メディアグランプリ

「2回忌の今日、亡き課長に私が誓ったこと」


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記事:あかり(ライティング・ゼミ特講)
 
 
今日。
また、この日が来た。
この日がくると、
胸が苦しくなるのが当たり前……のはずだった。
 
もう、亡くなって3年たったと勘違いするくらい、
私の気持ちが昨年と違う。
まだ、2年だったんだ。亡くなって。
 
「Aさんが、危篤です」
 
2年前の今日、出社して、いつものようにパソコンを開き、
コーヒーを飲みながらニュースをみているときに、
奇をてらったような上長の言葉に、
一瞬耳を疑った。
 
「……え?」
 
昨年、大病から奇跡的な回復力で復帰を果たして、
そのあと別部署に異動したものの、
大病で倒れる直前までの5年間、
同じ部署で上司と部下として行動をともにしていた元上司。
Aさん。
 
昨夜、警備員が
意識不明で倒れて冷たくなっているAさんを発見。
救急車で運ばれたという突然の知らせに
天と地が逆転したような大きな衝撃が
朝の寝ぼけた頭に強烈な音ともに、
降ってきた。
 
仕事が手につかない。
意識せずとも涙が自然とこぼれる。
「なぜ?」の嵐が私の脳内を占領し、
後悔という文字がずっとへばりついて離れなかった。
 
絶対また、奇跡をおこしてくれる。
そう、祈るしかなかった。
 
その日の昼前だっただろうか。
くも膜下出血で、Aさんは亡き人になった。
あっという間だった。
身近な人の死を経験したのはこれが、初めてだった。
 
「みんながみんな、敵ではないよ」
 
私は職場で、長年差別を受けつづけてきた。
氷河期。
派遣から正社員になるのがその当時は珍しいことで、
前例のないことをやってのけてしまった私は、
かなりの差別を受けつづけていた。
風当たりが強く、辞めたくなったことも多々ある。
精神も病んだ。
周りはみんな敵だと思うのは私にとっては自然の流れだった。
安定は手に入れたけれど、
こんなに苦しいなら、
消えたほうがマシだと思ったこともある。
 
異動した部署でAさんという上司に出会った。
Aさんはこれまでの上司とはなんだか違っており、
相手を変な物差しでみない、穏やかで面倒見のよさそうな上司であった。
この人ならわかってくれるかもしれないと勘が働いたのかもしれない。
 
新規採用になってから、
ずっと周りからの風当たりがきつかったこと、
すべてを上司に話した。
職場の件を話したのはAさんが初めてだった。
誰も信じられなかったからだ。
それを黙って聞いていた上司が発した言葉が、
 
「みんながみんな、敵ではないよ」
 
すべてを話した私は大泣きしていた。
子どものように泣いていた。
それを父親のようなあたたかい表情で見守ってくれた。
 
そう。Aさんは敵ではなかった。
その時から私はAさんを父親のように慕い、
真面目に仕事と向き合うようになった。
 
前職の経験を評価していただき、
私が提案したイベントの企画書をAさんが上とかけあい、
前例のない難しいといわれていたイベントが実現した。
上司のAさんと二人三脚でイベントを毎年、ライフワークのように
ともに中心となって運営した。
そのときに正社員としてのイロハも学んだ。
自信がどんどんついていく。
私自身その部署で、周りの人たちに頼られるようになってきた。
認められてきたのだ。
 
そんな充実感を抱いていた3年目のイベント準備中、
耳を疑う知らせが舞い込んできた。
Aさんが自宅にて倒れたとの知らせだった。
 
イベント1週間前の出来事であった。
 
急遽、
ほとんど私中心でイベントを運営することになった。
不可能だと思っていた3回目のイベント。
成功できたのは、Aさんのためにも失敗したくないという
私の気力と執念だったかもしれない。
 
その甲斐あってか、
Aさんは数か月後に奇跡的回復をする。
 
しかし、長年、課長として腕を振るった部署とは違い、
復帰先は別の部署だった。
私は上司が変わり、
抜け殻のように働いていた。
ライフワークとして頑張っていたイベントが
なくなってしまい、目的を見失っていたからだ。
それとリンクするかのように
別部署でのAさんも小さく感じた。
あんなに穏やかで頭も切れて素晴らしい手腕を見せていたAさん。
別部署で苦戦しているようだった。
それを見るのが正直、苦しかった。
いつしか、私自身、話しかけづらい感じになっていた。
見るのがつらかったというのもある。
私のAさん像は、
イベントで一緒に頑張っていたあのAさんであってほしかったからだ。
Aさんに話しかけられても、
どことなくつらい気持ちを抱く自分がいた。
 
私の命の恩人である。
今度は私が力になりたいと思い、Aさんが入院している期間に
心理系の国家資格を取得していた。
 
国家資格を使って
Aさんの力になりたいと思った矢先、
帰らぬ人となった。
 
それから今日、2年の月日がたった。
 
私は、Aさんの力になりたいと取得した
国家資格取得を上に報告し、
別部署に異動。
現在、複雑な思いを抱える人たちの力になりたいと
日々、修行の日々である。
 
相変わらず、周りの風当たりが強い時があるが、
Aさんのために取得した国家資格スキルが、
今、役に立っている。
そして、その資格を軸として、将来への目標も定まりつつある。
 
「みんながみんな、敵ではないよ」
 
そう言えるような支援のプロに、私はなりたい。
 
 
 
 
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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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