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母になった日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:sakura_shuri (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ママのおなかの中で、悠くんの上に耀くんが乗っかっていたから、悠くんが重たいよ~、早く出してよ~、って言って生まれてきちゃったんだよ」
そう話すと双子は
「え~、そうなの?」
「おもしろ~い」
と、言って笑った。
 
6年前の今日、36週2日での早産だったが、悠くんは2,540g、耀くんは2,320gと双子にしては大きく生まれてきてくれた。
あれからもう6年、多くの奇跡やたくさんの人の助けがあって、子供たちは生まれてきてくれた。
 
「あ、なんか出てきた。やばい!」
慌てて近くにあったタオルをお尻の下に敷いて、枕元のブザーを押した。
 
「ちょっと待ってよ。予定日はあと4週間も先なのに!」
半分動揺しつつ、
「でもこれも想定内か」
半分冷静な自分。
 
「どうされました?」
「あの、破水したみたいなんです」
「すぐ行きます!」
 
扉を開けて看護師が入ってきた。
 
「破水したみたいなんです。水みたいなものがたくさん出てきて、今タオルを敷いてあります」
「ちょっと検査してみますので、タオルをお借りします。動かないでくださいね」
 
枕に倒れこみ天井を見上げる。
「なんでこんな日に」
今日は土曜日。主治医の藤井先生はもともと予定していた4日間のお休み中だった。
「週末は大丈夫だと思うけど、数日お休みしますね。順調にいけば2週間後に帝王切開を予定しておきましょう」
休みの前に藤井先生と交わした会話だった。
 
「破水していますね」
看護師が戻ってきて告げた。
「ご飯食べました?」
「まだ食べていないですが、クッキーを1枚食べました」
 
時間は朝の7時すぎ。ちょうど朝食が配られた後だったが、その朝食には手を付けず、その前にクッキーを1枚だけ食べたのだった。
 
「あの、手術の同意書まだ書いてないんですけど」
「すぐにご主人に連絡して来てもらってください」
 
プルルルル
 
「はい?」
「おはよう。今大丈夫?」
「これから犬の散歩に行くところ」
「そっか、でね。どうも破水したみたいですぐに来てくれだって」
「はぁ?」
「だって、手術の同意書まだ書いてないし」
「でもこれから犬の散歩なんだけど」
 
看護師に「犬の散歩が終わってからでもいいですか?」
「ダメです。すぐに来てください」
 
「すぐに来てだって」
 
「これから手術の準備をするのでお待ちください。ご主人が来られたら教えてください」
 
私は身動きが取れず、おなかをなでながら話しかけた。
「ちょっと早くないかい?」
「でもいい加減窮屈だったよね」
「やっと会えるね」
 
20分か30分たった頃、旦那がやってきた。
「破水したみたい」
「そっか、ナースステーションだいぶバタバタしてたぞ。あれはきっとウチだよ」
「今日は藤井先生休みだからじゃない?」
「でも、カルテどこーって叫んでたよ」
 
コンコン
「失礼します。安田です。今回の帝王切開を担当します。よろしくお願いします」
担当の先生が現れた。主治医が休みなので当直の先生だ。
「こちらこそよろしくお願いします」
「早速ですが赤ちゃんの状態を確認させてくださいね」
 
エコーで赤ちゃんの状態を確認する。
「赤ちゃんたちはおなかの上と下にいます。今回は下の方にいる子だけ破水してますね」
「破水しているので、できるだけ早く手術をして出してあげる必要があります。準備ができ次第呼びに来ますので、それまで待っていてください」
 
「大丈夫かな? 頑張ってね」おなかをさすりながら声を掛ける。
 
旦那が連絡した義理の両親も到着した。私の両親は遠方の沖縄なので電話で破水したことを伝えた。
 
そうして3時間ほどたった10時前にやっと声が掛かった。
 
「では今から手術室に移動しますね。破水しているので、このままベッドで移動します」
なかなかない経験だ。
ベッドに寝たまま運ばれていく。
 
人生初めての手術が帝王切開。不安もあるけど期待が大きい。
「早く会いたい!」
 
10時18分
「赤ちゃん出ました」
「赤ちゃん、きれいにしてからお母さんの側に来ますからね」
 
泣き声が聞こえてくる。生まれたんだ。元気に泣いてる。涙が出てきた。
 
10時20分
「もう一人も出ました。これから子宮をきれいにしてから閉じますね」
 
もう一つ元気な泣き声が聞こえる。よかった二人とも無事だ。
 
まずは長男がやってきた。
「やっと会えたね」
その後次男がやってきた。
「がんばったね」
 
最初に出てきた方が長男の悠くん。次が次男の耀くん。
ということは、耀くんがおなかの上の方にいて、下にいた悠くんを押しつぶしていたことになる。
 
「そりゃ重たくって早く出たかったよね~」
「きっと早く出せ~っておなかを蹴ってたら袋が破けちゃったんだよ」
 
6年後の誕生日、悠くんと耀くんに生まれた日のことを話してあげた。
 
「悠くん? おなかの中で重くなかった?」
「なんで?」
「耀くんが悠くんの上に乗かってたの、それで悠くんが重たいよ~って、出してよ~って言って出てきたんだよ」
「そうなの? きっとおなかの中でこんな風に重なってたんだね」
そう言って耀くんが悠くんを押しつぶして見せた。
 
 
 
 
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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