メディアグランプリ

身近にいる美大生たちから得られた新しい価値観


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤原 千恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「どうしてこの色を選んだの?」
好きだから。
「どうして好きなの?」
……。 どうしてだろう。
 
当時美大生だった夫から、洋服か花の色か、インテリアに関してか、何に対しての質問かは忘れてしまったが、「どうして」この色を選んだのか私はすぐに答えられなかった。
自分の好きなことなのに、それについて深く考えられていないことを指摘されたような気がして、恥ずかしさにも似た焦りの感情がうまれた。
この会話を交わしたのはもう10年以上前になるのに、私は今だに覚えている。
 
この時から、自分の選んだもの、考えたことを「どうしてこう感じるのかな、なんでかな」と考えるクセがついたように思う。
 
「美大生」と聞いてどのようなことを思い浮かべるだろうか。
私にとっては、昔も今も、ただただ憧れの存在、漫画の「ハチミツとクローバー」ぴったりの世代だからかもしれないが、あの漫画やアニメを熱心に読み(見)耽った。
映画に関しては、それはもうセリフを覚えてしまうくらいに何度も繰り返し観た。
(ハチミツとクローバーは、美術大学が舞台になっており、自分の才能や生き方について迷う学生たちの生き方や、恋愛が不器用な大学生の恋模様や姿を描いている)
 
なぜ憧れるのか、理由は様々だが、1つ理由をあげるとしたら、頭の中で考えていることを色や形で表現でき、自分の正解を自分で作っているということ、だと答える。
 
かく言う私は、絵は好きだが描けない(描こうと思っていなかった)特に器用でも不器用でもない、いたって普通の学生だった。
そんな私が美大生たちとの交友関係が始まったのは、22歳、東京での暮らしを始めた社会人2年目の時だった。
 
まず、私はその当時「美大生」というくくりに無条件に反応してしまい、かなり質問責めしたのを覚えている。
 
頭の中のものが形になるって、本当にすごいね!
どうやって考えてるの?
パソコン使うの? 手書きなの?
すごいね、すごいね!
 
今考えれば、一体何をそんなに焦って質問しているのだろうと笑ってしまうが、私にはキラキラ眩しい場所にいる人たちだった。
「表現する」ということに飢えていたのだろうかと今なら思うが、その時は何もわかっていない。
 
それから交流を深め、彼らが日々の課題や卒業制作のために、ストローを何百本も切ったり紐を延々と結んだり、作っては壊し、書いては消し、の世界が自分の眼の前で繰り広げられることに、私は少なからず感動した。
私は特別何もしていないのだが、なんだか自分自身も一緒に何かできそうな気持ちになるのが楽しかった。
 
几帳面すぎたり、考えすぎだったり、塞ぎ込んだり、何かと理解できないことはたくさんあるが、そんな簡単にわかる人間性に魅力を感じるだろうか。
時間をかけてその良さに気づくと、ものでも人でも魅了される。
 
時間をかけて味わって、やっとわかる美味しさを持っている愛すべき人たち。
 
何か1つのことに熱中すること(ハチミツとクローバーの中でいえば、彫刻の森田さんが木材に向かい合うこと、小柄なはぐみちゃんが大きなキャンバスに絵を描くこと)
それは男女問わず、とてもセクシーなことだと思っている。
 
身近な元美大生達は、今でも趣味でコンクリートブロックを削って磨いて、ピカピカの金色に塗装したりしている。
粘土で猫の置物を作っているときは、作っては壊し、作っては壊して、最終的には私が今まで見てきたどんな猫よりも上品な猫を作り上げた。
 
このデジタルの世界で、手を動かしてものを作り上げることが、どれだけ時間を費やすことかは容易に想像できると思う。
それでも、この粘土の人に関しては「パソコンを使うより自分の手で作った方が早い」と言って、パソコンを使おうとしない。
効率化、ということの反対側で生きるこができる強さは、とても魅力的だ。
 
何かに打ち込むことができる人、自分の正解が揺るがない人が、とても好きだ。尊敬と、感動と、畏怖の念さえ抱く。
 
「それだけしかできない」と捉えがちだが、もう、本当に、全くそんなことはないと声を大にして伝えたい。
 
いろんなかたちの魅力を持つ人々。
きっと、夫やその友達にこのことを伝えたとしても、全く理解してもらえないのだろうと思っている。
そんなに簡単なことじゃないよ、きれいごとばかりではないよ、と。(現に社会性がなかったりと、それぞれに色々ある)
 
だけど、当の本人たちも気づいていない事に私は気づいていると胸を張っていうことができる。
だってこんなにも優しく愛すべきユニークな人たちがいることを、私はなんだか誇りに思えてしまう。
 
仕事でも家事でも様々なことに時短や効率化、「はやい」ことが有能だとされる今の世の中。
少しでも遅いと、それだけで価値がないように思えてしまうが、本当はそんなことはないのだ。
 
彼らが自分の世界を自分のペースで作っているのを見ていると、私も、わたしだけのオリジナルの人生を生きたいと思う。
良い悪いの評価軸ではなく「それをしている自分を好きでいられるかどうか」で物事を決めることは、これからの生き方の大切な基準になるのではないだろうか。
 
 
 
 
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2020-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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