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日常会話が苦手な人こそ、営業マンに向いているかもしれない


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記事:谷口季代子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
先週、ある営業マンに来社してもらった。私が勤務する会社が契約している情報サービス会社の営業マンだ。
契約更新の案内が来たが、契約内容がよくわからない。そして、契約した社員もなぜかその会社との接触を避けているようだ。
何かある、と思って来社をお願いした。
 
面談が始まって、15分くらいで違和感が沸き起こった。30分経ったくらいで苛立ちに変わった。40分目でとうとう、私はその営業マンの話を遮った。
喋り過ぎなのだ。
質問があって来社してもらったのに、その営業マンは40分間喋り倒した。確かに契約内容についてはよく分かった。それをどのように活用できるのかヒントが欲しかったのに、質問の機会さえ与えなかった。
知りたいことを知れずに、その周辺のことばかり聞かされるのは、フラストレーションがたまるものだ。我慢しきれず、話を遮ってしまった。
疲れる面談だった。
この会社と契約した社員が、この営業マンから逃げ回っている理由がよくわかった。
 
その後、社内で契約を継続するかどうか検討を行った。
例の営業マンと面識のある社員は私を含めて3人だ。私が印象も含めて面談内容を報告すると、残りの二人が同時に「ありゃ、疲れるよねー」と同じ反応。同時すぎて、その場にいた全員が笑ってしまった。
そして残念ながら、契約更新しないことに決まった。
 
一般的に、営業マンは営業トークが上手くなければいけないと思われているかもしれない。
が、実際は違うと思う。
例えば服を店員に奨められるとき、どちらの店から買うだろうか。
① 今年のトレンドはこうだと説明。お薦めのコーディネートを紹介された。
② どんなシチュエーションで着る服を選ぼうとしているのか質問があり、それに合う服と着こなしを奨められた。
奨められた服を気に入るかどうかが一番の問題だが、私は②の方が納得して購入できると思う。それを着ている場面を想像して、「いいな」と思って買うからだ。
例の営業マンは、①のスタイルだった。自社のサービスや、こう使うべきと説明はあったが、私たちがどうやってそれを使うのか、その類の質問はなかった。
その会社のサービスを切ることを決めた上司がこう言った。
「ライバル企業は、営業マンさえ来ていないネットだけの付き合いですけど、共感できない営業マンが来るより、よっぽどマシでしょう」
 
実は私も新卒以来、営業マンをしている。だからこの上司の話は身に覚えがある。
ひたすら喋るが、仕事を獲得できない時期があった。
私は元来、口下手だ。日常会話も苦手であまり続かない。
説明する商材があれば喋れるだろうと営業マンになったが、なりたての頃は、ただ製品やサービスについて喋るだけの説明員だった。
同僚や先輩の営業マンは、日常会話を上手に長く喋って、お客様も楽しんでいる。でも、私にはそれができない。ぎこちない会話で、こともあろうに沈黙の時間が出来てしまう。気まずい空気を残して面談を終えることが多く、苦しかった。
お客様から会社に、「担当営業を代えてくれ」と言われたことさえあった。
 
あるとき、新規の問い合わせ対応を任され、当時の上司に「なんでウチに問い合わせを入れたのか、きちっと聞いてこい」と言われた。
これがヒントになった。
そのお客様に質問をすると、なぜウチなのか、何を期待しているのか説明してくれた。そこまで説明をもらうと、自社のサービスの説明をしやすかった。そしてお客様も納得の表情で、見積り依頼をくれた。
これだ、質問だ。そんなに喋らなくてもいいのだ、同僚や先輩みたいに。
帰りの車の中で、ホッとしつつ希望を見出していた。
やるべきことは質問だ。
質問をする、答えをもらい、サービスや製品の説明をする。お客様が納得の表情なのかそうでないのか見る。そうでないなら、何かお客様には違和感があるはずだ。その違和感を知るべくまた質問をする。
その繰り返しで、お客様とウチの接点が見えてくる、そんな気がした。
以来、これまで付き合いのない、新しいお客様対応が得意になった。なぜなら、単刀直入に「本題」に入れるから。長い付き合いのお客様とするような日常会話は必要ない。
 
日常会話や営業トークが上手にできなくたって、営業マンはやっていける。
私が証拠だ。幸い、かれこれ20年近く営業マンをやれている。転職だって出来たし、転職先でも何とか営業マンを続けてお給料をもらえている。
それは「質問」という引き出しを手に入れたから。
相変わらず日常会話の苦手感はなくならないが、会話に困ると質問をしている。そうすると、有り難いことに相手が喋ってくれて、間が持つ。そして、相手の情報も入ってくる。
 
日常会話が苦手な人こそ、実は営業職に向いているのかもしれない。
苦手意識があるから、余計にお客様の表情や返答に注意が行く。お客様が納得してくれているか、興味をもってくれているか。
営業としての派手さはないが、日常会話が苦手な人こそ、淡々と仕事をこなせるのではないかと思う。
喋り過ぎな営業マンより、よっぽどマシかもしれない。
 
 
 
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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