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若年性乳ガン患者を取り巻く、苦悩と葛藤


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記事:山下 梓(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
ピンクリボン、乳ガンにかかった有名人、検診の進め。私達は何かと乳ガンに関するニュースや情報を目にする。実際私は、乳ガン当事者であり、現在は治療が終了したサバイバーである。
 
10年前、29歳の時に私は、初期の乳ガンを告知された。一般に、39歳以下でガンを発症すると若年性ガンと呼ばれる。まさに、晴天の霹靂であり、帰りに母と食べた回転寿司のお寿司が無味だった事を今でも覚えている。
 
医師からは「不幸中の幸いで生き延びるガンです」と言われたが、何を持って幸いと言うのかを私はそこから何年も葛藤し続ける事になった。
 
若年性乳ガンの発症率は、乳ガン患者数全体の2.7%とかなり少ない割合だ。
その分、思いを共有できる場は少なく、孤独や不安を一人で抱えている人は少なくないだろう。取り分け、結婚や出産といったライフイベントに関して人一倍、考える必要に迫られる。
 
まず私が医師に確認したことは、結婚が出来るのかということである。ガンの告知を受ける直前に、2年間同棲した彼と結婚が決まり、ちょうど式場を予約した所であった。結婚ができるのか?の具体的な意味合いとしてはこうだ。
 
胸の開いたドレスを着て、式が出来るのか?子どもを産むことができるのか?
大きくはこの二つだった。
 
医師の回答は半分イエス、半分ノーであった。
結婚をすることはできるが、術後に生理を止める注射、女性ホルモンを抑える薬の投与があるため最低5年間は子どもが望めないと言われた。抗がん剤治療をする場合には、より
妊娠へのハードルが上がる。
 
胸を切る手術が確定していることに、勿論不安は感じたが、それよりその後の人生が一気にブラックホールに巻き込まれた感じがして頭が真っ白になった。
 
5年生存率は90%以上と言われても、5年後は34歳であり、それを告げられたところでまったく安心はできなかった。
同時に、数ヶ月後に6年間勤めた会社の契約期限が迫っており、失業という壁も抱えていた。彼とは二人で折半する生活だったので、経済的にも不安が募る。
 
それでも彼と家族からの理解を得て、結婚式を目標に私は手術に挑んだ。
 
外科医に担当が変わると、腫瘍の大きさが結構あるため、乳房は温存手術か全摘出になるか、切ってみないと分からないと言われた。要するに全身麻酔をかけられ、意識のない間に自分の胸がなくなっているかもしれないということだった。
 
このとき私は改めて、自分の胸を女性としての象徴だということを認識した。まだギリギリ20代の私にとって、魅力的なバストは男性を魅了する武器だと思っていたし、女同士でも大きい小さいと下世話なネタの種になるコミュニケーションの一つだとも思っていた。
 
命には変えられないということが頭では分かっていても、生き延びたとして男性を魅了することや女の子とじゃれ合う事は、もうなくなるのだなあということがとても悲しく感じた。
 
手術は無事に終わり、胸は温存手術で済んだ。はじめ、ブラックジャックの顔のようだった傷口も、次第に消えてゆき、意識してみないと分からない程度の見た目にはなった。
 
予想された転移などもなく、一週間後には職場復帰、結婚式も予定通りに行えたことは、どん底の心境から一筋の光が見えたようだった。
 
しかし結婚式が終わり、日常生活に戻っていくと、今度は本当に子どもが産めるのだろうか? という事が気になってしょうがなくなる。今では、若いガン患者に対して、治療前に医師から妊孕性の説明があり、希望者は卵子保存などの選択肢を与えられるようになっている。それでも経済的な理由から、希望はあっても断念する患者は多い。
 
次から次へと迫られる、決断や周りに前例のない事象を、自分の中で噛み砕いて理解することが中々できなかった。ネットで何でも調べられる事は、再発への不安も駆り立てた。
胸の内は、ボロボロに傷ついたダメージデニムのようだった。
 
命を救われたのだから、一日一日を大切に生きようという思いと、同世代の友人と同じような人生は送れないのだなあという孤独感を交互に感じた。
「昨日のドラマ見た?」「GWはどこか行くの?」「夫が家事をしてくれない」ぐらいの、たわいもないお喋り感覚で、乳ガンの事を話せたら少しは気が楽だったのかもしれない。私が若年乳ガン患者を対象とした、患者会の存在を知ったのは、治療が終了して大分経った時の事であった。
 
去年、手術から10年が経ち、晴れて医師から寛解のお済みつきをもらった。
すこぶる元気!では、残念ながらない。身体のプチ不調は治療の影響なのか感じるし、再発への不安を忘れることもない。
 
ダメージデニムのように空いた心の隙間からはまだ少し、スースーとした寒気を感じる。
だけど、上手く履きこなせたら、魅力的なファッションに変わるように、自分の人生も唯一無二のスタイルを作っていけるだろうか。
 
 
 
 
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2020-04-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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