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メディアグランプリ

アポロで小顔効果を狙う


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:加藤なお美(ライティングゼミ・平日コース)
 
「何故だっ何がいけないのか、全然わからない……」
 
2020年が、めでたく明けた。
年末からやりたくて計画していた事を実行に移す日がついにやって来た。2019年末に2020年への抱負を決めておいた。
 
「顔のたるみ防止の為にも、スマホばっかり眺めていないで、上を向いて空を見る」
 
元日から実行に移すのだ。既にブツは買ってある。余りにも久しぶりの買い物だったので、相場がまったくわからなかった。駅前の文房具屋で
「935円です」
と言われた。安物ではあるが、こういう物は、高すぎてはいけない気がする。年末から凧揚げがしたくて、ウズウズしていた。
 
「元日からいったい何処へ行くんだ」
と、家族に言われる前に、こっそり出かけよう。そしてさっさと帰ってこよう。
家族総出の正月の挨拶の前に戻れば、問題無しだ。
午前6時30分。快晴。
あまり寒くなかったが、不審者に見えない程度の黒いニット帽、大きめマスク、メガネを装着完了。いい大人がひとりで遊んでいると思われるのは、ちょっと恥ずかしいので、軽く変装する。誰か他に凧揚げしている人はいるだろうか。
 
向かう先は、歩いて10分もかからない鶴見川堤防。
「ヨシ。誰も居ない」
手に持っていた凧に凧骨の棒をセットして、準備完了。白い三角形の凧に、カラスよけみたいな大きな目玉が2つ付いている。
あぽろきて……? あ、アポロカイトか。英字で印刷されているなんて、自分が子供だったら、さっぱりわからなかった所だ。
「アレ?」
いつの間にか堤防の上が全部アスファルトになっている。すごく久しぶりに来たからか、昔より広くなっている。コレは走りやすくて助かる。凧が引っかからないように、鉄塔と鉄塔の間で揚げねばならない。
 
「さあ、カラスを威嚇しに行こう、アポロよ!」
 
凧糸を繰り出していく。サクサク揚げないと、初詣帰りの人に出くわしてしまう。
「行くぞ」
走り始めた。
 
風はそよそよの弱といった感じ。アポロは、揚がりそうで揚がらない。凧揚げには自信があった。昔はもっと簡単に揚がった気がする。思い違いだろうか。
ジタバタと、くるくるを繰り返し、既に20分が経過していた。
どうして空へ揚がろうとしないんだ、アポロ。
 
「何故だ。何がいけないのか、全然わからない……」
 
ハアハアハアッカハッ
 
喉がひりつく。しまった、飲み物は持って来なかった。
小学生の時は飲み物なんて持ち歩いた事はなかった。どうして大人の私は、こんなに喉が渇くのだろう。きっと何処にでもある自販機の呪いのせいだ。アレを見ると喉が渇くような気がしてきちゃうんだきっと……?
頭が逃避を始めた時、凧をよく見ると、糸を結ぶ穴が2つある。強い風用の結び目になっていた。急いで弱い風の所へ結び直した。
「これで駄目なら、大人しく帰ろう」
 
良い具合に少し風が出てきた。日も高く暖かくなってきた。めまいがする程、お腹が減ってきていたが、また走り始めた。
ハッハッハッ
アポロはフワリと宙に浮かび、更に上へと上昇していく。上空には良い風が吹いているみたいだ。途中で安定させる為に糸をクイクイと引いて、様子を見ながら糸を緩めた。更に高みへと揚がっていく。
 
「やった〜!ハハハハ!」
 
空へ揚がったアポロが2センチくらいに見えるまで、凧糸全てを繰り出した。空は真っ青で空気もいつもより、うんと美味しかった。
正月早々に空を見上げるのは、良い気分だ。気分も上がる。こんなに長い時間、空を見上げているのも久しぶりだなあと思った。首も伸びるし、リンパの流れに効きそうだ。
何よりずっと上を向いているので、小顔効果が高い。良い正月になりそうだ。
そろそろ帰ろうかと思った時、アポロはいきなり宙返りをした。すごい勢いで川のど真ん中めがけて回転していく。
「マズい!」
慌てて川から離れる為に走った。たわんだ糸を急いで手繰りながら走った。
アポロは鶴見川へ見事にダイブした。
パシャー
悲しい水音が川の音に吸い込まれる。
あー
川からアポロを引き上げようと、糸を引っ張った。
グイッグイッ
投網を手繰り寄せる漁師の様に、糸が切れないように慎重に手繰った。
しかし何故かある所まできて、頑として動かなくなった。川の中で誰かが掴んでいるのかと思う程に動かない。川の中のゴミに引っかかってしまったらしい。何とか手元まで引き寄せる事ができたのは30分後だった。
 
泥水に漬け込んだような、ワイルドになったアポロを持って家に帰った。
危うく正月早々に川を汚してしまうところだった。
 
揚げるための助走20分、滞空15分、川からの引き上げ30分。顔のむくみが取れたし、首元もスッキリ。気分もスッキリしました。個人の感想です。
年1回と言わず、また挑戦したいなあと思う中年女子なのでした。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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