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「おことわり」のススメ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:相内 洋輔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
あなたは、興味を持てないクラウドファンディングに支援をお願いされた時、どう対応していますか?
 
ぼくはいつも、どのように振る舞うのが正解なのか、迷っています。
 
2013年から2018年までの5年間、ぼくは東日本大震災の復興支援をする財団で働いていました。
 
そのためNPOなどの非営利セクターで活躍している方や、企業でCSR関連の仕事をしている方と、何百人もつながりがあります。
 
総じて社会的課題への関心が高いため、平均すると毎月2~3件ほど、クラウドファンディングを応援して欲しい! というメッセージが届きます。
 
それらを目にするたび、ほんの少し、複雑な気持ちになります。応援したい案件もあれば、全く興味を持てない案件もあるからです。
 
でも後者の場合、「興味を持てないからお断りします」とは言い出しにくくないですか?
 
メッセージを既読スルーすることも粋じゃないです。
 
かと言って、紹介される案件全部を支援していたら、お財布も時間もカラッポになります。
 
だからいつも、クラウドファンディングを断りたい時は、なんて返事をすると円満なのか、すごく悩むんですよね。
 
厄介だなと思うのは、相手はこちらに、金銭的な支援か、情報の拡散を、明確に期待していることです。
 
この「期待」がくせ者で、人は「期待を裏切られた」と感じた時に、どうしてもネガティブな感情が湧いてきてしまうもの。その分、対応の難易度が上がります。
 
最近こうした葛藤を繰り返していて、クラウドファンディングは、まるで「現代の踏み絵」だなと感じるようになりました。
 
踏み絵とは、江戸幕府が禁止していたキリスト教徒を発見するために用いた手法で、人々にキリストやマリアが描かれた絵を踏ませるというものです。
 
踏み絵には「あなたはキリスト教徒ですか?」という問いが込められています。もし踏めなかったら信者とみなされ、捕らえられてしまいます。
 
これと同じように、クラウドファンディングの依頼には、
 
「私のことを応援してくれますか?」
 
という、暗黙の問いが潜んでしまっているのではないか、と思うのです。
 
そのため依頼に応えてくれたかどうかが、嫌でもお互いの人間関係を測る物差しとなってしまいがちです。
 
あの人は応援してくれたから味方、これからも大切にしよう!
 
あの人は何もレスポンスしてくれなかったから敵、距離を置こう!
 
このような判断が安易に生まれてしまう構造が、まさに踏み絵だなと。
 
そんなぼくも、先日、初めてクラウドファンディングの主催者としてプロジェクトを実施する機会をいただきました。
 
そして、知人にたくさんのメッセージを送りました!
 
クラウドファンディングのメッセージを受け取ると複雑な気持ちになる、という体験を頻繁にしているぼくなのにも関わらず……、です。
 
なぜなら、クラウドファンディングを始める前は、
 
サイトに掲載さえしてもらってさえいれば、知らない人からも少しは支援してもらえるだろうとか、
 
SNSで周知すれば知人が反応してくれるだろう、
 
などと甘く考えていたのですが、
 
いざ実施してみたら、全く期待通りにはならなかったからです(笑)
 
最終的に、クラウドファンディングを応援してくれた方の大半は、
 
メッセージを直接お送りしたことで理解や共感を示してくれた知人でした。
 
どおりで毎月たくさんの個別メッセージが来るわけだと、学ばされました。
 
送ったメッセージに暖かいコメントを返してくれたり、実際に支援をしてくれた友人知人の存在には、本当に力づけられました。
 
発信の仕方についてアドバイスをくれる方もいたりして、たくさんの人に周知をすることで、ファンが増え、活動が進化していく、というクラウドファンディングの醍醐味を感じました。
 
一方で、全く返信が無い人もいれば、以前こちらが支援をしたのにも関わらず、何もしてくれないという人も、たくさんいました。
 
自分がクラウドファンディングをやる以上、ゼッタイに人間関係を測るための踏み絵にはしないと決めていたものの、こうした対応には、やっぱりどこか寂しさを覚えました。
 
同時に、興味が無くて迷惑に感じていたとしたら、申し訳ないなあとも思いました。
 
おかげさまでクラウドファンディングは無事に達成することができたのですが、どこかスッキリしない部分も残り、手放しでは喜べませんでした。
 
ぼくは、この世の中をもっとアップデートしていくために、クラウドファンディングは重要な手段のひとつだと思っています。
 
だからこんな風に「ああ、いやだなぁ」っていうモヤモヤが生じてしまうのは、社会にとって非常に損失だと感じるのです。
 
例えば、プロジェクトの内容だけが書かれた不躾なメッセージを送らないとか、人間関係が薄い人への無差別メッセージは控えるとか、実行者側が配慮することで改善できる部分もたくさんあります。
 
でも何よりぼくが感じたのは、こうした小手先の改善ではなく、
 
「クラウドファンディングは気軽に断ってもOK!」という状態へと、
 
一気に世の中の認識を変化させることが、このモヤモヤを解消する唯一の策なのではないかということでした。
 
日本人は、総じて断るのが苦手です。だから、届いたメッセージに右往左往してしまい、心を消耗させてしまいます。
 
断るのが苦手ということは、言い換えれば、NOを言い合うコミュニケーションに慣れていないということです。
 
そのため、断るのが苦手な人は、断られるのも苦手です。
 
こうした人がクラウドファンディングのオーナーとなった場合には、相手に断られないよう、過剰な文量のメッセージを書くということが起こりがち。
 
その力作を受け取った人がどう感じるかは、想像に難くありません。
 
応援したい! と感じた場合は全く問題ありませんが、
 
断りたい……と感じた場合は、メッセージと同量のエネルギーや気遣いが必要になります。
 
これはお互いに時間を浪費してしまうので、本当に勿体ないと思うのです。
 
そして何より、ぼくがクラウドファンディングを実際にやってみて学んだのが、
 
「スパッと断ってくれる人のメッセージにこそ、プロジェクトを進化させる気づきがある」
 
ということだったのです!
 
なぜなら、共感できなかったことを明確に示してくれたほうが、それぞれの理由に対する打ち手を検討できるからです。
 
改善を検討できる範囲が広くて深いほど、プロジェクトはさらなる発展を遂げます。
 
だから「気軽に断ってもOK!」が浸透すればするほど、
 
世の中にとって重要なプロジェクトが増加する確率が高まるはずです。
 
積極的に断ることが、社会の発展へと繋がるなら最高ですよね!
 
だからぼくは、今度あまり共感できないクラウドファンディングのメッセージが届いたら、ちゃんと理由を添えて断わってみようと決めました。
 
人に嫌われるのは好きじゃないので、ちょっと勇気がいるけれど、活動のさらなる発展を意図してメッセージを送るということを、心がけてみたいと思っています。
 
きっとそのほうが、お互いにとっていい結果につながるはずだから。
 
あなたも、ご一緒にいかがですか?
 
「断る」という一見ネガティブな行為から、世の中のアップデートに貢献できたら幸いです。
 
 
 
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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