メディアグランプリ

どこかにいる、餃子をもとめて

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ハンプティ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「餃子ほど汎用性が高い料理はない」
私の持論である。
 
一般的な餃子と言えば肉汁がぎゅーっと詰まった皮がパリパリの焼き餃子だろう。
しかし、餃子には水餃子もあれば蒸餃子、揚げ餃子もある。
焼き餃子にも、皮がもちもちして食べごたえのある餃子もあれば、エビが入った海鮮餃子、チーズ餃子、手羽餃子、バナナやチョコが中に入っているデザート餃子なんてのもある。
 
焼く、ゆでる、蒸す、揚げるといった調理法の違いでも色々の味が楽しめ、さらに中身の具に何を入れるかでも味の違いを楽しめる。
 
餃子には作る人の個性によって何万通りもの味が違いを出すことができるポテンシャルがある。
 
餃子の相棒を何にするかも重要だ。
餃子の相棒には、「白米」と「ビール」の二大派閥がある。
 
餃子から染み出る肉汁と餃子のたれを、白いご飯と一緒にかきこむのがたまらないという「白米派」
 
アツアツの餃子を頬張って、そこにキンキンに冷えたビールを流し込むのに幸せを感じる「ビール派」
 
定食のおかずとしても、ぴったりなのに、ビールの友としても最高な、餃子の協調性の高さはやばいと思う。
 
ちなみに私は、餃子を食べるときはご飯とビールの両方を頼む。
 
なぜ、こんなに餃子について熱く語るのか。
 
それは理想の餃子になかなかめぐりあえないからだ。
餃子が大好きで、近所で評判の餃子屋に行ったり、最近話題の餃子居酒屋のお店に行ったり、自分で作ってみたりもした。
 
どれも美味しい。
だが、なかなか理想の餃子と言えるものには出会えていない。
 
私の理想の餃子、それは「大和の餃子」だ。
 
私は高校生まで佐賀に住んでいた。
当時は、父方の実家に住んでいたのだが、同じ佐賀県内にある母方の実家にもよく遊びに行っていた。
「よく」とはいっても、2か月に1回程度だけど。
車で1時間くらいの場所なので、日帰りで遊びに行っていた。
 
母の実家は佐賀県佐賀市大和町。
 
その大和町に夫婦で営んでいるであろう小さな餃子屋さんがあった。
 
そこの餃子が美味しくて、美味しくて。
 
「大和の餃子食べたい!」「大和の餃子屋さんに寄って帰ろうよ!」
大和から帰るときは、いつも妹と2人でねだっていた。
 
本当はそのお店には、別の屋号があったと思う。
しかし、私たち家族の間では、大和町にある餃子屋さんだから「大和の餃子屋さん」、そんな呼び方で定着してしまい、本当のお店の名前は、今、家族の誰に聞いてもわからない。
 
「皮が厚くてもちもちしてて、肉汁がぎゅーっと詰まってるのに、野菜もたっぷり入っているからしつこくないんだよねー。やっぱり大和の餃子が一番だわ」
 
有名な餃子屋で妹と飲んでいたら、妹はこういった。
私も同感だ。
 
あれからいろんな餃子を食べてきたけど、幼いとき食べた大和の餃子には敵わない。
 
それは、あの餃子が私の初恋の餃子だったからだろう。
 
我が家の餃子は、市販の「買って焼くだけ」タイプの餃子だった。
 
それが、初めて我が家の餃子以外の餃子、つまり、大和の餃子を食べ、初めて手作りの味の美味しさを知った。
 
そのときの感動が今も忘れられず、本当の味以上に感じているのではないかと思う。
 
例えるならば、いつも男の子に意地悪ばかりされていた女の子が、ある日初めて会う男の子に優しくされて恋に落ちた感じだ。
 
その男の子は、すごくイケメンでもなくてふつうなんだけど、思い出の中では王子様のようにみえている、そんな感じ。
 
絶対思い出補正が入っている。自分でもそう思うのだが、やはりあの餃子の味が忘れられない。
 
焼き餃子なのに、パリパリじゃなくてもちもちで、野菜も肉もいっぱい詰まってて、ボリュームは結構あるのに、いくらでも食べられちゃいそうな、あの味が。
 
「初恋は叶わないからいい」ともいう。
 
高校を卒業してはや10年。
高校を卒業したと同時に、佐賀から引っ越した私は、焼く10年間大和の餃子を食べていない。
 
大和の餃子屋さんの場所は覚えている。頑張ればいけない距離ではないし、食べに行こうと思えばいける。
 
だけど、初恋の餃子が実はたいした味じゃなかったと思うのが、少し怖い。
それに、簡単に買いにいける距離ではないから、記憶どおりに美味しすぎて、なかなか食べられなくて泣くはめになるのも辛い。
 
そんな風に考えていつの間にか10年たってしまった。
今度の週末には、大和の餃子を買いに行ってみようかな。
 
だけど、いつかは初恋の餃子を超える、永遠に寄り添っていたいと思えるような、そんな餃子に出会ってみたいとも思う。
 
男が星の数ほどいるように、餃子も星の数ほど、いや、ひょっとしたらそれ以上の数があるかもしれないから。
 
 
 
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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