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リモートワークは炙り出し


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:かのこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「うちの部署、来週からリモートワークになるんだけどさ」
 
……おお。突然ですね。
心の声はそのまま漏れて、目の前の上司がちょっと笑った。
 
この話を聞いたのは2月27日木曜日、ついでに定時過ぎ。本当に「来週から」リモートワークになるのであれば、準備できるのはあと1日しかない。今朝ヘッドセットが配られたのはこのせいか! と納得こそすれ、時間がないことには変わりなかった。
 
「家にWi-Fi飛んでる? 仕事できそう?」
「あります、うちは大丈夫。……やっぱあれですか、コロナの影響で?」
「そう~。やっぱり東京だけリモートやってもあかんよね。うちの事業所もけっこう人多いしさ。マーケ系だけでもリモートにして、事業所内の密集度下げて、最終的にみんな感染防げるようにしたいんよね」
 
上司との1:1面談の中で、あまりにも唐突に告げられたリモートワーク。元々「月1ぐらいでリモートできるといいよね」と言い合っていたし、実際にリモートワークできそうな場所を探してはいたけれど、こんなにも突然許される日が来るとは思わなかった。社会全体が大きくうねっているなぁとは思っていたけれど、まさか、首都圏でもない地域にまでもリモートの波がやってくるとは。
 
上司とわたしだけの話ではなくなったので、面談を早めに切り上げ、部署の全員で来週からの方針について話すことになった。リモートワークすることになったと知ったときの反応は人それぞれ。なんとなく神妙な面持ちの人もいれば、ほー、と感心するような人もいた。
 
「朝礼と終礼はテレビ会議つないでやるかぁ」
「ちゃんと仕事してるよ~という報告もかねて、日報書いて提出しましょっか」
「タイムカード切れないから、始業・休憩・退勤時間も日報で報告かな」
「誰がしゃべってるかわからなくなるから、テレビ会議のミーティングで喋らないときは自分のマイクはミュートにしようね」
 
エトセトラ、エトセトラ。リモートワークするなら決めておかないといけないことをバーッと全員で洗い出して、その日はサッと解散。諸々の準備を金曜日に終えて、さて、今週からはじめてのリモートワークを開始することになった。
 
リモートワーク。
一日やってみて、これは人間関係構築力が試されるシステムだ、と思い知った。
 
たとえばわたしはデスクワークが多いのだが、チーム内でのふとした雑談の中からアイデアを得ることが多い。また、わりと周囲の会話に聞き耳を立てているので、他部署の状況を把握したうえで相談事を持ち込むパターンもあった。先輩や上司に進捗状況をその場でパッと確認したり、細かな相談をすることなんて日常茶飯事。……そう、リモートワークだと、これらすべてに制限がかかるのである。
 
もちろん社内チャットツールを使えば相談事はできるだろう。だが、対面で要件を伝えるスピードに比べれば、チャットですべてを伝えるのはかなり時間がかかる。そのコストをかけてまで相談すべきなのだろうかと考えはじめ、やがて「ま、いっか」で片付けてしまいたくなる。直接的には関係なくても、巡り巡って必要な相談事かもしれないのに。
 
また、テレビ会議システム(うちはGoogleのHangout Meets)を導入しているので、拠点間でもミーティングができるようにはなっているのだが、全員が自分のパソコンから入るとなると話は別だ。今誰が発言しているのか、パッと見ただけではわからないのである。さらに、自分の発言が全員の耳に届くまで、ちょっとしたタイムラグが生じるので、会話の受け答えがやや困難になってしまう(携帯電話での通話を思い浮かべてもらえるといいかもしれない)。議事録を読みながらふとみんなの表情をうかがう、なんてことも当然難しくなるので、なかなか発言のタイミングが掴めない。その結果、ミーティング中に謎の沈黙が訪れる……なんてこともしばしば発生した。
 
チャットツールやテレビ会議システムを導入しており、且つ、「コミュニケーションの質と量」を大事にしているうちの会社ですらこの状態である。チャットに慣れていない企業でリモートワークを推奨するのは、かなり危ういんじゃないだろうか。
 
もっとも、ほとんど個人プレーで完結する職業でのリモートワークとは、また状況が違うかもしれないけれど。絶対に誰とも話さない現場、もしくは社外コミュニケーションを大事にしている(チーム内会話はそれほどの)現場であれば、もうすこしスムーズに運用できるのかもしれない、けれど。
 
今この状況だから、リモートワークを推奨する企業が段違いに増えているだろうとは思う。ただ、リモートワークになってコミュニケーション量が減り、業務連携がスムーズにいかなくなってしまったとあっては、もはや本末転倒だ。ただ時代の波に流されるように「リモートワーク推奨」を唱えるのではなく、どうすればストレスなく実施できるか、まずはそこを全員がきちんと考えて話し合うべきなのではないだろうか。
 
リモートワークは、自分の人間関係構築力の炙りだしだ。
そして、自分に向いている仕事と、そうでない仕事を見極められる、非常にいい機会である。
 
リモートワーク初日を終えて、わたしは「自分にとって、個人プレーはとてつもなくしんどいこと」なのだとわかった。雑談がないと仕事できない人間なのかもしれない。そう考えるとちょっと残念な人間だけど。同じくテレワーク中の同居人とも、仕事中は一切話さなかったから、退勤時にはぐったりしてしまったし……。
 
Googleで調べてみたところ、リモートワーク中に孤独を感じる人はかなり多いらしいので、きっと仕事中は無意識にコミュニケーションを求めているものなのだろう。誰とも話さず1日を終えることの寂しさったらない。
 
うちの会社には「コミュニケーションの質と量が重要だ」という共通認識があるから、わたしが抱いた寂しさや孤独感も、話せばきっとわかってくれるだろう。朝礼で「いつも以上にどうでもいい雑談したいです」と言ったら、みんなどんな反応をするだろうか。リモートワーク2日目、くだらない雑談を増やしながら、気軽にチャットを飛ばしながら、楽しく乗り切っていきたい。
 
リモートワークは良い面もあれど、悪い面もある。
今回に限らず、どのように仕事を楽しめるかは、結局のところ自分と周囲のおもいやり次第だ。
 
 
 
 
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2020-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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