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メディアグランプリ

毎朝の時限爆弾処理でわかったこと。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:竹中昌代(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「今日は学校に行きたくない!」
寝起きが悪く不機嫌な娘。
あぁ今日は失敗のパターンか……。
 
毎朝娘を起こすこの時間は、私にとって時限爆弾のリード線を一本一本切っていく感じ。刑事ドラマなどで見るように、とてもスリルに満ちあふれていて、なんとか爆発を回避したい一心だ。
 
私には2人の子どもがいる。上は今度小学5年生になる息子。下は2年生になる娘。息子は小学校に入学した頃から登校渋りが始まり、2年生の頃には不登校になった。みんなと同じ教室にいることがしんどいようで、自閉症スペクトラムと診断された。学校に行かずゲームなど好きなことをしている兄を娘は見てきた。だからいずれ娘もそうなることはある程度覚悟していた。
 
昨年の4月、小学校に入学した娘は、私の心配をよそに学校生活を楽しんでいた。毎朝「いってきます!」と元気に登校していた。
家に帰ってくると「お兄ちゃんも学校に行けばいいのに! めっちゃ楽しいで!」と、ニコニコしながら話していたのだ。あの長いゴールデンウィークが来るまでは……。
 
長い連休が終わり、いよいよ学校が始まる日の朝だった。
「私も学校に行きたくない。お兄ちゃんだけ家にいるのはずるい」娘がそう言った時、私は一瞬言葉に詰まった。
 
“お兄ちゃんは友達と一緒の教室にいることが苦手でね”ということは、まだ娘には理解し難い。娘の気持ちに同調しながらも「友達と久しぶりに会えるよ」「今日の給食はデザートがあるよ!」などと、言葉を選びながら話しかける。
 
「行きたくない」そう言って休んでしまう日もあれば「2時間目から行く」と、遅刻していくこともあった。近所の菓子店にパートで働く私は、店長に事情を話し、遅れて出勤したり、娘が休む日は一緒に職場に連れて行ったりもした。
 
これを読んだ人は「何を甘やかしているんだ」「叱ってでも学校に行かせるべきだろう」と思う人があるかもしれない。でも私にはそれができない。息子が1年生の時に、毎朝それをしてきて息子の気持ちを傷つけてきたからだ。
 
発達障害の診断が出て、息子のこれまでのことが特性だったと腑に落ちるまでは、毎朝必死になって学校に行かせようとしていた。その時の私は「学校に行くのは当たり前」と思っていたからだ。時には泣いて訴える息子に対して「どうして行かないの!!」と、感情をむき出しにして声を荒げることもあった。
学校は息子にとって安心できる場所ではないのか……。それが理解できるまで時間がかかったが、元気に笑って過ごしてくれるだけでいいと今は思えるようになった。
 
そんな息子のことがあるから、私は無理やり娘を学校に行かせようとは思わない。
兄のことで娘がものすごく葛藤を抱いていることもよくわかる。その気持ちをわかった上で、できれば学校でも笑顔で楽しく過ごして欲しい。それに尽きる。
 
毎朝娘が起きるまでのルーティンでだんだんとわかってきたことがある。
スッキリ目覚められると、朝の準備がスムーズだ。
娘が自分で起きられたらもう最高! 嫌がることなく登校できる確率がグンと上がる。
逆に「何時だと思ってるの!」などと言ってこちらが怒鳴ってしまうと、時限爆弾の回避に失敗してしまう。
 
アラームがなっても一向に起きようとしない場合は、特に慎重さが求められる。
一本一本爆弾に繋がるリード線を見極めながら、起こし方を工夫してくのだ。まずは耳元で「朝だよ〜! 起きて〜!」と落ち着いてささやく。時にはこちょこちょしたり、下品だが優しくカンチョウしたりすることもある。
「ぐふふふ」娘が笑ってくれたら、こっちのペース。
自分の身支度や洗濯なんかは後回しで、全集中力を娘に注ぐ。ここがクリアできたら7割方成功するからだ。
 
もちろん、何がなんでも「行きたくない」という時もある。
「体育が嫌だ」
「お友達とこんなことがあったから」
なんとなく行きたくない。そんな時もある。なるべく彼女の気持ちに寄り添い、担任の先生とも相談しながら対応している。
 
担任の先生が毎日娘の学校での様子を電話で伝えてくださり「もうあと3週間で3学期も終わりですね。ぼちぼちいきましょう」と話していたところだった。
 
コロナウィルスの影響で、娘の小学校も突然の休校要請。
 
「あー! せっかく休まずに登校できるようになってきたのに……」
思わず口に出てしまった。
 
その反面“娘は今日学校に登校できるんだろうか、どうやって起こそうか”と、時限爆弾の回避にヒヤヒヤすることが無くなり正直ホッとしている自分もいた。
 
学校が休みになって数週間。
「ママ、早く学校に行きたい! 家より学校が楽しいわ!」
そう言って学校に行けないのを寂しがる娘。私はギュッと抱きしめる。
「そうね、2年生になるのが楽しみやね」
「うん!」
 
そうか……。
私は思った。
私が娘をコントロールしようとしていたからだ。
自分の思うように相手をコントロールしようとするからしんどい。だから毎朝憂うつになるんだ。たぶん「学校に行って欲しいな」の“圧”が自然と娘にも伝わっていたんだろう。
 
毎朝の時限爆弾は自分で仕掛けていたのかもしれない。
 
長い人生の中で、ほんのわずかな期間。楽しく登校できるに越したことはないが、毎日一喜一憂していては親子で疲弊してしまう。
学校に行くことは義務でも目的でもない。娘にとってひとつの選択肢。
息子にそうしてきたように、娘の気持ちにもちゃんと向き合い一緒に見守っていこう。
娘が心から笑顔で過ごせるように……。
 
 
 
 
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2020-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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