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幽霊でもウエルカムである。

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記事:隅倉 文子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ちょっと、ジークロパに行ってくる」
父は、映画のことを「ジークロパ」と言っていた。
ジークロパというのは、父の造語である。
「ジー」と音がして、あたりを見ると真っ黒で、しばらくすると「パッ」と明るくなる。
だから、映画のことを「ジークロパ」と言っていた。
 
今の映画は、デジタルなので「ジー」なんて音がしないけど、フィルムの時は音がした。
「ジー」という音で、いよいよ始まるって感じがして、ざわざわしていた周りが一瞬で静かになる。
そう思うと擬音からではじまる昔の映画のほうが、味があったような気がする。
 
映画好きの父に、映画をよく連れて行ってもらったことがある。
でも、父の趣味で作品を選ぶから、よくおぼえていない。
子ども向けの映画でないことだけ、おぼえている。
 
だから、映画の予告がすごく怖かったことをおぼえている。
怖い夢をよく見たからだ。
朝起きて、夢だったと思うとほっとしていた。
 
映画の予告は、怖かったけど、映画に行くのは、楽しみだった。
 
大人になって、なかなか父と一緒に映画に行く機会が、少なくなっていった。
だけど、もしかしたら、一緒にいけるかもと思って
「今度、○○という映画に行く」
というと、すでに見たあとということがあった。
 
ずいぶん、その映画についてくわしいなあと思ったら、すでに見ていたということもあった。
 
でも、
「この作品はいいから。見るべき」
なんて、無理強いをされたことはない。
なぜなら、父は、映画は、楽しいものだと思っているから、自分の好きな作品を選べばいいと思っている。
だけど、父がいいと思っている作品は、だいたいいい作品が多かった。
おもしろい映画だったという感想を言うことはあったけど、つまらない映画だったということは、あまり聞いたことが、なかった。
映画が純粋に好きだったのだろう。
大学時代は「映画ばっかりみていた」と言っていた。
 
今でも、映画館へ行くと父を思い出す。
 
父は、本が好きだった。
特に司馬遼太郎さんが好きだった。
だから、「菜の花の沖」の舞台となった淡路島に行った。
季節は、冬だったので、菜の花は、咲いておらず、水仙が咲いていた。
今度は、菜の花の季節に再び来ようと思っていたけど、それはかなわなかった。
 
花も好きだった。
チューリップの球根を植えたが、なかなか芽が出ず、
「安い球根だったから、芽がでないのか」と言っていたが、その年の春には、きれいなチューリップがたくさん咲いた。
でも、父は、見ることができなかった。
 
ダジャレも好きだった。
「ジークロパ」のように造語を作ることもあった。
歯医者の名前で「岡歯科」「歯科田中」のことを、「おかしか」「したたなか」と
九州のイントネーションで言ってみて、みんなを楽しませていた。
 
お酒も好きだった。
お医者さんに控えたほうがいいと言われていたみたいだったけど、「お墓に供えてもらってもうれしくない」と言って飲んでいた。
 
ニックネームをつけるのが、得意だった。
だから、子どもができたら、どんなニックネームつけてけれるか楽しみだった。
でも、かなわなかった。
 
「ゴルゴ13」が好きだったから、お見舞いにもっていったことがある。
すぐ、読み終えて
「持って帰って」渡された。
次も持っていこうと思ったのに。次は来なかった。
 
お父さん、いそぎすぎだよ。もうちょっと、この世でゆっくりしてくれたらいいのに。
孫にも会ってほしかった。
そして、ニックネームつけてほしかったよ。
まだまだ、一緒にしたいことあったのに。してもらいこともあったのに。
 
最近、趣味で手相をみてくれる人に出会った。
「お父さんの影響をかなり受けてますね。好意的に思っているか、反面教師的に思っているかどちらですね」
「私は、好意的に思っています。でも、どうして、手相でそんなことわかるのですか?」
そう思って聞くと、手をみるとそういうことがあらわれているらしい。
でも、父のことを言われて、少しうれしくなった。
 
やさしい父は、叱られた思い出があまりない。
実際、怒っていることが少ない人だった。
 
最後に見た夢は、なぜか。一緒にごはんを食べに行く夢。
お店を選んでいるところで、目が覚めた。
 
2月13日は、父の命日である。もう十何年、たっている。
何年たっても、父との思い出が色あせることはない。
 
できるなら、もう一度会いたい。
会って何をするかって?
だだ、父の大好きなお酒を一緒に飲んで、昔話とか、他愛もない話をぐだぐだしていたい。
それでも、きっと父となら楽しいと思う。
 
幽霊でもウェルカムである。
 
 
 
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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