メディアグランプリ

〇〇を枯らす女と、生かす女の違い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:千神 弥生 ライティング・ゼミ(日曜コース)
 
 
うちの夫の部屋は、とてもオシャレで色々センス良く飾られています。
 
そこに欠かせなかったのが、素敵な観葉植物たちだったのですが、残念ながら今は1つもありません。
 
オシャレで落ち着く空間には必ず植物があちこちに飾ってあるもので、夫もそういう空間を理想としていたので、可愛い鉢や植物を見つけては買って帰り部屋に飾っていました。
 
ところが、端から端から、枯れていくんです。
 
そして、枯れても枯れても、買ってくるんです。
 
私は、最初はそれに対して何とも思っていなかったのですが、子供を産んで家にずっといるようになってから、「あれ!? ちょっと枯らしすぎじゃない!?」と思うようになりました。
 
それでも夫は気に入ったものを見つけると買おうとするので、さすがに止めたんですよね。
 
「ちょっと、あんだけ枯らしといてまだ買う気!?」
 
すると、夫は驚く発言をしたんです。
 
「全然枯らしてねーし! いつ枯らした!?」
 
え……。
 
いやいや、もう8つくらいは枯れて茶色くなっているのを、私の母が見かねて持って帰って育て直してるの、あなた知ってるじゃない?
 
ビックリしました。
 
ビックリし過ぎてその時はもうそれで終わってしまったんですが、またしばらくして、新しい観葉植物を買おうとしたので、「だから、ダメだって!」と止めたんです。
 
すると、今度は激怒してきました。
 
「だから枯らしてねーって! どこが枯れてるんだ!!」
 
真面目に頭がおかしいのか、記憶がなくなっているのか……。
 
実家に行き母親と2人で、夫が持ってきた10ぐらいある救済処置後の植物を見つめながら、彼はなんて言ったら納得するんだろうとため息をつきました。
 
ふと、母がこう言いました。
 
「植物は生き物と同じだから、世話をするのは本当に難しいんよ。
 
水や光、寒さや暑さ、栄養なんかも1つ1つ特性がそれぞれ違う。
よほど育てるのが好きで、詳しくないと無理なんよ。
 
男の人で、しかも年齢からしても、植物をじっくり育てる性質ではまだないから、枯れてしまうのは仕方ないんよ」
 
なるほど、枯らしちゃうのは仕方ないんだ……!
 
私は、家に帰ってそれを夫に話しました。
 
「そうか……」
 
夫は静かに納得し、そこから観葉植物を買うのをピタリと止め、そして家にまだ残っていた植物たちすべてを実家の母にお願いしに行きました。
 
母は、夫が植物を好きで育てたい気持ち、そしてそれを諦めて自分のところに持ってきた複雑で切ない気持ちを汲み取ってくれ、快く後の世話を引き受けてくれました。
 
私はと言うと、反省しました。
 
「枯らすばっかりするんだから、もう買うのをやめて」という言い方、というより在り方が非常にまずかったんだということを。
 
誰がどう見ても「枯らしている」という事実をまったく認められないほど、夫はバカではありません。
 
大好きな植物をダメにしてしまっている自分が許せなかっただけなんですよね。
 
頑張って育てているのに枯らしてしまう自分を認めたくなかっただけなんだな、と。
 
そこに妻である私が、輪をかけて「あなたには能力がないですよ」ということを言ってしまったんですよね……。
 
そもそも私自身が、観葉植物を置くことに興味もなく、植物を育てるのがどれだけ難しいのかも知りませんでした。
 
それなのに「枯らしてしまうのはおかしいよ」という前提で言葉を投げてしまったんです。
 
そりゃあ、腹が立ちますよね。
 
「なんで枯れるんだろうね」と一緒になって考えてあげるべきところで、そんなセリフ。
 
自分が得意なことを人も当然できると思って「なぜ、あなたはできないの?」というスタンスよりも、もっともっと酷かったなと、今なら分かります。
 
植物っていうか、夫が枯れるっつーの! ですね……。
 
夫が好きなことや興味があることの中身をすべて把握しておいた方がいい、とまでは言いませんが、ある程度の内容を知っておくことはとても大切だと感じた出来事でした。
 
せめて、「同じ目線で」話ができるくらいの知識や情報を知っておく、これは夫婦仲を良くするためには欠かせないと思います。
 
ちなみに、私の方はと言うと、夫に「聞いて聞いてー!」と聞かれてもいないのに自らアレコレ把握してもらおうと喋ってきました。
 
でも、男性は自ら「聞いて聞いてー!」などと言う生き物ではないのだから、女性の方から
男性の情報を引き出し「同じ目線」になるような働きかけが必要だったと、反省したのでした。
 
男性が好きなことや嫌いなことなど「大切にしている部分」をとおして、「感情を共有し合う」ことができる女性が、「命を生かす」ことができる女性、なのかもしれません。
 
そして、あの観葉植物たちは、今にも枯れそうな夫の代弁者、だったのかもしれません。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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