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認知症の父と暮らして


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記事:花咲花子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「これは認知症でしょうね」と医師に言われた。
父は75歳。定年退職後の再就職も終了し、今はきまぐれに畑を耕したり、地域活動に協力するなど、自由な暮らしを謳歌していた。しかし、ここ何か月か地元の寄り合いの予定を忘れていることがあったり、家の周りの道具を自分が片付けたにもかかわらず、ここにあったものが無くなった、誰かが勝手に持って行ったと家族にきつく当たるなど、今までとは明らかに様子がおかしい。普段、高血圧の治療で受診している医師に状況を説明し、検査の出来る医療機関に紹介状を書いてもらってMRIや認知症の検査をしてもらった結果の一言であつた。
更に「今のところ認知症の進行を遅らせる薬があるのでそれを処方しますが、この病気を完治する薬は今のところないんです」とのこと。
 
私自身、認知症とは、物忘れがひどくなる病気という程度の知識しかなかった。「治らない病気」という言葉に親の介護を考えないといけないことやその先の亡くなるということも覚悟しないといけないということを改めて考えさせられた。
 
そのような暗い気持ちになったものの父は元気だし、入院して治療するという訳でもなく私は日常の生活に戻った。
それでも父の病気のことが気に掛かり、認知症に関する本を何冊か購入し、病気に関する知識や治療方法がないか調べてみた。
本を読んでみると「治療方法がない病気である」「この先、いろんなことがわからなくなり、家族の名前や自分の名前もわからなくなる」「食事の仕方もわからなくなる」「通常の人と比べて10倍の速さで老化が進む」など不安や暗い気持ちになることしか書かれておらず、なぜ父がこのような病気になってしまったのかとやりきれない気持ちで一杯になった。
治療する薬はないが、進行を遅らせるためには「話をして前頭葉を刺激すると良い」と書かれていたので実行することにしたが、小さい頃は祖父母と一緒に住んでいて、おばあちゃん子だったことや思春期には男親は疎ましい存在でしかなく、その後も父親と楽しく過ごした記憶が少ないことに改めて気付いた。
それでも病気の進行を遅らせるために話をしなければと思い、出かけることが好きなので、新しく出来たお店の話をしてみた。変な緊張感を感じながら話を始めると思春期の頃に感じていた気難しい、何を言っても反対される印象とは異なり、冗談も言うような人になっていた。午後から一緒に出掛ける約束もした。
話題がなくなったので、本に家族の名前を忘れるとあったことを思い出し「私の名前わかる?」と恐る恐る聞いてみると「花咲花子やろ。何変なこと聞いてるん?」と答えてくれて、ほっとした。
気を良くして昼食を食べ、食事後に出掛ける話をすると全く初めて聞いた様子で「そんな店が出来たんか」と昼食前と同様に驚き、2時間前に話したことと同じ話を繰り返すこととなった。
認知症とはこうゆうことが起こるのかということを実感した。本に書かれていたことを思い出し、不安になったが、今出来ることをしっかりやって少しでも進行を送らせるしかないと思った。
 
新しく出来た店の中にあるスーパーマーケットで買い物をしているととてもふくよかな女性が居られた。「よく太っておられる」なと思っていたら父が「あの人よう太っとってやなぁ」と私に言った。小さな声で「そうやなぁ」と返事をしておいたら、レジでその方が私たちの後ろに並ばれ父がその方に向かって「よう太っとってやなぁ」と言い私はどうしたらいいものかと焦ったが、その方は「はぁ」とあまり気に留めずに返事をしてくださったのでほっとしたが、認知症で言っていいことと悪いことの判断力を失い、思ったことを口に出すようになっていると思われる。他人が太っていることに興味があったことにも驚いた。
 
また、ある日テレビを見ていたらテレビに向かって「けしからん。帽子を取れ」と怒っていたのでよく見るとテレビにファッションで帽子を被っておられた方が映っていたのを見て家の中で帽子を被っていると理解して怒っていた。説明をしても理解は得られそうになかったので、チャンネルを変え別の話をして気持ちを落ち着かせたこともあった。礼儀作法にはうるさい父だったことを思い出した。さらに今後病気が進行することを思うとそんなことに拘りを持っていた人だということを知ることが出来てうれしかった。
 
また、今までは見ることもなかった寝室の様子も心配で見るようになった。和室で布団を敷いて寝ているが、布団が畳のへりと真っ直ぐになるように敷いている。斜めになっていたら自分で真っ直ぐに直している様子を見て、私も全く同じで布団もそうだし、会議室の机等も真っ直ぐ揃っていないと直してしまうところがある。
今まで父がそのように几帳面な性格であるということに気づいていなかったが、DNAなのか無意識に躾けされて私も気になるのかはわからないが、親子なんだとしみじみ感じた。
この先、いろんなことがわからなくなり、寝たきりになってしまう可能性が高いが少しでも父と一緒に時間を過ごし、父の人となりを知ることが出来ること、私の変な癖が父からの遺伝であることを発見できることを楽しみに介護の日々を送っている。
 
 
 
 
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2020-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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