メディアグランプリ

海のエネルギー


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記事:M(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私は海が好きだ。
 
もともと泳ぐことも好きだったし小さいころから家族旅行や友達と海に行くことも何度もあったが、そのころは海のエネルギーを心から感じたことはなかった。
私が初めて海のパワーに感動したのは大学2年の夏だ。
 
大学生になってから、精神的に落ち込む日々が続き、鬱と診断された。
それ以来、感動、感情、感覚、生きているうえで人間がもともと持っている機能が正常に作動していない、脳が眠っている感じで大学生活を過ごしていた。
 
少し良くなったりする時もあるのだが、やはり完全に本来の元気な自分ではなく、何か心におもりが乗っている感覚はずっとあり、楽しいと心から思えない、幸せだと感じれない、そんなつまらない自分が何よりも嫌で仕方なかった。
 
そんな中で迎えた2年の夏休み。相変わらず冷めた心と鈍った脳のままだったが、周りの友達や人間関係には恵まれていた。当時付き合っていた彼が海に連れて行ってくれた。
 
もちろん夏に向けて体づくりなんてする余裕もなく、自分の美意識も全然忘れ去られていたので水着姿になるのは抵抗があった。しかし、鬱状態だとそんなこと気にする余地などもうとっくにないので、自分の体型などどうでもいいやと海に入ってみた。
 
映画を見ても、花火を見ても、美味しいご飯を食べても、デートをしても(彼には申し訳ないが)、心が動かなかった自分が、浮き輪の上でただ海の波に揺られてぼーっとしたとき、生命力というものを、全身から感じた。心から感動したのを今でもはっきりと覚えている。
 
ただおとなしく浮き輪に乗って一人でぷかぷか浮いて目を閉じていたのだが、鬱で苦しんでいたからこそよりその幸福を強く感じたのだろう。
それまでの元気な時の自分や、周りの人々のようにはしゃいで騒いで泳いでいたら、わからなかったと思う。
 
その時は知らなかったが、「タラソテラピー」という海洋療法というものがある。海水の成分比が妊娠中の母体の用水に近いといわれることから安心するらしい。
 
それがきっかけで鬱が治った、とかいうわけではないが、あの時の感動は何年たっても忘れないだろう。あのタイミングで、海のエネルギーを感じることできて、本当に良かった。。
連れて行ってくれた当時の彼には心から感謝している。
 
そしてなぜこの海のエネルギーについて思い出したかというと、私は今また、無気力状態であるから。
私は双極性障害という、鬱状態と躁状態を繰り返す精神疾患に悩んでいる。
何度も鬱になるうちに、いろいろと自分に合った鬱との向き合い方がわかってきた。
海以外にも川や温泉に行くこと、瞑想やヨガ、ウォーキングなど自然に触れつつ体感することが鬱にとって効果的であること。
感情にふたをするのではなく、書き出すことや、むき合うこと、認めること、などほかにもたくさんのことを試してきた。
 
今の時代は鬱になることは珍しくない。
そして、時代が進化しても、心や本能は変わらない。
よく眠り、よく食べ、動き、話し、笑い、楽しむ、自然を感じることが心身の健康には重要であり、忙しくなると忘れがちになる。
 
そんなことはわかっている。
わかったうえで、鬱になるときはなるのだ。
 
これは自己肯定感、もともとの性格、育ってきた家庭環境、恋愛、仕事、様々なことが関わっているので、一度治ったからもうならないわけでもなく、鬱になることが悪いことでもないと思っている。
どうしても、こんな自分は楽しくないし強くないし美しくないし自身もやる気もないし、好きになれないと思ってしまう鬱状態。
でもこの鬱になることにより、自分の本当のうちに秘められている気持ちを知るきっかけにもなったりもする。
 
感情や感覚が鈍っている中で、「美しい!」と思える自然には、人間の想像をはるかに超えるパワーがある。
日々の生活の中で無意識に呼吸が浅くなったり、緊張や責任を感じていたり、血流が滞っていたり、体が冷えていると心にまで影響する。
そんな状況を簡単に変えてくれるのが自然のエネルギーである。
 
まぶしい太陽の光、晴れわたり澄んだ空、きれいな海水は少しぬるくて心地よく、少し泳いで足のつかない深いところまでいくと、浅いところでは高かった波が静かに落ち着いていて、浮き輪に頭と足を引っかけて空を見上げて波に揺られる。波の音も心地よく、ずっと聞いていたい、このまま眠ってしまいたい、と思える体験。
安心感に包まれるこの瞬間、何にも縛られず、何も考えず、何もしなくても勝手に、背負っていたものや、余計な心配などすべてから解放してくれた海の温かさ。
 
今年の夏も海に行きたいなと考えながら、体脂肪をもう少し減らそうと思いながら、私は今チョコレートを食べている。そしてチョコレートの精神ストレスの緩和効果もきっと素晴らしいだろう。その分しっかりと運動することも忘れてはいけない。
 
 
 
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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