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メディアグランプリ

焼き鳥を「作った」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:かのこ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
先日、焼き鳥を「作った」。
 
テレビの街ロケを見ながら「焼き鳥食べたいね~」とぽろっと口に出したとき、恋人から返ってきた提案が「今晩作る?」だった。……うん? 今晩作る? 彼からしてみれば何気ない提案だったのかもしれないが、わたしは「作れるの!?」と驚いてしまった。焼き鳥、今晩、作る? どうにもその3つが結びつかなくて。
 
焼き鳥。
わたしにとっての焼き鳥は、長らく「外で食べるもの」だった。
 
デパ地下の焼き鳥専門店か、近所の居酒屋か、もしくはコンビニのものしか食べたことがない。そもそもあれが家庭で作れるだなんて聞いたことがなかった。母に譲ってもらったレシピ本にも、焼き鳥の作り方は載っていなかったし。でも恋人が「お店のには劣るけど、まあ串打って焼けば全部焼き鳥でしょ」と自信ありげに言うもんだから、じゃあ作ってみましょうか、とおそるおそる頷いたのである。
 
焼き鳥を作る。そうと決まれば話は速かった。近所のお肉屋さんでモモ・ムネ・せせり、ついでに中落ちカルビを買って(魔が差した)、スーパーでネギとプチトマトと椎茸を買い足した。わたしがずっと「外で食べるもの」という認識だった焼き鳥は、案外簡単に材料がそろう料理だった。こんなんでいいんだっけ、と言うと、相手は「多すぎても食べきれんよ」と笑っていた。まあそうなんだけど。うーん、そうじゃなくってさ。
 
買い出しを終え、早々に台所にふたりで立つ。鶏肉を捌いている相手に「タレを作ってくださーい」と言われたので、あわててスマホでタレを検索した。「焼き鳥 タレ」。検索画面に打ち込んだのはたったそれだけなのに、出るわ出るわ、レシピの山!
 
なんじゃーい! わたしが知らんかっただけで、みんな意外と焼き鳥作ってたんかーい!
 
レシピ通りに「醤油大さじ5・砂糖大さじ2・酒とみりん大さじ1」をぐるぐる小鉢で混ぜながら、焼き鳥屋さん秘伝のタレって流出するものなんだなあ、と思った。門外不出っぽく見せているのに、実はそうでもなかったらしい。実際に小鍋で適当に煮たら、なんとなくタレっぽい色になった。タレじゃんこれ。
 
そうこうしているうちに、先に塩で味を付けただけの焼き鳥ができた。
「食べてみ」と言われたので、食べてみた。
 
……悔しいけど、おいしかった。
 
サラダ油の味が移っていてちょっと重かったけど、そういうところも家庭料理っぽくてすっごく良くて、なんだか悔しかった。
 
もちろん、おいしさで勝敗を決めるならデパ地下の焼き鳥が勝つはずだ。それはほかの家庭料理だって同じことで、母が作ってくれたオムライスよりも、一流シェフが作るオムライスのほうが圧倒的においしい。でも、なぜかまた食べたくなるのは母のオムライスであり、わたしが好きなのも母のオムライスだ。家庭料理における焼き鳥は、母のオムライスと同じぐらい素人感があって、そのくせに「私のほうが好きでしょう?」と我が物顔で問いかけてくる危うさがあった。素直に「おいしい」と伝えるのがちょっと悔しいぐらいの、おいしさなのである。
 
ふと隣を見たら恋人が「してやったり!」な表情を浮かべていたから、ちょっとイラッとしたけれど。自分で作ったタレで焼いた鳥もおいしくて、ああ、家庭料理だなあ、ってホッとしたりもして。
 
家庭料理は家庭で作るから「家庭料理」と呼ばれるのだ、とあらためて気付いたのはこのときだ。煮物や出し巻きたまごが実家の家庭料理だったけれど、わたしたちの“家”の家庭料理は、わたしたちが決めていいのだ。最近流行りのシュクメルリだって、家で作った瞬間に家庭料理と呼ばれるようになるだろう。
 
わたしたち人間は、生まれながらの環境によって、「できる/できない」の判断を鈍らされてしまうものだ。わたしは今まで焼き鳥を作ったことがなかったから「焼き鳥は作れない、買うもの」と思い込んでいた。でも、よくよく考えてみれば焼き鳥って、ただ鳥を焼けばいいだけなのである。プロ並みにおいしく作りたいなら話は別だが、ネギと鶏もも肉を交互に串に打ってフライパンで焼けば、少なくとも焼き鳥を名乗れるのである。だというのに、わたしは勝手に「できない」ことにしていた。
 
これって、本当はとっても怖いことだと思う。無意識のうちに「できない」と思い込んでいるものや、「まあ、これはこういうセオリーだし」と納得させているものが、わたしたちにはいくつもあるのだろう。今回はたまたま恋人に「焼き鳥、今晩作る?」と言ってもらえたから自分の思い込みに気付けたけれど、きっかけがなければ、気付いていないことにさえ気付くことができないのだ。自分の育ってきた環境と考え方に頼ってばかりいてはいけない。
 
わたしたちはもっと、他人の考え方に触れて自己を見つめ直すべきなのだろう。焼き鳥に教えられたのはなかなか恥ずかしいことだけど。もしかしたら大半の人にとっては、とっくの昔から焼き鳥も家庭料理だったのかもしれないけれど。
 
焼き鳥を作ってから数日後、仲良くしている先輩が製麺機を持っていることを知った。彼によると、ラーメン・うどん・パスタは自分で打てるものらしい。「なんならラーメンのスープも自作できるよ!」と言われ、ラーメンはさすがに家庭料理にはならないでしょ、と思っていたわたしは、わりと本気でショックだった。先輩にもらった麺をジャージャー麺にして食べたら、普通においしくて感動した。味付けを自分でしたこともあって、わたしが作る”家庭料理”の味になっていた。
 
焼き鳥だってラーメンだって、家で作ればなんだって、家庭料理になるのである。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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