あなたのガラスの靴は何ですか
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:ナナ(ライティング・ゼミ特講)
「わー、緊張する!」
舞台袖で何度も言ってしまう。
仲間と顔を見合わせて、手を取り合う。
「またみんなと舞台に立つことができた」
感動で胸がいっぱいだ。
舞台に立ち、スポットライトをあびる。
ライトの熱さが心地よい。
普段しない派手なメイクをして、キラキラ飾りのついた衣装をきる。
いつもと違う自分の完成だ。
普段はどちらかというと目立ちたくない。
でも、今日は違う。
「私を観て!」
舞台に立つことは、私にとってシンデレラのガラスの靴みたい。
キラキラした世界に連れていってくれる。
シンデレラがお城の舞踏会のあと、しばらく元の生活を続けていたみたいに、
私も舞台に立つことを中断した。
そして、ガラスの靴がぴったりはまって王子様と再会するかのように、
かつての仲間の誘いでまた舞台に立つことができた。
私がそれを経験できたのは、ベリーダンスに出会ったからだ。
7年前、たまたま会社の近くに新しい教室ができたのを見つけた。
厳しい上司と激務に疲れ切っていた日々。
「仕事がきつい、リフレッシュに何か新しいことをはじめたい」
軽い気持ちでとりあえず入会してみた。
それから半年して、初めて舞台に立つチャンスがやってきた。
何回も何回も練習した。
一緒に舞台に立つ仲間とお互いアドバイスしたり、相談しあったり。
初めてのことで、メイクの仕方、衣装の直し方、当日のスケジュール、
わからないことだらけだ。
家でも何回も練習をした。
不安でもなんでも、本番の日はどんどん近づく。
運動部の大会前ってこんなかんじなのかな、と思った。
心地よい緊張感と不安と充実感。
そして、当日。
恥ずかしいけど思い切って家族と会社の友人をよんだ。
「意外と上手だね」
「会社の時と全然違う。キラキラしてる」
「素敵な笑顔、楽しそう」
だって、楽しいんだもん。
舞台に立たせてくれた、先生、仲間、家族、友人は
魔法使いとカボチャの馬車みたいに思えた。
そんな風に舞台に立つことに楽しさを感じていたころ、妊娠が発覚した。
強制的にダンスはお休みすることになった。
残念だけど、仕方ない。
私はまた元の生活に戻った。
出産してから2年たったころ。
当時の仲間から「一緒に発表会で踊ろう」というお誘いがきた。
正直迷った。
育休が終わって、仕事に復帰したばかりの私には圧倒的に時間がない。
慣れない仕事、家事・育児の両立に追われていた。
普通に考えたら断るべきだと思う。
でも、自然に「やりたい!」と思えた。
家族に相談したら、
「やりたいなら、やったらいいんじゃない」
と言ってくれた。
練習に参加してもブランクがあって体が思うように動かない。
でも、
「楽しい!」
忘れていた感覚だ。
そっか、ダンスって楽しいんだ。
「おかえり」
「戻ってきてくれてうれしい」
先生も仲間も温かく迎えてくれた。
それでも現実的にはやっぱり時間が足りない。
家での練習、みんなと合わせる練習、衣装をなおす時間、
前とは違って何もかも大変さが増した。
でも、またまた魔法使いが現れた。
家では家事の合間に練習したが、
そうすると子供も真似をして楽しんでくれた。
育児と両立できる一石二鳥だ。
夫も家事をちゃんとやってくれた。
練習時間確保のために、時には私の家の近くに仲間がきてくれて、
一緒に練習してくれた。
衣装をどう直すかアドバイスをくれた。
子供を連れて練習に行くこともあったけど、
子供を抱っこしたり、あやしてくれたり、かわいがってくれた。
そして、発表会当日。
「またこのキラキラした世界に戻ってくることができた」
それだけでなく、
「自分の子供に自分の好きなことをみてもらえる」
そう思うといつもより気合が入った。
夫と子供は最前列に座ってくれた。
舞台の方が明るいから客席はあまり見えないはずなのに、
子供のキラキラした瞳が見えた気がした。
色とりどりのライトでキラキラした世界。
アラビア調のきらびやかな音楽。
笑顔で踊る私と仲間たち。
ジャン♪
最後のポーズが決まった。
暗転する。
拍手の中、舞台を降りた。
全力を尽くすことができた。最高の気分!
家族も仲間も笑顔でいっぱいだ。
「ママ、すごい!」
「ちょっと間違えちゃったけど楽しかった」
「またみんなで踊りたいね」
私は再びガラスの靴をはくことができた。
ママにとってベリーダンスがガラスの靴だった。
あなたのガラスの靴はなんだろうね。
いつかあなたにも見つけてほしい。
そしたら、ママは魔法使いになって全力で応援するよ。
***
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