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地酒の楽しみ方

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡邊 眞也(スピード・ライティングゼミ)
 
 
「あれ、自分が10年やってきたことってなんだったんだろう?」
 
先日、訪問した澤田酒造さんで話を聞いているうちに、10年間、酒スクールに通って勉強してきた事に大きな課題を突きつけられた。
 
最近では、日本酒イベントで「日本酒ソムリエ」なんて肩書で活動させていただくことも出てきた。
 
決して全てではなないにしても、多くの、飲みきれないほどの種類の日本酒を東京にいても、飲むことが出来る。
 
ほんの数十年前、流通の発達してない時には地方の隠れた銘酒も、手に入れることが出来るようになってしまった。
 
現地に行けば、風土、歴史、住んでいる人たち、という膨大な情報がついてくる。
でも、東京で地酒を飲む時には、ラベルとお酒のそのもの、せいぜいがちょっとネットで検索した不確かな情報しかない。
 
お酒単体で、美味しいだの美味しくない。バランスがいまいち。淡麗辛口なのか、キレがないのか、という判断をしてしまう。
料理を食べるにしても、その土地の料理と合わせて、なんて事はまずない。普段食べている料理に、地酒をあわせて飲む。
 
「うちのお酒、重たいとか、バランスが悪いとか、キレが悪いとか言われるんです。」と笑いながら、澤田酒造の副社長、ひでさんは説明してくれた。
 
澤田酒造さんは、今もなお、地元のお客さんも大事にしている。その地元のお客さんがどんな人達なのか、どのような料理を食べているのか、を含めての手厚い説明だった。
 
澤田酒造さんのある愛知県常滑市は、名古屋より少し温かい、知多半島にある。周囲には、豆味噌、みりん、酢を作っている蔵がある。
 
酢は知多半島の反対側にある半田市のミツカンという大企業がある。そもそも、ミツカンのお酢も、國盛という酒蔵の酒粕からお酢を作っていた。
 
これだけ発酵調味料に囲まれた土地である。京都の料理が無駄を削り落としていく「引き算の料理」とするなら、知多の料理は調味料を重ねていく、「足し算の料理」だという。
 
それも、内海に面しているため、近くで取れる魚が少し生臭い。美味しく食べるためには、調味料で香りをつける、という理由があった。
 
そして濃い味付けは調味料があるから、というだけではなかった。
 
常滑は焼き物の街でもある。赤茶色の急須で知られている。もっと有名なものが身近なものを作っているメーカーがあった。INAXだ。
 
今ではLixilのグループに入り、その名前はなくなってしまったが、トイレや湯船などと作っているINAXの本社が常滑にあった。セラミックも焼き物であり、常滑焼から、その技術は生まれた。
 
今でこそ、フルオートメーションで作られる製品も、かつては窯の炎の前で、大汗をかいて作業をしていた。当然、食事に塩分が必要であり、味付けの濃い料理が求められた。飲む日本酒も淡麗辛口では、濃い料理に合わない。料理とのバランスで、しっかりとした日本酒が求められた。
 
自分にガッカリしたのは、今回初めて、知多の歴史や料理について聞いたことだった。社長の薫さん、副社長のひでさんとは、知り合って長い。蔵にも何度も足を運んだことがあった。
 
現地に行っていながら、自分の知りたい情報だけ説明してもらって満足していた。蔵の日本酒の良さを伝えたい、という心がなかった。今回、直前にはなってしまったが、訪問前にこんなことを聞きたい、と薫さんにメッセージを送っていた。
 
聞きたいことは、蔵の歴史、方向性、それだけでなく知多の発酵文化だった。
 
今まで自分の知りたい、伝えたいだけだった。今回は、日本酒唎酒師の後進にむけて、伝えたいことはなんだろう、と考えた。今までの自分には、自分の「知りたい」だけしかなかった。
 
今回、澤田酒造のお二人は、私の期待していた内容を遥かに超えるレベルで提供してくれた。その量と質にガツンときた。普段、酒蔵見学に行って感動するのは、その技術や発想、そして日本酒そのものの旨さだ。それ以上のものを今回頂いた。
 
同行した友人の一人の実家が、大塚で焼き鳥屋をしている。
「なべさんから聞いて、去年一本仕入れたんですよ。そのお酒が瞬殺でなくなりました! 今日たくさん話を聞いて理由がはっきりとわかりました。このお酒を炙りレバーやハツモトに合わせてみたいです!」と興奮して話していた。
 
味のバランスがいい、というのはこういうことなのだろう。ちゃんとお酒を飲むシーンを意識して、そのシーンの中でのバランスがいいか悪いかなのだ。お酒単体で飲んでいると分からない。
 
全く同じ料理でないにしても、焼鳥のタレのような同じ濃度を持った料理と合わせて、その時にバランスが取れるか、美味しく感じるか。
 
今後、澤田酒造さんのお酒を飲むたびに、知多の歴史や食文化が浮かぶことだろう。日本酒ソムリエとして、そのイメージも含めて、これからの日本酒ファン伝えていけるようにしたい。
 
 
 
 
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2020-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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