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メディアグランプリ

私の小さな反抗から、極めたい道へ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:渡辺 彩加(ライティング・ゼミ 通信限定コース)
 
 
「降りて来なさい! お稽古始まるよ! 」
あぁ、憂鬱な土曜日が始まった。
 
私が小学生から中学生までの土曜日は憂鬱で仕方なかった。なぜなら、祖母が先生をしている、子ども向けの茶道教室のお稽古日だったからだ。
 
正座も痛いし、同じことばっかり繰り返すのは嫌だし、
今日はお腹痛いことにしちゃおうか。
 
毎回、いろんな言い訳を思いついては、
「さっきまで走ってたでしょ! 」
と一喝される。休むことができたら、今日は勝った! と密かに喜んでいた。
 
怒られり、仮病がバレた日はしょうがないと、しぶしぶ、お稽古に参加する。普段の優しいおばあちゃんとは違い、茶道教室の時は、先生である祖母がとても怖かった。
 
「今日は、茶巾の絞り方を練習しましょう」
 
先生が言ったら、一時間正座でひたすら茶巾を絞るのである。今思い返せば、なかなか小学生にとっては、スパルタなお稽古であった。なんとか早く終わらせたい。足が痛い。うまくできたら合格がもらえ、休憩できる。休憩の許可が出るのを心待ちにしつつ、ひたすら絞っていた。
 
高校生になる頃には、勉学や部活が忙しくなり、土曜日にも予定があることが多くなった。だんだんとお稽古に行かなくなり、茶道からも離れていった。他県の大学に進学した後は、茶道をする機会は完全になくなった。茶道をする機会がなくなったこと、お稽古をしていないことなど自覚していないくらい、茶道のことを考えていなかった。
 
茶道と再会したのは、大学院の必修の授業の中で茶道があったからだ。日本の文化を知る目的で、茶道の授業があった。授業では着物を着たら、体の使い方がよりわかるため、推奨されていた。着物を実家から送ってもらおうと思い、母に電話した。
 
「なんの授業で使うのよ。」
怪訝そうに母がいった。茶道の授業のこと、着物のことなどを説明する。
「じゃあ、昔あなたが使ってた茶道の懐紙入れとかのセットもあるから、それも一緒に送るわ」
 
正直、まだ私が使っていた道具が残っていたことに驚いた。しかし、送ってくれるとのこと、買う必要がなくなると喜んでいた。
 
お茶を点てる練習の授業の日。
「もしかして、以前に茶道をされていましたか? 」
先生から指摘をされた。中学生までやっていたが、それ以来やっていないことを伝えると、
「なるほど、足さばきや、手の使い方が初心者ではないなと思いました。」
足さばき? 手の使い方? 言われた私がよくわかっていなかった。
 
なるほど、自分でも嫌々やっていた、毎週土曜日の茶道のお稽古だが、しっかり体に染み付いていたらしい。他の生徒が、茶道独特の空間の使いかたに戸惑う中、なんと、私が授業で一番戸惑ったのは、茶巾絞りの方法が異なることだった。まず、茶巾を水が張ってある桶から取り出す方法も違う。一時間、休憩を心待ちにひたすらやった記憶が脳裏によぎり、なかなか別の方法を覚えることができなかった。
 
授業最終日、実技の試験があった。なんとか、お茶を点て終わり、合格。ホッとした。でも、これで終わりたくない。
 
「あのっ、茶道教室とか、されていますか? 」
思い切って先生に聞いてみた。先生自身がされている教室はないものの、知り合いの先生がされている教室があるとのことで紹介をしていただいた。連絡先をいただき、すぐに申し込んでいた。祖母から習った流派とは異なる茶道教室である。
 
一から、基本から、丁寧に習った。週一回のお稽古にも、さぼったことはない。先生の言葉がすっと入ってきて、細かいご指摘にも、納得してお稽古をし、母が送ってくれた道具で、自主練習もした。茶巾絞りだけではなく、掛け軸の言葉から、お茶碗の材質まで、様々な知識が身についた。茶道のことをもっと知りたいと思った。
 
一昨年、茶道をされている大学院の先生から、茶道同好会を一緒に作らないかとお誘いを受けた。どんどん話が進んでいき、同好会を設立することになった。今では10名ほどの学生たちと一緒に月二回茶道のお稽古をしており、私が同好会会長を務めている。
 
長期休みに実家に戻った時のこと、祖母の後を受け継いで母が行なっている茶道教室に参加させてもらった。違う流派のお点前を皆さんの前で披露する。違いが私自身にもはっきりとわかって、お互いの勉強になった。
 
参加者の皆さんが帰られた後、せっかく道具があり、お湯も湧いているので、祖母を招待して簡易的なお茶会を開いた。私、母、祖母だけのお茶会だ。
 
「違う流派でもいいのよ、基本は同じなんだから。流派が違うのは、役割が違うということだからね。あなたの流派はどんどん広めていく流派なんだから、これからもしっかりお稽古しなさい」
私がお茶を点てている間、祖母がいった。
 
よく考えたら、祖母の前でちゃんとお点前するのは初めてだった。茶道をまた始めたこと、違う流派の茶道であること、全部は私の小さい反抗だった。しかし、三つ子の魂百までとはよくいったもので、当時あんなに嫌だったお稽古だが、ちゃんと身についていたらしい。
 
抹茶がたち、今では正座ができなくなった祖母の前に運ぶ。
 
「お客様はね、自分の流派でお茶をいただいていいんだからね。私の流派の方法でいただきますよ」
 
そういってお茶を受け取った祖母は、椅子に座っているものの、背筋がしゃんとしていて、昔の茶道の先生のままだった。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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