母の最近の健康法
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記事:オリベツカサ(ライティング・ゼミ平日コース)
母は昭和20年生まれの74歳。今でも早歩きペースでサクサク歩き、うるさいほどペチャクチャ話す。
とても元気だ。
そんな母に最近メルカリを教えた。メルカリを教えてと言ってきたのは母からだ。
メルカリを聞いたことがない人は少ないと思うが知らない人のために説明しておくと、スマホでできるフリマだ。個人が出品したり購入したりできるアプリのこと。無料で利用できて売れると手数料が掛かる。なので売れない場合はずっと無料という安心感がある。
母は何かを売りたいらしい。そしてそこで売上を上げたいらしい。あわよくば儲けたいらしい。
母にはわたしを含めて三人の子供がいる。子供と言ってもみんないい大人。その子供の中でわたしにメルカリのやり方を聞いたのは最近よく売れているということを兄弟から聞いたからだ。
わたしもそれなりに試行錯誤して売り方を身につけた。教えることはできると思った。
母が言った「メルカリ教えてよ」と。気軽に「いいよ」と言ったんだけどこんなに最初にこんなに苦戦するとは思っていなかった。
苦戦は「コピペ問題」だった。
メルカリのコメントはある程度ワンパターンなので同じ文章を使うことができる。なのでパターンを決めてこちらで文章を用意した。そしてその文章をコピーしてペーストしてもらうことにした。
このコピペが出来ないのである。
教えても出来ない。
というか出来るけど時間が掛かる。
どのくらい時間が掛かるかというと通常こちらがスマホで3秒くらいでできるコピペを1時間くらい格闘していた。冗談ではなく本当の話だ。
これには母とわたしの性格も影響している。
母は自分で何でもやりたがるタイプだ。自分で体験しないと気がすまない。自分で試行錯誤して体験して身につけたいと思っている。今までこの方法でたくさんのことを身につけてきた。
わたしはすぐに答えを言うと身につかないと思って教えている。ここはこうやればいいよと言ってやってあげてその場でできても後で出来なかったら身についたことにならない。
この二人の性格が重なって1つのコピペに1時間掛かったのだ。普通の人はこの3秒でできるコピペの1時間は拷問に感じるだろう。しかしわたしたち親子に関しては学びの時間なのだ。
1時間は時間が掛かり過ぎだし次に進めない。コピペの練習は母1人のときにやってもらうことにして次のステップに進むことにした。
自分でメルカリをやっているときとは違い教えることは難しい。難しいけど勉強になる。
まずは大きな目次的なものを3つ決めた。
1.売るものを決める
2.価格を決める
3.アップする
シンプルにはこの3つの流れだ。
あとのことはこの3つの中に入ってくる。例えば商品の選び方、商品説明の書き方、写真の撮り方など。
これを考えたのも売るのものを決めない前に母がああだこうだと考え込むからだ。考えていると時間はあっという間に過ぎていく。しかも自分が持っているものではなく売る予定の無いもので長い時間考えていたからだ。売るものを決めてから次のことを考えてもらうことにした。
次に価格を決める。これは利益が決まる大事な作業だ。相場をチェックする。相場を見ると売れやすいかどうかわかる。価格も相場を見ればわかる。こう書けば当たり前のことだが母はこの相場をチェックせずに自分で考えていた。「これ売れる売れるかな、たいしたことないものだから高く値段をつけたら失礼かな」と。
これはメルカリの検索に単語を入力したら画面が教えてくれる。自分で考えても答えは出ないのだ。
「こんな本売れるかな」と言っていた母に「まず検索してみてよ」と言った。これも考えてもわからない。そしてわたしはこの本が売れるかどうかもわからない。
ある本のタイトルをメルカリの画面に入力したら定価の2倍くらいで売れていた。「お母さん、これお宝商品だよ」というと母は「あら、そうなの」と言ってニヤニヤした。
アップするときの写真の撮り方のコツなどを教えてアップしてもらった。ずっと一貫していい続けたのは「買う側の気持ちになってアップしてみて」と言った。
価格は後で値引きもできるので定価の2.5倍くらいにした。
アップが終わるとその日は夜遅かったのでもう寝ることにした。
メルカリを教えるためにわたしも実家に泊まった。
次の朝起きて歯を磨いていると母が飛んで来てこう言った。
「売れたよ」
母がニコニコしている。
声も弾んでいる。
売れたのが相当うれしかったようだ。しかも定価の2.5倍だ。これはわたしも教えてよかったなと思った。
これでメルカリの基本的なやり方は身についたらしい。
その後も母はメルカリに出品して売れている。
売れるとテンションが上がる。テンションが上がると血流もよくなる。そしてなによりもニコニコしている。現金が手に入るのもうれしいらしい。
メルカリは母の最近の健康法になっている。
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