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職場で笑えなかった私が笑えるようになったワケ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ナナ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「なんで私がこんな目に……」
 
3月初旬は人事異動の発表の時期だ。
「3年で異動する人が多いなか、あなたはもう4年もいるからそろそろ異動なんじゃない」
「あなたの経験からしたら次は絶対A部だよ」
と言われて正直わくわくしていた。
 
一方、もうかなり仕事がマンネリ化してきたし、上司が1月に代わったことや部内で問題が噴出していて、
部署内の雰囲気が良くないのを感じていた。
「異動できなかったら最悪だ」
そんな緊張感で発表の前日は眠れなかった。
 
人事異動発表の日、異動する人はひとりずつ部長に呼ばれて別室で異動先を伝えられる。
呼ばれるのを今か今かと待って……
 
ついに呼ばれた!!
 
「あなたの異動先はX部です」
耳を疑った。
自分の脳が処理できなかった。
もう一度きいてみた。
 
「え? 何部ですか?」
「あなたの異動先はX部です」
当然A部かと思ったいたのに。
信じられない。
 
X部といえば、社内で誰もいきたがらない3K職場だ。
精神的にきついし、汚なくて臭い人と接する可能性がある。
女性が行くとしても自分よりもたくましい人がいくと思っていた。
 
事務室に戻るとすぐに、どこに異動になったか質問攻めにあった。
X部とつげると、あわれそうなめで目で見られた。
 
「仕事のスケジュールを自分で調整しやすいみたいだよ」
「合う人は合うっていうし」
「なんんとかなるよ」
そんな慰めの声をかけてくれたが、
ちっともうれしくなかった。
 
「なんで私がこんな目に……」
最悪だ。
どうして希望の部署に行けないんだろうか。
時短をとっている私への部長からの嫌がらせなんじゃないか。
最低懲役3年だ、やっていけるんだろうか。
 
そんなことを考えていたら、今夜も眠れなかった。
 
3月は繁忙期であっという間に終わった。
やってみてもいないうちに絶望して会社をやめるわけにもいかないので、
開き直って、気持ちの整理をつけてなんとか異動の日を迎えた。
 
いざ仕事を始めてみると、わからないことだらけだ。
前の部署の仕事がほとんど役に立たない。
これじゃ新卒社員と同じだ。
どんどんやらなければならない仕事がたまっていく。
電話や窓口業務に追われて、仕事が進まない。
4月は嵐のように過ぎ去った。
 
5月になって、大きな問題が起きた。
何回対応しても問題が解決しない。
前任の担当者と教育係の先輩が一緒に対応しくれたが、
いっこうに解決しない。
私のミスや前任者のミスではなく突発的な事故のようなものだった。
 
「なんで私がこんな目に……」
 
プチッ
ある日緊張の糸が切れた。
家族との大したことない言い合いで号泣してしまった。
家族はこんなことで泣き出すとは思わず、びっくりしていた。
一回涙腺が緩んでしまうと止まらない。
同じグループの唯一の女性の先輩が優しく「大丈夫?」と声をかけてくれたときも
号泣してしまった。
 
「ずっと心配していた、これからは気軽に相談して」
と言ってくれた。
「みんな優しいから困ったら頼っていいんだよ。
わたしもそうやってやってきた。抱え込むのが一番良くないよ」
 
この出来事をきっかけに私は少しずつ吹っ切れていった。
悩んだら周りの人に相談することができるようになった。
雑談をしている人に混ざって一緒に話せるようにもなった。
行き詰ったら女性の先輩をランチに誘って話をきいてもらった。
 
特に大きな変化だったのが、隣の席の教育係の先輩との関係だった。
お互いに人見知りなので打ち解けるのに時間がかかったが、
一度打ち解けたら不思議と気が合った。
性別も年齢も家族構成もまったく違うのに。
 
この先輩は笑い上戸だった。
「笑いながらやれば楽しくなる」「笑えれば大丈夫」というのが口癖だ。
私が「こんなに嫌な目にあった」と言うと、ジョークをいいながら笑い飛ばしてくれた。
私もつられて笑う。
つらいことがあっても笑うことができる。
それが救いだった。
今はくだらないことをお互いに言ってはしょっちゅう笑っている。
 
他のグループのメンバーも皆優しく、困っていたら声をかけてくれた。
皆他の人のフォローをするのが当たり前だと思っているのを感じた。
その姿勢から自分もできることを積極的にやるようになった。
 
よく仕事の悩みは内容より人間関係っていうけど、その通りだなと思った。
内容がきつくても周りの人間関係が良ければやっていける。
 
たしかにきついこともたくさんある。
辞めたくなるときもある。
でもそれがゆえにみんなが団結できる。
「実は良い職場なのかもしれない」
そう思えた。
 
上司にある時、
「あなたがそんなに笑う人だと思わなかった」と言われた。
それを聞いて、なんだかうれしくなってしまった。
 
 
 
 
***
 
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2020-03-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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