メディアグランプリ

イメージ感染の恐怖

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:和田 誠司(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
『「マスクをしていない人が咳をしました!」と彼女はこう叫びながら、非常停止ボタンを押し、福岡市営地下鉄線を止めた人がいるらしいよ』
と妻は私に教えてくれた。
昨今世間を騒がしているコロナウィルスに関して、ボタン押し女性はとても高い危機感を抱いていたようだ。彼女の危機管理能力のおかげで、出勤や通学途中の人たちは、強制的に時差出勤をすることができたわけだ。影響を与えられた人たちにしてみれば、色々と思うところはあるだろう。
 
この行動、皆さんにはどう映っただろうか。「素晴らしい行動だ!」という人もいれば、
「はい? 何しているの?」という人もいるだろう。
 
妻は続けて「やばくない。日本がおかしくなっているよ」と言っていた。
私も「もし自分が通勤している立場だったら、笑っちゃうね。会社に笑いながら遅延することを伝えるはめになりそうだ」と伝えた。
妻は続けて「コロナウィルスってさ、実際の感染よりも風評被害の方が大きいよね」と興味を引くことを言ってくれた。
「どういうこと!?」私はあふれるワクワク感を抑えられず、興奮気味で聞いた。
「実際にはさ、そんなに感染は広まっていないじゃない。でもさ、みんな人のことを疑うようになっているよね。私もマスクしてないからさ、電車で白い目で見られるもん」
「なるほど、なるほど。確かに僕も保育園でマスクをしていないと、一部のお母さんから白い目で見られている気がする」
「でしょー。だからこういう時こそ、人間の本質がわかるよね。私はマスクをしていてもしていなくてもどっちでも良いと思う。だって、コロナウィルスに感染している人は弱った人が多いじゃない。しかも、健康にしていれば、特に問題ないってお医者さんも言ってたし」
 
ありがたいことに、妻は私に良いことを教えてくれた。
ウィルス以上に怖いのは、人間の想像力だということを。
私は妻の話を聞き、福岡県のボタンを押し女性のことを考えた。
「福岡県はアジア圏内からの旅行者が多いためだろう。彼女の危機感は日増しに高まっていたではないだろうか。だからこそ、彼女は叫びながら、ボタンを押したのではないか」
「しかし、自分だったらそこまでして、人の足を止めるかな。その人はマスクしないで咳をする人=コロナウィルスに感染していて、菌をばらまく人と勝手にイメージを膨らませてしまったのではないだろうか。イメージ感染って感じかな」と思えた。
 
今、日本は正にイメージ感染の中にいるのではないだろうか。イメージ感染とは偏った情報、誤った情報で判断して、人(自分と他人)を信用できなくなることである。
私からしてみれば、福岡県の彼女はまさにそうである。
 
困ったことに日本はここ2週間ほどで、イメージ感染が広がっていると感じている。
他にもこんな事例があった。
「お客様が鬼に見える」とあるスーパーの女性店員がつぶやきから始まる記事だった。
私はその記事を見た瞬間に、妻にシェアをした。
毎日その女性店員は、たくさんのお客様に「マスクは品切れです、申し訳ありません。いつ入荷するか分かりません」と謝っては、怒られていたとのことだ。
謝っている彼女の様子を想像し、私たちは思わず「なんてひどいことをするのだ!」と気持ちが高ぶってしまった。同時に、イメージ感染した人たちに恐怖を覚えた。
彼女は最後の一文をこう締めていた「本当に怖いのは人間」
私たちもまったく同感だった。
 
私は妻にこう投げかけた
「なぜ、イメージ感染は拡大しているのだろう」
妻はすぐさま「自分で考え無いほうが楽だからじゃない」と言った。いやはや厳しくも的確な一言。
さらに妻は続けて、「私も以前はマスクとかは絶対にした方が良いと思ってたけど」
「僕もそうだった」
「今のお医者さんに通ってから考え変わったもん」
「確かに。あの先生は市販のマスクはまったく意味ないっていてっるもんね。それに意味ないと言っている先生や本はたくさんあるもんね」
「そうそう。私は、今の世の中情報はたくさんあるし、手に入れることができるから、片方の情報だけを信じてはだめだと思う。マスクの一件があってからは、私もそうするようにしている」
まさに!! 私はまたも良い気づきをもらってしまった。私も以前は、一途な思いで告白をする男子高校生のように、これと思い込んだら信じて突き進んでいた。まさにイメージ感染をしていた。
反対の意見を言う人には、敵を倒すかのように食ってかかっていた。おかで、偏った情報しか手に入らず、感染が治ることはなかった。
私がイメージ感染から治癒をし始めたのは、結婚してからだろうか。妻は私に「本当に? なんでそう思うの? なんで自分の言うことだけが正しいと思えるの? なんで相手の考えは間違っていると思うの?」とたくさんの疑問を投げかけてくれた。
今までは、反論して来てくれる人ばかりだったが、妻は違った。その問いかけの一言ずつが私をどんどんと感染から救ってくれたのだ。大事なことは、バランスの取れた天秤のようにAという意見を見つけたら必ずBという反対意見にも耳を傾けることである。
天秤は常に考える必要があるので、楽ではないが、私をだいぶ生きやすくしてくれている。
いちいち情報に踊らされずに、自分で考えて決めることができるからだ。
 
みなさんも一緒にバランスの取れた天秤になって、イメージ感染を防ぎませんか。
 
 
 
 
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2020-03-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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