メディアグランプリ

負けず嫌いはポジティブなこと?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:yuko(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「僕は、負けず嫌いな人が好きだよ」
 
単純だった。
この一言で、私の中のコンプレックスが消えたのだから。
 
私は昔から、「負けず嫌い」だった。そう自覚があった。
そんな自分が嫌いでもあった。
「負けず嫌い」って、何となく可愛げがないし、音の響きも悪い。捻くれた人という印象があったからだ。
しかし、大学時代のゼミの教授は、そんな私を受け入れてくれた。
もちろん、恋愛感情の意味ではない。
教授は、「負けず嫌いな人が好きだ」と言う。
世間知らずの当時の私には、目から鱗状態であった。
 
あの日、定期的に行われる、ゼミ旅行の車中でのことだ。
他愛ない会話から、「私、負けず嫌いな所が自分でも嫌なんですよね~」と愚痴をこぼした。
皆から気付かれる前に、自分から言ってしまおう……くらいの軽い気持ちだったと思う。
すると教授は、「僕は、負けず嫌いな人が好きだよ」と真逆のことを口にした。
「負けず嫌いな人は、成長できる人。もっと上に行きたいって思えてるってことでしょ?」
「だから、僕のゼミには、負けず嫌いな人ばかり集まっているよ」
 
大げさかもしれないが、目の前のモヤが開けた気がした。
そんな考えを持ったことがなかった。確かにそうだ。負けず嫌いって、実は自己肯定感が強い人だ。
自意識過剰とも取れるが、「自分はもっとやれるはず!」って思っているということだ。
私、自分をもっと高めたいんだ! モヤモヤしていたものが、すっと腑に落ちた。
 
この教授のゼミは、とても人気があった。
入るには、面接と簡単なレポートの提出が必要だった。授業の内容のほとんどは、ディベート(討論)だという。
本来の私なら、ディベートなんて避けて通りたい道だ。だが、このゼミには何かしらの魅力を感じていたし、何故かすんなりと受け入れられた。
その面接の際、「私は、自分の意見を言うのに自信がない。だけど、ディベートを通じて克服したい」といったような内容を伝えたと思う。
それで採用。
そういう基準だから、私以外のゼミ生も、負けず嫌いや向上心を持つ者が多かったことにうなずける。
 
余談だが、当時、レンタルビデオのアルバイトの面接を受けたことがある。
面接者から、大きな声で「いらっしゃいませ~」と言えるかを尋ねられた。
素直すぎた私は、取り繕っても仕方ないと、「今はできません。でも採用されたら頑張ります。」と答えた。
結果は不採用。
そこでは即戦力を求めていたのだろう。すぐ辞めるかもしれないアルバイトの成長を、悠長に見守ろうなんてことはないのだ。
馬鹿正直に「できません」なんて言わずに、入ってからしれっと頑張れば良かったなと、後々後悔したものだ。
 
教授はきっと、私の成長までを見越して採用してくれた。
現に、授業のディベートでは、しっかり下準備をしていたおかげで、臆することなく発言できるようになっていた。
おかげで私は、「負けず嫌い」であることに自信を持ち、同時に強みにできたのである。
コンプレックスを解消することに成功したのだ。
 
今までの私なら、所謂「できる」人達を妬んで、悔しさを覚えて、そういう自分をいつまでも好きになれなかったと思う。
一言でその考えを変えてしまうなんて……。
教授への信頼感や、若さゆえの柔軟性も手伝っていただろう。
 
人を見る目も変わった。
後の就職先で、仲の良くしていた同期の女の子がいた。
彼女は、何かと私に対抗心を持っていた(と思う)。仕事においても、ファッションなどのプライベートにおいても。
女性あるあるかもしれないが、表面上は周りも認める仲の良い二人。しかし、彼女の心中では私とのマウンティングが行われていたのだと思う。
最初こそは、その対抗心に嫌気もさしていたし、距離を置いた時もあった。
 
そして思った。
彼女って「負けず嫌い」だな~と。
すると、おのずと私が彼女にとって、「負けたくない相手」という位置づけになる。
それって、案外悪いものでもないかもしれない。憧れられてるって変換もできるし!
気付くまでには時間がかかったのは否めないが、彼女の言動が「可愛い」とさえ思えてくる余裕ができた。
 
私は今も、負けず嫌いだ。
期待されれば、それに何とかして応えたいと思うし、羨ましいという人がいれば、自分もそうなるぞ! と気合が入る。
もちろん、時には卑屈になって落ち込む場合もある。そんな時は、自分が努力していないという時。単なる妬み、嫉み。
「負けず嫌い」と断言するなら、成長していかなくてはならない。
 
あの日、教授に打ち明けて本当に良かった。
プラスに捉えることができるようになった。
自己肯定感も強まった。
コンプレックスが一つ減った。
他愛ない会話から生まれたものだが、十数年経った私の中では、今も鮮明に刻まれている言葉。
 
「僕は、負けず嫌いな人が好きだよ」
 
今、また聞いてみたいことがある。
では教授……
「嫉妬深い人って、どうですか?」
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/event/103274
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事