないだろう。
 
そうだ、これだ。
ぼくは、完全にこの術中にハマっている。毎回かすかな憤りを覚えながらも、「しようがないなあ」と感じながら、欠点さがしを楽しみにしているのである。そうこうしているうちに、このショップを利用する局面も、機会があればまた現れるだろう。
ほんとうに、こしゃくなニュースレターである。
 
 
 
 
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2020-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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