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「宅建の女神に救われた話」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:落合明美 (ライティングゼミ・平日コース)
 
 
「いいですか、皆さん。宅建は勉強さえすれば、誰にでも受かる資格なんです!」
 
9年前の2013年6月。
「宅建の女神」と皆から、呼ばれていたその女性は、力強く、私達に訴えてきた。
そうして、私はその言葉を半信半疑で……そして心のどこかでは「今度こそ、ようやく現れた救いの女神」の言葉として聞いていた。
 
「……えっ、本当にこの人の言うやり方でやれば、今度こそは受かるの? あの、私には難関すぎた【宅地建物取引主任者】の国家資格試験に?」
 
一瞬、自分が疑うのも無理はなかった。
なぜなら、私は現にそんな甘い話に乗せられ2度も夢を見て、宅建試験に挫折していたのだ。
 
時は、もう1年遡って、2012年の5月の或る日。
私は、入社したばかりの不動産会社からの帰り道で、まず一つ目の甘い言葉に遭って見事に踊らされた。
 
「頑張れ!未来のワタシ」
 
電車の中のCMの画面で、微笑みながら、宅建の勉強をしている女優さんは、とても輝いていて、合格する姿が誰にでも想像できるような、良くできた内容になっていた。
私は胸を躍らせ、すぐさまCMの教材6万円を申し込んだのだった。
 
数日後に教材が届き、そのCMを真似ながら、お洒落なカフェでテキストをワクワクしながら開き……約1時間後に撃沈した。
 
「なに、この【公序良俗違反】とか【善意有過失】って難しい言葉。
あと、この難解でややこしい4択の問題。
 
【悪意の人A】と【詐欺師の人B】この事例の場合はどちらが有利かなんて……
詐欺師も悪意持ってる人も、両方が悪いんじゃないの? 喧嘩両成敗っていうし。
……あーもう、全然分からない!」
 
パタン。
 
初めての通信講座に敗れた私は、潔く分厚いテキストを閉じて、負けを認めた。
 
「やっぱり、こういうのは実際に学校に通わないとね!」
 
懲りない私は、次に14万円もする、有名な宅建の専門学校A校に通うことにした。
そうして、そこでも学校の講師は、私達に甘い蜜の言葉を差し出してくれたのだ。
 
「ここ(この学校)で、講義さえ受ければ、皆さん【宅建試験】に合格できますからね!」
 
確かに、ベテランである先生は抜群に上手い教え方で、私達に民法を理屈から教えてくれた。なので、本来、勉強が苦手な私にも、通信講座のテキストで挫折した、例の悪意のAさん、詐欺師のBさん、善意有過失のCさん。
どのケースだと一体だれが一番有利なのかを、私にも容易に理解出来るようになった。
 
「さすがに専門学校は凄い! これなら確かに、学校にさえ毎週通えば私にも宅建は合格できるに違いない」
当時はそんな確信を持って、半年間通い続け、講義中の2時間半はしっかりと勉強をした。
そうして迎えた2012年の10月。
結局、私はその年の合格点に2点足りずに落ちた。
 
ガックリ。
 
言いようのない虚しさが私を襲った。そうして、落ちた試験の数か月後に、私は残業代が一切支払われないブラックの不動産会社を退社し、
 
「もう、私は2度と宅建試験を受けることはないだろうなぁ」
 
そんな風に思っていた2013年の6月の或る日、
再度、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。
 
たまたま私が好奇心から始めた、某ブログの「資格部門」のカテゴリーでその人は
読者数700人余りを誇り、堂々と1位に輝いていた。
宅建の女神は、有名な資格学校Bの現役講師だった。
 
そして、そのブログで女神は私達に熱く文章で語り掛けてくれた。
 
「いいですか、皆さん。宅建は勉強さえすれば、誰にでも受かる資格なんです。
皆さん。過去問を回して、何度も回してください。そうすれば、宅建は受かりますから」
 
『凄い!……うん? 勉強さえすれば……って、過去問を何度も回すって、何度も過去問を解けってことだよね。
むしろ当たり前のことだよね?』
 
宅建の女神は、突如、泉の中から現れて、
私に金の斧や銀の斧を差し出してくれたわけではなかった。
 
むしろ、鉄の斧をもともと持ってるんだから、ちゃんとそれを何度も何度も磨きなさい。
そんな、当たり前のことを私に教えてくれたのだ。
 
けれども、考えてみれば、これが本来のあるべき姿なのだ。
私は今まで、勉強が嫌いな自分を受からせてくれない「通信講座」や「専門学校」が悪いと、不満を抱いていたけれど、それはとんだお門違い。
 
どんなに優れた教材や学校だって、努力を怠れば、落ちるに決まっている。
こんな当然のことに、やっと気付くことができた。
 
そうして、ようやく私に火が付いた。
 
先ず、私は、女神の学校のテキストを書店で「宅建業法」「民法」「法令上の制限」を2冊ずつの計6冊を買い求めた。
そして、それを女神のアドバイス通りに
1冊には、4択の問題、それぞれの答えを蛍光ペンで書き込み、そうしてもう1冊ずつは、何度も何度も、スキマ時間を見つけては、テキストの過去問題を解き、ボロボロになるまで回した。
1回で解けない問題には、難しい順に付箋をぺたぺたと貼りまくり、回して、そうして、
しまいにはページの隅が破れだした。
 
「いいですか。綺麗なままのテキストで試験に受かるわけありませんからね。
テキストは、ボロボロにしてこそ戦利品となるんですよ」
 
女神の毎日の熱い叱咤激励は、半年間毎日続き、私達、女神のブログ門下生は
その更新される記事を毎日励みにしながら、懸命に勉強した。
 
ブログ記事には、女神が実際の講義で行っている、民法の事例の解説を惜しみなく載せてあり、希望者には電話で相談に乗ってもらえたり、会って体験談を聞くこともできた。
 
普通は、無償のボランティアでそんな凄いことが出来る人はいない。
女神の名前は、伊達ではなく
実際に、彼女は私たちにとっての、宅建試験の救世主だったのだ。
 
2013年10月。前日からひいた風邪によって、36度4分の熱があったにも関わらず、
何とかその年の合格点、36点ギリギリで私は合格することが出来た。
 
その日の、女神のブログのコメント欄には、百幾つもの合格の喜びの声が書き込まれており、私ももちろん感謝の言葉を書き込んだ。彼女からは、律儀に丁寧な返信があった。
 
「宅建は一度合格すれば一生有効な資格ですからね。生涯、皆さんの宝物ですよ」
 
私達に、数々の名言と熱さと、合格といった、かけがえのない宝物を残してくれた「宅建の女神のブログ」は、残念ながら諸事情により今は閉じられてしまった。
 
宅建合格から6年後。ファイナンシャルプランナーになった私は、当時の試験の教訓を生かして、過去問を回し、そうしてFP2級とAFPの資格を取得出来た。
現在、女神がくれた宅建とそれらの資格は、初対面の人に差し出す名刺に箔をつけてくれている。
 
叶うことなら、
もう一度だけ女神に逢って、私の現状とそして、心からの感謝を伝えたい。
 
 
 
 
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2020-03-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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