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メディアグランプリ

「ベーグル」からわたしが学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山下佳代(ライティング・ゼミ特講)
 
 
わたしにとって、「ベーグル」という食べ物は、トーマス・エジソンにとっての電球のようなものなのだ。電球ほど世の中の役には立たないかもしれないが……。
きっかけはもう十年以上も前になる。札幌近郊の小さなベーグル屋さんのベーグルをたまたま食べたのが始まりだった。
それまでベーグルというものは、美味しくない食べ物だと思っていた。
だって、若い頃に旅行先のカナダで食べたベーグルが、まるで口に合わなかったから。
札幌近郊のその小さなお店のベーグルは、そんなわたしの偏ったベーグル観を覆すには十分すぎる味と食感であり、一瞬でわたしを魅了した。
「このベーグルを毎日でも食べたい……」
けれどベーグルって、毎日好きなだけ食べるには、なかなかのいいお値段なのだ。
「じゃぁ、じぶんで焼けばいいじゃん!」
ろくにパンも焼いたことがなかったわたしの短絡的な思いつきが、まさか7年半にもわたるベーグルレシピ開発のスタートになろうとは、そのときは知る由もなかった。
当時、パンの焼き方を知らなかっただけでなく、まともなオーブンすらも持っていなかった。
夫がひとり暮らしで使っていた、オーブントースター程度の機能がついた電子レンジ。
それでどうにか工夫しながら、レシピ本を見て焼いてみた。
ビギナーズラックとでもいうのか、そこそこ食べられるものが焼けた。でも、あのベーグルの味には程遠かった。
それから、小麦粉にはいろんな品種があり、品種によって味も食感も変わることを知った。
酵母も、売られているだけでもあらゆる種類があり、またじぶんで果物などから起こすこともできると知った。
ベーグルは、小麦粉と酵母、そして砂糖と塩、水だけで作る。材料がシンプルな分、ほんのちょっとの配合の違いでも、味や食感の違いが如実に出るのだ。
その組み合わせは無限にあると言ってもいい。
あの小さなお店のベーグルの味に、ちょっとでも近づくには、どんな組み合わせにすればいいのか……。
寝ても覚めてもベーグルの配合のことを考える日々が続いた。文字通り、ベーグルの配合を試している夢を見るほどだった。
それと同時に、いろんなお店のいろんなベーグルを食べてみた。
札幌だけでなく、東京に行ったり、全国各地の話題の店から取り寄せたり。
一口にベーグルと言っても、お店によって味も違えば食感も違う。
いろいろ食べているうちに舌も肥え、欲も出てきた。
「外皮はこっちのお店のみたいにもっとバリっとしてて、でも中身はあのベーグルみたいにムギュッとしてて引きが強いのがいいなぁ。味はあのお店とこのお店のを足して2で割った感じ」
そんなふうにわたしの中で、イメージがどんどん明確になっていった。
「イメージできることは現実化できる」と言われるが、たしかにわたしはこの味を必ず再現できると信じていた。
きっとエジソンも、頭の中に明確なイメージがあったに違いにない。
それをどう現実にするか、そのために何百回も何千回も失敗を繰り返したはずだ。
わたしも、焼いては試食し、配合を変えてまた焼いた。
ベーグルを食べ過ぎて、途中で食べたくなくなることもあったし、息子を妊娠したときには、つわりで一切ベーグルを食べられなくなった。発酵のにおいだけで気分が悪くなるほどだった。
「ベーグルに夢中になりすぎるから、お腹の赤ちゃんがやきもち焼いてるんだよー」なんて笑われたりもした。
もう二度と食べられなかったらどうしよう、と思ったものだが、出産後は何事もなかったかのように、また食べられるようになった。
やがて、わたしにとってはまだ道半ばの味だったが、それでもじゅうぶん美味しかったようで、食べた人たちから
「お金払うから焼いてくれない?」と言われるようになった。
それで、当時息子が通っていた幼稚園で販売したり、頼まれてイベントに出店するようになった。
焼く機会が増えたことで、レシピの研究も進んだ。
そして、わたしが頭の中にイメージしていた味と食感のベーグルが焼きあがる日がついにやってきたのだ。
小さなお店のあのベーグルを食べてから、7年半の月日が経っていた。
パンも焼いたことがなかったわたしが、食べる人が異口同音に
「今まで食べたベーグルの中で一番おいしい」と言ってくれるベーグルが焼けるようになったのだ。
「イメージできることは現実化できる」
これは本当だった。
頭の中のイメージが、目でも、鼻でも、歯でも、舌でも、耳でも、手でも、イメージできたら、
そしてそこに「わくわく」があったら、必ず現実に作り出すことができる。
ベーグルづくりを通して、わたしはそれを学ばせてもらった。
「このベーグルを毎日でも食べたい……」という夢が叶ったのだった。
だけど、いつしかその夢は当たり前の日常になり、
そして、人間という生き物は飽きやすいのだ。
というわけで、そろそろ次のレシピを開発する時期が来ているらしい。
また、新たな味を求める旅が始まる……かも?
 
 
 
 
***
 
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2020-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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