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お手紙キューピッド


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉池優海(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「文字の力」
 
こんな言葉を聞いたことはあるだろうか。
自己啓発本や新聞の投書、小説家やライターなどの持論で聞いたりしたことがあるかもしれない。
私は、深夜ドラマ枠で長い間やっていた仲間由紀恵主演の「TRICK」というミステリードラマ(正確にはギャグミステリーかもしれない)でたくさん聞いてきた。
このドラマ自体には文字に関係する話はあまり出てこない。映画の設定では主役の母親の書く文字には力が宿るため、大物政治家などがこぞって書を求めにくるとされている。作中ではその母親の紹介の時に「文字の力」という単語が出てくる。
最初こそなにも考えずにその「文字の力」という単語を聞いていたが、自分がこうして天狼院書店のライティング・ゼミを通して文章を書くようになってから「文字の力は本当にあるかもしれない」と考えるようになった。
 
つい先日のことだ。
実家の自室でだらだらしているところに母親が一通の手紙を持ってきた。
 
「手紙が来てるよ。」
 
え、手紙。そんな、誰からだ?
 
「請求書とかじゃなくて?」
「違うわよ、ママのお友達から。あなたの文章読んで感想送ってくれたの。」
 
手渡された手紙に書かれている送り主の名前は当然のことながら見覚えがなかった。
幼い頃会ったことがあるかもしれないが、記憶にはない。
幸いなことにライティング・ゼミを通して私が書いた文章がいくつか天狼院書店のホームページに掲載され、それを読んでくれたのだという。有り難いことに、️両親伝てで文章に対して感想を頂くことがよくあったのだが、手紙での感想を頂くのは初めての経験だった。
しかも、小学生や中学生の時のような他愛のないキャッチボールのような手紙ではなく「感想文」という確かな目的を持った手紙。
 
封筒のなかには3枚の便箋が入っていた。
折り目を開いた瞬間-本当に瞬間だ-、字がとてもきれいなことに驚いた。
小学校の頃やっていた進研ゼミの赤ペン先生より断然きれいでとても読みやすい字。それが3枚目の便箋の最後の行の一番下まできれいに整列していた。
そして、内容も3枚分びっちり私の文章に対しての感想だった。
一度読むだけでは足りず、きれいに整列しているお利口さんな文字たちを何度も読んだ。
 
読みながら、私はあの深夜ドラマを思い出していた。
そう、文字の力である。
 
文字そのものが持つ力ももちろんある。私たちは読書をして心を揺さぶられることがあるし、評論や自己啓発文を読んで考えが広がることもたくさんある。
今こうして自分が書いている文章だってキーボードで打ち画面に表示されている文字である、これを読んでいる画面の前の読者も画面に表示された文字を目にしている。
 
画面に表示される文字にも力はあるだろう。
だが、手書きの文字には到底勝つことができないと感じた。
 
手紙には書き手から読み手に対する気持ちがありったけ詰め込まれている。
誰でも一度は手紙を書いたことがあると思うが、すごくいろいろなことを考えなかっただろうか。
便箋選びからペン選び、どれくらいの枚数に収めるか、手紙の書き出し、本文の内容、締め括り、封の仕方、切手選び。
こうして書いてしまうとなんてことのない作業に見えてしまうがひとつひとつの選定を相手の顔を思い浮かべ、これを目にしたらどんな表情をするのかなと期待を込めながら書く。特定の相手がいる文章は独り善がりになってはいけない。手紙は相手の為に書くものなのだから。
 
こうしてひとつひとつの作業を丁寧にこなして出来上がった一通の手紙は、ある種自分にとても忠実な分身である。
小学生の時に書いていた他愛のない手紙も同じ。ささいなことでも「これを伝えたいな、相手のこれを知りたいな」と思って書くものだ。
そして、スマートフォンが普及し、同時にSNSも爆発的に普及した現代、手紙はどんどん書かれなくなり、毎年年始のワイドショーでは「今年は年賀状だしてないですね、LINEで送りました」みたいな街頭インタビューが放送されるのだ。
 
SNSで発信した文字は同じ字体で統一されてしまい、個人の持つ字の癖をすべてなくしてしまう。同じ文章でも字体の癖や筆圧の強さで読み手の受け取り方はだいぶかわるのに、画面に表示される文字はそれをすべて均等にしてしまう。
大人になるにつれ日常で文字を書くという行為もどんどん少なくなる。
学生の頃は「ノートを取れ」と口酸っぱく教師に言われ、テスト勉強で紙いっぱいに文字を書いて頭に詰め込み、長期休みの宿題では読書感想文や小論文を書かされる。当然のことながら学生でなくなってしまえば「ノートを取れ」と言われることも読書感想文を書くこともなくなる。就職先でなにか文章を書くときもパソコンで作成することが多いだろう。
 
手書きの文字が自分の分身だとしたら、画面に表示される文字は自分の思いをできる限り届けようとしてくれている郵便配達員のようなものだろう。
手渡しするか、仲介をいれるか。この仲介があることで失われてしまうものは自分達が考える以上に大きいと思う。
 
私が受け取った手紙には「機械が苦手です」と書かれていた。その苦手を、私は少し羨ましく思った。
思ったことを素直に文字にして書くことができる人はそう多くない。相手に伝えたい気持ちがあればLINEやFacebookのダイレクトメールで、という考えは、スマホが普及している現代では当たり前のことだろう。
 
その一通の手紙を送ってくれた母の友人の、「伝えたい」という感情がダイレクトに、弓矢のように私の心に刺さった。
自分の文章で、手紙を書いてくれるほど感じてもらえたことがあったという事実が嬉しかった。
 
一通の手紙が、私にまたひとつ自信を与えたくれた。
物理的には郵便配達員の手によって自宅に届けられているが、分身であることに変わりはない。
画面の文字からも人間はたくさんの感情を得られるが、分身から直接受けとる感情はとても重く、そしてとても優しい。
 
「文字の力」。
あの馬鹿馬鹿しくてコメディー要素たっぷりで真面目さより面白さが目立つ映画は、私にとって大事なことをずっと教えてくれていたのかもしれない。
ただ、それがあったとしても今回手紙をもらうことがなければ気づくまでに至らなかっただろう。私に分身を送ってくれた母の友人の女性にも感謝してもしきれない。
 
ひさしぶりに、手紙を書きたくなった。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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