メディアグランプリ

2つ目の「おしごと」が人生を豊かにする


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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すえはる(ライティング・ゼミ平日コース)
 
彼に初めて会ったのは5年前。友達の紹介だった。
第一印象は「端整な顔立ちの人」。それ以上もそれ以下も無かった。
 
それから何度か彼と会うようになった。
彼は会うたびにいつも人柄が変わる人だった。
ある時は喧嘩っ早くて目つきが悪く、またある時はニコニコ頷き優しい眼差し、かと思えば後光の刺すような神聖な雰囲気を醸し出す風格、また気づけば威厳はどこへやらげっそりと自信の無い陰鬱な表情。
 
ただの厄介な人物である。それでも何故だか惹かれてしまった。
彼の新しい一面をもっと見たい。彼をもっと知りたい。
いつの間にか5年ほどずっと彼を追い続けていた。
こんなにも長く人に関心を注ぎ続けられたのは、人生で初めてだった。
そんな「初めて」がささやかに私の暮らしと生き方を変えてくれた。
 
彼は役者だ。
会ったというのはもちろん画面の中か客席で。
人柄が変わるのも役が変わるから。
 
最初は私の好きなキャラクターを彼が演じていたことが始まり。
彼の演じるキャラクターが好きだったのが、いつからか演じている「彼」を好きになっていた。
舞台裏映像や冠番組で見える彼の素の姿に、役柄とのギャップが見えて目は釘づけ。ウェブや雑誌にインタビューが載ればすかさず読むし、Twitterでも新しい情報が無いか毎日探す。舞台や番組の映像が出たら、最高画質で見ようとできる限りBlu-rayで集める。
今まで一度も手を出したことのなかった写真集とやらに手を出し、彼の主演映画のために10回近く映画館に通った。
写真集なんてなんのために買うの? 映画とか一回見たらTSUTAYAに並ぶの待てば良く無い? などと思っていた過去の自分を殴り倒したいほどだった。
20歳を迎えファンクラブにも入会した。もう来るとこまで来た気がする。
 
何故ここまで彼に惹かれてしまったのか。
毎作品、役の落とし込み具合には敬服。
情報が少ない中でも、客の期待を軽々と超える世界を見せてくれる力。
34歳、業界の中では先輩としての立ち位置が増える歳、それでも彼は先輩風を吹かせることもなく、どんな人とでも一緒に学び会うような姿勢。穏やかで飾ることのない性格。周りをよく見て細やかな配慮ができるところ。
似てるというとおこがましいけど、本人もよく言うように不器用なところとか、人前に進んで出るタイプじゃないところ、場の空気を作るというよりはそっと横で寄り添うところなど自分と通じるところも追いたくなる理由だろう。
不器用な彼の成長を見守りたくなる。
挙げ始めたらキリがない。
 
彼の微笑ましさは日常の癒し。
カッコよさは背中を押す刺激。
佇まいは将来の理想。
 
恋と尊敬と親心の混じったような複雑な感情。確かなのは彼のこれからも見届けたい、支えたいという応援の心が燃え続けていること。
 
これが世に言う「推し」なのだ。
 
そんな推しを応援するという「推し事」を始めて自分自身にも変化があった。
 
今まで触れてこなかった文化に足を踏み入れるようになった。
彼の主演舞台のおかげで、一度は諦めていた刀剣乱舞というゲームを再開し刀剣文化に関心を持った。刀に会いに遥々京都の博物館と神社に行ったし、ちょっとした出先でも古物の展示があればついつい入って眺めるようになった。
 
彼のファンとして恥ずかしくない身なりと振る舞いを心がけるようになった。
万が一ステージから客席が見えた時、綺麗なファンでいたい。「塗っとけばいいや」だった化粧もパーソナルカラー診断までして自分が映える色合いと化粧を研究した。常連さんに「最近綺麗になったね。もしかしてできた?」と親指を立てながら聞かれ、隠れてガッツポーズ。「綺麗になったね」と言われる回数が増え自己肯定感も上昇傾向。
 
自分も彼に負けないくらい挑戦しよう、自分を広げようと思った。
小学生の頃から夢だった「山小屋で働く!」をしてみた。一ヶ月山と猿と熊に囲まれた生活。毎朝山を眺め、そこに登る人たちを迎える仕事。朝は苦手だし仕事もたくさん。それでもやりがいを感じた。きついけど楽しい。舞台を作る彼もこんな感覚なのかな。
 
人のいいところを見つけるようになった。
いつも会えるわけじゃないからこそ、彼の動きには集中する。もっと彼のいいところを知りたい! と見ていたら自然と周りの役者たちの素敵ポイントにも気付くようになった。ライターズアイならぬグッドポイントアイが開花し、日常生活でも発揮されるようになった。苦手だなと思っていた人も、付き合っているうちに「可愛いとこあるじゃん」と一周回って愛おしくて笑ってしまえるようになった。怖いと避けていた人の、ふとした笑顔でさえ「いいね!」と感じるようになった。
 
仲間ができた。
同じように、推しをひたすらに推しまくる仲間と出会えた。
私とは違う誰かを応援していても、その熱い想いは変わらない。お互いの推しの活躍と自分の狂おしいほどの愛を語り合う。誰かを応援することでこんなにも人とのつながりが深まるなんて知らなかった。幸せってここにあったんだ。
 
目指したい大人像を見つけた。
いくつになっても自分と向き合い考え続ける彼。苦手なことも知らないことも受け止めて隠さない。周りをよく見て、自分を支えてくれる人を大事にできる。天才じゃないから、少しづつ日々前進する努力ができる。そんな大人になりたいと思った。
 
ライティングゼミもそう。
受けた理由は多々あれど、一つはいつかファンレターを書くときにこの想いを伝えられる文を書きたかった。
次の目標は美文字。彼の目の負担にならない美しい文字でお送りしたい。
 
推し事はいつの間にか、自分の世界を広げ、生き方を変えていた。
 
きっと私はお母さんになって、おばさんになって、お婆さんになって、推すものが変わるかもしれない。それでもこの気持ちを、推し事の始まりを、創った彼、『鈴木拡樹』という男を生涯忘れない。
 
あなたにとっての推しは何だろう?
ついつい見てしまう隣の同僚、マイナーだけどキラキラ輝いてるアイドル、毎度ワクワクさせてくれる作品を見せてくれるあの作家、食べずにはいられないあの食べ物、幾つになっても尋ねたいあの場所……
 
趣味というにはあまりにも「愛が深すぎる何か」をあなたもきっと持っている。
知らないうちにあなたの日常を変え、世界を広げているかもしれない。
 
 
 
 
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2020-02-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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