得たいの知れない不安を感じたら名前をつけろ
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記事:山本和輝 (ライティング・ゼミ平日コース)
私はHSPらしい。HSPとはハイセンシティブパーソンの略語だ。
発達障害というほど深刻ではないが、人間関係や自分の身の周りで起きる事に過剰に敏感に反応してしまい、必要以上に思い悩んだり、鬱のような症状を引き起こしやすい性質をもった人のことを言うらしい。
ある時、Facebookの友人から流れてきた投稿でHSP診断のサイトというものがあった。それをやってみると私のスコアは、あきらかにHSPの症状があるようなのだ。
私は、これまで自分の心や体が思うようにコントロールできず、気分が落ち込んだり、怒りや不快感を過剰に感じたりすることに悩んでいた。
例えば、大声で怒鳴る人、怒る人が極端に苦手だった。自分の考えに自信があっても、それを真っ向から力強く否定されると、途端に思考が鈍くなってうまく反応することができない。
いつも不機嫌な顔をしている人も苦手だ。ついつい自分が何かやらかしたのかと思い込んでしまう。何か上手くいかないことがあっても、自省する考えばかりが頭を支配して、自分のやってきたことを肯定的に考える事ができなくなる。
HSPの傾向としては、完璧主義で自分のできなかったところだけに目が行って、自己肯定感が非常に低いことがあるらしい。ますます、自分に当てはまっている。
私は子どもができるまでは、自分は世の中で風が吹けば簡単に吹き飛んでしまうようなちっぽけな存在で、世の中に自分より優れた人はいくらでも居て、いくらでも代わりはいるという考えに支配されていた。
だから、45歳ぐらいになると、もう十分に人生をそれなりに楽しむこともできたし、いつ死んでもいいとさえ思っていた。
でも、この診断を受けて自分自身がHSPだという事がはじめて認識でき、単なる性質の一つでしかないという事がわかったとき、とても安心できた。仕事のストレスや人間関係がうまくつくれないわけでもなく、一つの症状としてそのような心の状態になることが客観的に説明されていたからだ。
このような、原因のわからないことがあると、人間はやたらと不安になる。
子どもの頃、暗闇が怖かったように、得体のしれないものに自分が侵されているかも知れないと思うだけで、心が不安定になってしまう。
テレビ番組でも、原因不明の病気で悩み、何軒も医者を回っても治療方法がみつからず苦労したという話が取り上げられることがある。そしてその正体がわかって治療方法にたどり着くと安心して治療に専念できたというのだ。
つまり「名前」をつけることが、その不安を客観視するのに大いに役立つと言うことだ。
それまで、私は気分が落ち込んでどうしても会社に行きたくない、面倒な仕事に着手できなくてその状態が嫌でさらに気分が沈むということがあった。私はHSPの診断をするまえは、この症状のことを「いやいやホルモンが分泌されている」という名前をつけて認識していた。そうすることで、少し自分の気持ちが落ち着いたからだ。
他にも同じようなことがある。毎年梅雨や台風のシーズンになると決まって体が重くなって、軽いうつ状態になっていた。これは低気圧による鬱の症状らしい。
また、冬の寒い時期になった時も同じような症状が出ることもある。これは季節性鬱というもので、気温の低い地域に住んでいる人たちには、その症状を訴える人の割合が多いという調査結果もあるそうだ。
なんだ、それなら原因不明の不安には、ことごとく病名をつけてしまえばいいじゃないか!
そう私は考えることにした。
たとえば、私の苦手な不機嫌な態度をいつも表に出している人。あれは不機嫌病にかかった可哀そうな人だ。人の話を聞かずに、自分の自慢ばかりをする人は自慢病の患者さん。
企業では当事者意識が無く、仕事の責任範囲をあいまいにして誰も問題を解決しようとしない大企業病なんてものもある。
自分たちの世代で理解できない考えをする新入社員に、新人類などゆとり世代など名前をつけるのも同じようなことだ。名前をつけるだけで、理解不能なものまでわかったような気になることがある。
得体のしれない不安におびえたり、悩んだりすることがあれば、とりあえずその状態に名前をつけてみることで、客観視できるようになるということは、古くから行われてきたことだったと気づいた。
もし、あなたがそのような不安をかかえているのであれば、ぜひこれを試してみるのもよいと思う。
名前をつけるだけで、悩みが減るのであれば実に簡単ではないだろうか。
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