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作文は小さな歴史書~大人の作文のススメ~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大越香江(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「ママの作文は笑えるよね」
「おもしろいよね。ねえ、見せて、見せて」
 
作文とは小さな歴史書のようなものである。
 
我が家には、私が小学生の時の作文を綴じたファイルが2冊ある。
小学1年生の時と2年生の時に学校で書いた作文が完全に残っているのだ。実家にあったものを母が持たせてくれたので、好きな時に読める。
 
私の子どもたちはその頃の私の年齢を超えてしまった。最近の傾向なのか、私の小学生の頃ほど学校で作文を書く機会がない。
だから、子どもたちにとっては私の作文がもの珍しいようだ。私の作文ファイルを時折読んでは大笑いしている。小学生の私はなかなかのライターであったと思いたいが、実際のところは内輪ネタがウケているだけである。内輪ネタは強力だ。
 
実際、私が書いた作文は、字も絵も日本語もつたなく、たどたどしい。
原稿用紙の書き方が間違っている。
漢字の送り仮名が間違っている。
初期は、「せんせい、おねがい」「せんせい、あのね」で始まる文章や、日記ばかりである。
 
>きのう、〇〇ちゃんとあそびました。
>たのしかったけれど、すぐけんかしてかえってしまいました。
>おわり
 
友達と、けんかしたのか……。けんかした理由を全く書いていない。
〇〇ちゃんという名前は他の作文に何回も出てくる。よく一緒に遊んでいた仲の良い友達だったのだ。それにしても、けんかした理由が気になるが、今となってはもうわからない。ちょっともやもやする。
こういう時は理由を書いておいた方が読者に親切だ。
 
>せんせい、あのね。
>わたしのうちのあさがおのはっぱは4まいでていますけど、いっぽんしかでていません。
>でも、どうしたらでるのかおしえてください。
 
朝顔の種を複数まいたのに、1本しか生えてこなかったという愚痴のようだ。先生もこんなことを質問されてコメントに困っただろうと思う。先生は、出てきた1本を大事に育てるようにコメントされていた。さすが、百戦錬磨のベテランの先生である。謎の問答めいた作文の応酬に慣れておられたのだろう。
 
小さな自分がそこにいた。その頃の友達、その頃に自分が何をして何を思っていたのかの記録。もう記憶のどこにも残っていないようなことが、綴られている。
作文に書いていなければ、〇〇ちゃんのことをこうやって思い出すこともなかったし、朝顔の種を自分でまいて育てていたことも記憶から失われたままだったろう。
 
1年生の最初の頃は平仮名ばかりの2、3行の作文だけだったのが、少しずつ長い文章を書くようになっていった。
 
例えば、家族のこと。
 
私があげたプレゼントを父が全然使ってくれないという愚痴まで書いてある。全く記憶にはないが、書いてあるのだから、そんなこともあったのだろう。
「香江ちゃんが大きくなっておとなになった時、見せられるように置いてあるんだから、使わないでおくの」と父は言ったと記録されている。さすがに父もうまく切り返してきたものだ。
……私が大人になって20年以上が経過するが、一度も見せてもらったことはない。
多分、タンスの奥深く、父自身ももはやわからない奥深いところにしまわれているのだろう。いつか思いもよらないところから出てくるのかもしれない。
ただ、残念なことがある。作文中にはプレゼントが何か書かれていないので、いったい何のプレゼントのことなのかは謎のままである。少し、もやもやする。
作文は具体的に書いたほうがいい。
 
初めてひとりでおつかいに行ったときのことも作文に書かれている。
私が初めてひとりでお使いに行ったのは当時住んでいたアパートのすぐ裏のスーパーマーケットで、買ったものは、胡椒である。この作文では、「テーブルコショー」と具体的に記録されている。
内容を具体的に書いておくと、読者に親切だということがよくわかる。
 
当時習っていたピアノのこと。
どんな曲を習っているか、どんな心構えで練習しているか。曲についての感想。
ピアノは大学受験の時にやめてしまったが、小学生の頃はピアニストになる気で頑張っていたらしい。
 
習字の展覧会があるので頑張って字を書いていたこと。
冬休みに書き初めの宿題があったこと。
……今、子どもたちの冬休みの宿題には書き初めはない。時代の変遷を感じる。
 
私の歴史がそこにある。
私のささやかな歴史書と言っていい。
 
こうして見ると、私は幼いころから書くことが好きだったのだなあ、と思う。実際、作家になりたいと思っていたこともある。
 
最近、小学校の卒業アルバムに、私が小学校で最後に書いた作文が掲載されていることに気づいた。
その作文によると、私の夢は、ピアニスト→医者→作家→農家→小学校の先生と変遷したらしい。
「……夢は夢、現実は現実だ。夢におぼれてしまって努力をしないのではいけない」
小学生の頃の自分はこんなに生意気だったのかと知り、苦笑いした。
 
作文を書くことが好きだったことを思い出して、もう一度書くことを始めてみようと思う。
好きこそものの上手なれ、と言うではないか。
 
さあ、大人も作文を書こう。なるべく読者に親切に。
将来の自分が、今を振り返って楽しんでくれるだろう。
あるいは、子どもや孫が面白がって読んでくれるかもしれない。
 
 
 
 
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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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