メディアグランプリ

子育ての本を読んだって、うまくいくわけない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:yokon(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ほらー、早く寝ろッ!!!」
だあぁーッ! イライラする!!!
なんで、8時にはお風呂も歯磨きも終わってたはずなのに、もう10時過ぎてんの?
 
4歳児と2歳児。なぜ、こうもくっついては喧嘩をする? なぜ寝ない!
この生産性のない2時間をどうしてくれよう。その後の私の怒りを鎮めるのは、睡眠だ。寝る。忘れる。ぐっすり寝られれば翌朝はみんなハッピーだ。しかし、ここで生後3ヶ月の3番目がまた邪魔をする。おしゃぶりと化した乳をあげ続け、気付いたら朝……。なんて日は次の日まで怒りが持続する。
 
女心と秋の空とはよく言ったものだが、今はもうちょっと激しくて、母心と冬の山。遠目で見れば美しくも見えるであろうが、当事者は猛吹雪の中だったりする。雪山の天気はころころ変わる。陽が差してキラキラする雪の結晶に感動することもあれば、一日中目の前が見えないくらい視界不良の日もあるのだ。
 
子育てって、正解がない。
子育てって、勉強したことない。
 
育児を育自なんて表現するくらい、子育ては自分と向き合うものだってことはこの4年半で実感しているところだ。だけど、荒れ狂うたびに犠牲が生じているのも感じていた。自分を育ててくれるのは子どもだ、そういえば聞こえはいいが、イライラに任せて言い放った言葉は、雪山の氷が解けても消えないのだろう。
 
そんなとき、この本に出会った。1年ほど前だろうか。
『世界に通用する子どもの育て方』(松村亜里2019 WAVE出版)
 
タイトルの間には、大きくこう書かれている。
「AI vs 幸せな子ども」
 
今どきのやつだ。
 
「ニューヨーク発ポジティブ心理学+ウェルビーイングの最新研究で分かった!」
ポジティブ心理学ってなんだろう……。
 
尊敬する大学の先生がFacebookで薦めていた。でも、自分なら絶対に買わないタイトルだった。世界に通用する? 小さいうちからお受験とかするようなお家のお母さんが読むんだろうなって思った。少なくとも、田んぼでカエルを捕まえたり、トンボを追いかけたりしている田舎の子をもつ私が読んでいいものには思えなかった。
 
子育ての本を読んだって、うまくいくわけない。
 
どうせ博士号まで持っている超努力したママさん先生が書いている育児書でしょ、私とは違う次元にいる人の話は素直に聞けない。子育て中、社会から切り離されている自分には、働きながら子育てして本まで出して……っていうスゴイ人が何を言っても、何を書いても、動かされる気がしなかった。
 
子育ての本を読んだって、うまくいくわけない。
 
私はまだ雪山で立ち往生していた。
本の存在を知りつつも、読まずにいた。
 
2019年12月19日、30歳の誕生日の少し後のことだった。天狼院のライティング・ゼミの最初の課題を出し終えた頃、久しぶりの達成感に、心の雪山は珍しく良く晴れていた。その勢いで、Amazonでポチっとしてみた。幸せってこういうことなのかな、と。
前に一歩だけ進んだ。
 
良い意味で、想像してたのと違う。
読んだらすぐにメルカリで売ろうなんて考えていた自分が、浅はかだった。
 
ずっと手元に置いておきたい。
 
山登りの本を読んだからってアルピニストになれるわけではないように、この本を読んだからって育児がすぐにうまくいくわけではなかった。
 
ポジティブ心理学の本を読んでネガティブになった、といったら笑われるだろうか。
今までの自分、ダメじゃん、ダメじゃん、ダメダメじゃん。
 
母が私を育てた道しか知らなかった。道幅も歩いてきた距離も時代も違うのに、それとよく似た道を必死に探して歩いていた。だけど、よく立ち往生してしまっていた。この本は、他にも登山道はあるよって教えてくれた。雪山でスキーして楽しんだって良いし、立ち止まってあったかい珈琲飲んだっていいんだよって。誰かの体験談とか哲学的な話じゃない。科学的に検証された道だった。雪山ガイドを得た気分だ。
 
子育ての本を読んだって、うまくいくわけない。
だけど、読まないと抜け出せないときもある。
 
気付けて良かった。
 
「はーやーくー!!!!!」
また今日も怒ってる。出来の悪い生徒みたいだ、教科書通りにはできない。また、吹雪いてきた。
 
「ほぉーらー、歯磨きしないと絵本読まないよ!」
あ、また言っちゃった……。これダメなやつだ。まだまだできないけど、ちゃんと気が付く。とりあえず、ぎゅっと抱きしめてみる。
「歯磨き終わったらさ、どの本読む? 選んで!」
 
心の天候不良は不可抗力ってことにしよう。
まだまだ荒れるときもあるけれど、ちょっとずつ進んでいる。
 
自分と同じように雪山にいるお母さん、聞こえますか。
世界に通用するとか、もはや関係ないです。
子どもと関わる全て人に贈られた本です。
心の雪山が、荒れ狂ったら思い出してください。
特効薬ではないけれど、晴れた日にまた一歩ずつ登る勇気をくれるはずです。
 
歩いてきた道は、わざわざ戻って歩き直す必要はないみたい。
今いるところを肯定できる。
そしたら、前に進めるらしい。
 
今は、「幸せ」を意識して生きてる。
もしかしたら、それだけで幸せなのかも。
 
 
 
 
『世界に通用する子どもの育て方』(松村亜里2019 WAVE出版)
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2020-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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