旅するように子育てしてみた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:オリベツカサ(ライティング・ゼミ平日コース)
「おぎゃーおぎゃー」
子供が産まれた。
わたしのお腹からではない妻のお腹からだ。当たり前のことけどこれは大きな違いだった。男性はどこか他人事なのだ。他人事ということを言葉にしたら世の中の女性を全員敵にまわしそうだけどやっぱり他人事なのだ。
妻の表情は妻から母へと変化している。これは感じとれた。しかし自分には変化を感じない。変化しなければいけないという焦りだけはある。いつ変化するんだろうか。今しなかったらいつなんだろうか。今しなければいけないんじゃないか。そうだ今だ。でもしなければいけないと思って義務感で変化するのもなんか違うような気がする。
子供が産まれたのはうれしいことだ。でもいきなりこんな状況になっても心が追いついていない。
子供が産まれる前にすでに子供がいる友達や親戚からいろんなことを聞かされていた。
「子供は大変だよ」「子供はお金が掛かるよ」「仕事はどうするの」「自由時間が無くなるね」「もう飲みに行けないね」
どちらかというとマイナス要素が多かったように思う。
「子供の笑顔に癒やされる」「子供は宝」
こんなプラスのことを言う友達もいたけどどこか胡散臭いと感じていた。しっくりこなかった。
具体的な想像ができる前に子供はこの世界に現れた。そして今目の前で泣いている。
「おぎゃーおぎゃーおぎゃー」
いつの間にかわたしは思考停止していた。考えても仕方なかった。わからなかった。
「おめでとうございます」と産婦人科の人に言われても愛想笑いを浮かべていた。
結婚前は国内海外問わず一人旅をしていた。一人旅と言っても一人ではなかった。旅先で初めて会う人と仲良くなることが多かった。全員ではないけど今も友達関係が続いている人もいる。仲良しだ。
旅は予想できないことの連続である。どんな景色があるのか、どんな人と出会うのか、どんなトラブルがあるのか予想できない。この予想できないことが旅の楽しみだ。特に一人旅の場合この不特定な予想できない要素が多い。
今はインターネットで世界の景色を見ることができるけどその場所の空気はそこでしか吸えない。匂いとセットでいい思い出が記憶されることが多かった。
トラブルもネットでは経験できない。死なない程度のトラブルは旅を美味しく仕上げてくれるスパイスだ。シンガポールの空港でスーツケースが出てこなかったときも最初は戸惑ったが今ではいい思い出だ。途方に暮れるというスパイスがよく効いていた。結局数日してから出てきた。
子供が産まれたときに不謹慎かもしれないがそんな一人旅のことを考えていた。産まれたばかりの子供を抱っこしていたいたらすやすやと眠り始めた。なんて子供は無防備なんだろうか。旅先でこんなに無防備だったら危ないぞと思った。そんなことは本人は気にするわけもなく鼻息をすーすーしながら気持ちよく寝ている。
寝顔を見ながら「そうだ」と思った。この子は今日始めて会った。旅先で会ったように接すればいいんじゃないかと。少し違うのはわかっている。しかし共通点も確かにある。今まで知らなかった者どうしなのだ。
海外の人だったら言葉も通じない。子供もしばらくは言葉も話せない。表情を見ながらコミュニケーションをとる。どこか同じだ。笑ったり泣いたりしながら伝えていくのだ。ベロベロバーだ。
旅するように子育てすればいいんじゃないかと思った。完全にこちらの都合だけどそう思うと楽しくなってきた。
二人ともこの世界を旅しているのだ。普通のツアーのような旅でもなく飛行機にも電車にも乗らないけど旅と言ってもいいんじゃないかと思った。
この楽しい時間が今までの旅より長く続くのだ。これはいいと思った。
それからずっと楽しさが続いている。こちらが楽しいと子供も楽しいらしい。よく笑っている。言葉で伝わらなくてもそれはそれでいいんじゃないかと思えるのも旅の経験がプラスに作用している。子供はハイハイするようになり歩くようになりカタコトの言葉を話すようになった。それでもこの楽しい旅は続いている。
どこか一緒に遠くに旅行に行くわけではないけど毎日が旅先になっている。子供がわたしの知らない世界を毎日表情や体で教えてくれる。この新鮮さは旅そのものだ。
京都に1週間旅したときもどこか同じことを感じたことがある。京都の人の考え方が今までと違って新鮮だった。それは町家の風景とともに記憶に残っている。
常夏のシンガポールに行ったときは多言語を普通に話す一般人のおばちゃんたちに驚いた。これは産まれてきた子供もスポンジのような吸収力で言葉を話すことにどこか似ている。この前犬を指差して「わんわん」と言ってたかと思うと今はもう「犬のおまわりさん」を歌っている。
旅で出会った人と接するように子供が2歳になった今もコミュニケーションをとっている。だってこの世界という旅先で出会ったのだから。これからも旅するように子育てしようと思う。子供との関係は良好だ。
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