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記事:ただくま みほ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「ママ、見とって!」
 
2歳10ヶ月の子どものトイレタイムは付き合いがいのある時間だ。
 
ウンチの出る時は大抵、便座に座って力む子どもと向かい合わせに座り、見守ることを要求される。
「ウーン!」と力む子どもと一緒に、こちらも息を合わせて「ウーン」と力んでみせたり、時には力みすぎが心配になって「ほーー」っと息を抜く姿を見せてみたり。
 
2歳10ヶ月ともなると、なかなかウンチの臭いも立派になってくる。最初から最後までお付き合いすると10分ぐらいは余裕でかかることもあり、その間ずっと私もそのかぐわしき香りを嗅ぎ続けることになる。
 
一人で力むことができるのだから、別にこちらが見ていても見ていなくても排便する能力はあると思うのだが、そこは「見とってほしい!」ものらしい。
 
「できることならこの間に料理の一手間を進めておきたい」などと思い、ちょっと離れようとしたりしようものなら、猛烈な勢いで怒られることになる。
 
それならば、と少しでも早くスムーズに排便が終わりますように、と応援歌を歌う作戦を思いついた。
先輩ママから頂いた「うんこダスマンたいそう」という本に載っていた歌だ。「ダッダッダスマン! ダスマン体操!」と腰を振り排便を促すというダンス付きのノリのいい歌だ。
 
絵本を読んだ時に、すごく気に入って一緒に歌い踊っていた歌だから、きっと調子良くウンチもスンナリ出てくるに違いない。
 
子どもが「うーん」と赤い顔して力んでいる。「今だ!」と思い、「応援歌歌うね!それっ!『ダッダッダスマン〜』」と笑顔で歌い踊りかけた。
 
その瞬間、「チガウーーーーー!」と鬼の形相で猛抗議を受けてしまった。
 
子どもにしたら「バカにするな!」といったところだろうか。確かに、状況をちょっと面白がっている私がいなかったわけではない。子どもにしたら真剣に力んでいる時にそんなノリでおちょくられたら、そりゃ腹が立って当然だ。「こんなふざけた母でゴメン」である。
 
子ども自身のその時々の気持ちがあり、その時々の対応があるので、見守りのメニューも選択肢が増えていくことになる。
 
子どもの排泄中「見る、見ない」でまずは大きく分かれる。
「見る」にしてもどこから見守るかも大事だ。「正面向き合わせ、引き戸横、壁際から」と3パターン。
 
さらにそれぞれ「応援歌あり、なし」さらに歌の種類、ダンスの有無などなど……数えたら組み合わせは全部で24パターン以上になった。まあ、私もおもしろがってメニューを増やしていったのだが。
こうしてその時その時で子どもの気分によって見守り方法をカスタマイズする方式になった。
 
必要とされているのか、必要とされていないのかよくわからないのが、「見ないで、でも戸の側には、いてね。家事は、しないでね。」というパターン。子どもにしてみれば一人でウンチしたい気持ちと、かと言って側から離れられてしまうのは心細いような気持ちなのだろうか。子どもの見えないところの壁際で、大っぴらに他ごともできない私は、物音を立てぬようこっそりとホワイトボードに「おトイレ見守りメニュー」を書いたりして暇つぶししたものだ。
 
あれから一年余りがたった。そういえば最近、「見とって!」がほとんどなくなった。それどころか「戸を閉めて!」と言われる。本当に実質私が必要とされるのはウンチをしたときのお尻拭きくらいだ。
 
気がついてみると子どもの成長にびっくりさせられる。と、同時にふと淋しくなる。こんなに早く成長して、親のすることも移り変わっていってしまうのだ。
 
そんな折、子どもが「戸を閉めて」と言った後、「戸を開けて『バァー』ってして!」とオーダーが入った!嬉しくなった私は大張り切りだ!
 
勢い良く戸を開けて「バァー」とすると子どもは大喜び!私は調子に乗ると、また戸を閉めて今度はソロリソロリと開けてはそおっと覗き込んだり、戸を閉めた状態から戸を「トントン」とノックしたりと、ありとあらゆる技を繰り出してはウケを狙った。
 
と、どうだ。最初は喜んでくれていたのについには、「ママ、もうしないでね」と言われてしまったのだ!
 
「お客様は神様だ」とばかりにサービスしたら、これである。いや、私がやりすぎなだけか……
 
そんな「戸を閉めて」と言われるようになった近頃だが、相変わらずなこともある。トイレに行くとき「ママ、トイレ!」「ママ、脱がせて!」とリクエストが入るのである。
 
一人でトイレまで歩いていくことも、自分で脱ぐこともできるのに、である。聞けば保育園では「自分でしている」らしい。
でも、家では排泄後も自分で履けるのに「履かせて!」と言うこともある。
 
正直言って忙しい時など「もう、一人でできるでしょ!」と思ってしまうこともある。
 
でもまあ、まだ三歳、甘えたい時もあるのだろう。保育園では集団生活の中で、自分の思うようにいかないこともあるだろう中、頑張って毎日通ってくれている。
 
「見とって」がいつの間にかなくなったように、「ママ、トイレ!」「脱がせて!」「履かせて!」もいつの間にかなくなっていってしまうに違いない。
 
できるだけ、関わりたい、と思う。いつか巣立っていってしまうこの人に。この貴重な一瞬一瞬、出来る限り笑顔がいっぱいであるように。
 
おトイレ見守りメニューは期間限定メニュー。「『いる? いらない?』今日もご希望、伺います」
 
 
 
 
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2020-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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