メディアグランプリ

我が子への最初の贈り物


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:久田 一彰(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
「何でもっといい名前つけてくれなかったんだよ。 ○○君の名前みたいに、格好いいのがよかったのに!」
 
自分の名前が好きになれず、一度はこんな言葉を親に向かって言ったことはないだろうか。
だから、名前がつけられるRPGゲームでは、主人公に自分の名前を決してつけなかった。
お気に入りの漫画から取ってきたり、他のゲームキャラクターから付けたりした。
そんな時は全く悩まず、ものの数秒でつけた。
 
しかし今、名前をつけるのに難儀している。
いや、とてつもないプレッシャーを感じているのだ。
 
実は予定日より2週間早く長男が誕生した。
まだまだ名前を付けるのに時間はあると思っていたが、まさかこんなに早く産まれるとは予想していなかった。
病院の新生児室のガラスの向こうでは、わが子がスヤスヤ寝ている。
 
顔を見たら名前が閃いて、あっという間に決まるだろうと思っていたが、もう10日間かかっている。
早く決めないと、出生届等が出せない。
しかし一旦名前をつけると、簡単には変えられない。
ゲームのようにリセットすることは出来ない。
誰かに名付け親を頼むことも出来るだろうが、やはり自分できちんと考えたい。
妻とも話しているが、古風な名前もいいし、現代風の名前もいい。
でもキラキラネームにはしたくない。
良い名前が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。
 
「みんなどうやって子供の名前を決めているのだろう? 姓名診断アプリ? 簡単に決まるかも知れないけど、そんな風には決めたくない。もっと真剣に考えたいのだ」
 
そこでわたしは、ピン!ときて購入した本を、何度も読んだ。
『しあわせ漢字を贈る 男の子の名前』(高橋書店)だ。
 
名付けのヒントが沢山あった。
音や響きから、イメージから、漢字から決める。
他にも産まれた日の偉人の名前や、誕生月から、父母・祖父母から一字もらったり。
 
ふと、自分の名前の由来が知りたくなり、母にLINEして聞いた。
「そう言えば、一彰ってどんな由来があるのさ? 昔聞いたけどもう一回教えてよ」
「一は父からもらい、彰は表彰から。賢く育つようによ」と返事が来た。
「良い名前じゃん!」
 
自分の名前は両親が一生懸命考えてくれて、自分の未来を想ってくれて付けてくれていたのだ。
 
そう聞くと、より一層この子には、きちんとした名前をつけてあげたい。
 
ペンを持ち、ノートに思いつくままに漢字を書いていく。
どんな風に育ってもらいたいかを考えた。
強い子、優しい子。
今、この子の前には、色んな道が待っている。
少しずつで良いから、前に歩いて行ける様に。
そんなことから連想される漢字を書く。
また地名から、季節から。
友人や知人と被らないように、最近産まれた友人の子とも被ってはいけない。
 
一通り書いてみたら、漢字を組合わせてみる。
しかし以外と決まらないのだ。
好きで選んだ字なのに、何というかしっくりこないのだ。
 
同時に悩みながら、姓名判断で画数の吉凶も考えていく。
やはり、いい運勢をつけてあげたい。
が、これもまた決まらない。
名字と名前を足した総画数は良くても、名前の画数が良くない。
 
好きな字をやむを得ず変える。
そうすると、名前の意味が変わってしまう。
 
もう一度漢字を組み合わせる。
何度繰り返したのだろう。
まるでパズルの様だ。
 
ノートを振り返ってみると、5ページに渡っている。
131通りも試したらしい。
 
撮っていた写真も幾度となく見返した。
あくびしている写真。
泣いている写真。
動画で手足を動かしているところ。
 
「あ~なかなか決まらん! いっそわたしと妻の文字を一つずつ入れるか。 いや、それだと将来何でこの字にしたの? と聞かれると安易すぎて困る」
 
他に候補はないだろうか。
家康、秀忠、家光、家綱、綱吉……。
訳もなく徳川15代将軍が浮かぶ。
尊氏、義詮、義満……。
何故か、足利15代も出てきた。
 
もう、漢字ばかりでは行き詰まったので、ひらがなでも書いてみる。
いや、あまり意味がない。
 
今度はフルネームで書いてみる。
縦書きも。
横書きも。
 
書けば書くほど、名前の候補が出てくる。
漢字の書き取り練習をやっているようだ。
 
ふと、そもそもどんな名前にしようと思ったんだっけ。
ノートの始めの方を見返す。
 
いいと思った候補には、赤で○をつけている。
ある2文字に赤ペンで○をつけている。
もう一度確かめてみる。
 
画数はどうか。
総画数もバッチリ。
縦書きはどうだ。
よし。
字数も多すぎないし、文字のバランスもいい、書きやすい。
 
今度はそっと、声に出してみる。
なんだか恥ずかしい。
でも、いい。
 
妻にも字をみせる。
「いいんじゃない」と同意して貰えた。
「よし、これで行こう! 決めた! この子にこの名前を贈ろう!」
 
出生届に書く。
ドキドキしながら市役所へ提出する。
「漢字の確認をお願いします。 合っていますか? 間違っていると簡単には変えられませんがよろしいでしょうか」
 
一瞬ドキッとしたが、
「はい、お願いします!」
 
「それではこちらで受理致します。おめでとうございます」
 
もらった書類には、私の名前と妻の名前、そして長男の名前が入っている。
 
こうして私たちは新しい家族として出発した。
いつか長男に名前の由来を聞かれるだろうか?
そのときはこの話を聞かせてやろう。
 
「どうだ? 良い名前だろう?」と。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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