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メディアグランプリ

Positive pressure に押されてーある中年社員の目覚め


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Todd (ライティングゼミ平日コース)
 
何年か、いや何十年かぶりに自分より年下の人たちと働いた。1人は30代、自分より10歳下、もう1人は20代。自分より20歳下だ。あるプロジェクトに入ったことで彼らと働くようになった。それまで気がつけばここ15年くらい年下の人とは働いていなかった。
 
今担当している仕事のせいか、働く相手といえばよくて同い年であり、ここ10年余りはそれすら珍しく、50代か、60に限りなく近い方々としか働いていない。いわば人生の大先輩であり学ぶことも多いが、自分がリードを取ろうとすると厄介なことの方が多い。
何かをお願いしようとすると、
 
「なんで」
「これは俺が部長としてやってた業務だから問題無い」
「やりたくない」
 
こんな言葉を投げつけられる。こんなことが多いからどうしても言い争いと喧嘩と妥協なくして先に進むことはない。議論をしようにも進まない。そんなことばかりが続いたせいか、自分もどんどんきつくなっていく。言い方も、声のトーンも。無論年齢が上の方なので最低限の礼儀はわきまえてはいるのだが。さらに自分の方が業務知識もあるし長年の経験を持っている。他に同様のスキルを持っている人もいない。それも手伝って自分もだんだん頑なになってきていた。そうすると、今度は自分も周りの意見にあまり耳を傾けなくなってきていた。ひょっとすると普段手を焼いている一緒に働いている年輩の方々よりもある意味頑固になってきているようにも思えた。正直仕事がつまらなかった。転職しようとすら考えていた。
 
そんな時、ある日突然それは訪れた。
 
「出向してほしい」
 
そう言われた。行き先は親会社。はために見れば栄転だ。ただ、親会社とはいえこの仕事である以上今の会社同様ご年配の方々だらけであることは想像に難くない。そして想像通りご年配の方ばかりの中に放り込まれた。ただ少し違うのはある程度若い社員がいるため、前の会社に比べて平均年齢は低かった。その若者たちの中には自分で手を挙げてこの部署に来た人もいる。いわゆる終着駅であるこの部署に。そこで激務の中ひたむきに働いている。
ショックだった。何年ぶりだろうか? 同じ部署で働いている若者を見るだけではなく、彼らが前向きに働いている姿を見るのは。
 
ある日席替えをして前と隣が若者になった。2人とも声に活気があるし動きも早い。それに頭の良さが加わって見ていて傍目から見てもキビキビと働いている。彼らもまたいろいろと業務は振られるが、それでもベストを尽くして働いている。前の会社のように仕事を投げられた時に自分がやるのやらないので仕事の蹴鞠(けまり)が始まることも少ない。
 
「こんな時代もあったな」
 
そんな彼らを見て思わず昔を思い起こした。
自分だって少なくても10年近く前にはこんな働き方をしていた。確かに大変だったし追いつくのも大変だったが、その分成果を出した時の充実感があった。いくつもの仕事がきたが、やるしかないと奮い立たせて多くの仕事をまるでジャグリングのようにこなした。今の会社に入るとその充実感を感じることもなく、いつの間にか惰性で仕事をするようになっていた。蹴鞠遊びや、自分じゃないごっこを駆使して仕事から逃げていた。そんな自分をやれるのに今は冬眠状態にあると言い訳をしていた。
 
例のプロジェクトにアサインされたはそんな時だった。メンバーは2人の若者。2人ともハキハキしていて頭もいい。そうすると今まで考えても見なかったことが頭に浮かんだ。
 
「彼らから自分はどう見られてんだろう」
 
今まで思って見なかったことだ。立場は逆転した。彼らから見れば自分は40代中盤の立派なおじさんだ。言い換えれば自分が腹を立てていた年輩の方々と似たような存在だ。
 
「使えないジジイ」
 
とは思われたくなかった。彼らは若いだけではなく、そのプロジェクトに関する知識も、業務に関する知識も豊富だった。
 
「やるしかない」
 
何年も厚い氷の下で冬眠していた熱い仕事への思いが蘇ってきた。どうすれば足をひっぱらないか? まず冷静に現状を分析した。まだ何をするのか方向性が決まっていない状態。チャンスだ。自身の経験からアイデアを出し、案を作り出した。上司から指示が来ると真先にボールを取って投げ返した。
 
「これはこういう基準でまとめ直してくれ」
 
上司は私が作ったものに対してすぐフィードバックをしてくる。
 
「承りました」
 
すかさずメールを打ち込むと、その日の夕方までに成果物を作って上司のメールボックスへ投げ込む。CCには若者ももちろん入っている。
「だれかこの資料作って」
 
すると真っ先に作って上司のメールボックスに投げ込む。まるでキャッチボールというよりドッチボールのようだった。若者たちに入り込む余地を与えなかった。
いつの間にか2人の若者も負けじと追随してくるようになった。それもまたプレッシャーとなる。
 
「負けてなるものか」
 
その思いが強くなっていく。その力がさらにエンジンを稼働させた。そのうち彼らも自分を認めてくれるようになった。何かあると相談をしてくるようになった。やがて、
 
「先輩」
 
とメールに書いて相談してくるようにもなった。嬉しくも恥ずかしい気分だったが心地よかった。自分も頭をフル回転させて答えた。
 
若者たちはさらに負けじとボールを打ち込んでくるようになった。忙しいのに先回りしてやってしまうようにもなってきた。おかげでプロジェクトも進んでいくようになった。
 
「ポジティブなプレッシャーだな」
 
そう感じた。プレッシャーとはよくネガティブな意味でとられることが多い。自分が今まで上司や先輩から受けたプレッシャーはほぼネガティブなものだった。昇進に響くぞとか、ボーナスに響くとか、はたまたクビになる可能性があるとか。しかし彼ら若者たちのプレッシャーはそれとは違った。下から強すぎない力で押し上げれるようなものだった。それに嬉しさを感じてきていた。
 
こうして、冬眠から覚めていった。気がついたら年輩の方々のように中年の仲間入りをして、どっぷりと浸かってしまっていた自分が解き放たれていったのだった。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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